耳の続きに見た夢

 夏祭りに向かう商店街を仲の良い友達と歩いていた。二人ともテンションが上がってしまって、陽気だった。まだ陽は高く、人通りも多い。

 ふと、友達が立ち止まる。

 「あれ……?」

 浴衣の袖を気にしている。小さな子どもが浴衣の袖に何か入れようとしている。

 「どうしたの?」

 女の子は赤い着物を着て、江戸時代の子どもの髪型のような1つ結びをしていた。背丈は60cmほどで、桃の節句で飾る人形のような子だ。

 「おねーちゃんたち、かわいいからお芋さんあげよう思て」

 か細い声で子どもが答える。背丈の割にはっきりと喋る。

 「そうなんか、ありがとうね。でも浴衣が濡れちゃうから、また今度ね。」

 と、子どもに芋を返す。

 子どもは満足そうに笑うと、

「そうなん? じゃあおねーちゃんらについていこうかなぁ」

と意地悪く笑う。

 気味が悪くなった私は、どうにか振り払おうと思った。

 「ええ? そんなんあかんわぁ。またね。おねーちゃんたちも、かわいい子からお芋さんもらえて嬉しいわ。お嬢さん、きょうはお芋焼いてあったかいの食べね」

 さっと立ち上がり、足早に去った。

 数メートルも歩けば、気配はしなくなり、振り返る。

 落書きだらけの壁面に、古い御札が1枚貼ってあった。


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