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約5万人のお客様に会った某エネルギー会社の訪問点検員が見たお客様の変化

私はつい最近まで某エネルギー会社の検査員として一般家庭向けに訪問しお客様宅内で点検作業を行っていた。年数にして約12年。お会いしたお客様は5万人以上。既に退職済みの為、私が訪問点検をしてきた中でお客様の変化を覚えている限り話します。

訪問方法はシンプルで、訪問する1週間から2週間前に案内用紙を投函、一部郵送。その後、案内していた日に訪問という流れだ。

案内の効果はそれなりにあるようで、例えば10件投函すると7、8件は在宅して快く点検をさせていただいていた。残りの2、3件は不在。

ただこれは随分と昔の話で現在は10件のうち4件程が受けてくれて、2,3件は拒否、残りは不在という割合。

過去に一度だけ私のミスで事前案内するのを忘れてしまい、いわゆる飛び込み訪問みたいなことをしたことがあるが、お客様から不審がられる、不在は多いで事前告知、案内は必要だと再認識した。

昔に比べて「拒否」が多くなったのは忘れもしない2011年の東北の震災の頃からだった。

震災後からと話したが自分なりに分析してみるとあるものが普及しだした頃だった。

スマートフォンである。

大変便利な反面、普及に伴い仕事に大きな影響を受けることになるとは予想出来なかった。


従来の案内方法でお知らせを見たお客様が取る行動は

「点検 受けないと 罰則」「点検 受けないとどうなるか」

などを検索する方が多い。出てくる検索結果は

「罰則はないので室内に上げなくて大丈夫ですよ」などの回答が多く、スマートフォンの普及が進むにつれて今までお会いできていたお客様に会うことすらままならない時代になった。実際に検査を受けないことで罰則等は無くあくまでご協力をお願いすることしか出来ないので非常に痛手である。

実際にお客様からのお問い合わせで多いのが「本当に受けないといけないのか。調べたら入室しなくても検査できると書いてあったので受けたくない」など事前にどこかで調べて電話を掛けてきたようだ。

上記の点を踏まえ、年々お会い出来るお客様の数が明らかに減るので、ある時の社内会議で協力頂いた方にクオカードを渡したらどうかと案が出たが、莫大な予算が掛かるのと、法律に触れる可能性が高いとのことで中々話が煮詰まらなかった。事前案内の用紙の文、フォームを一部変更する以外に画期的な案は出ずに引き続き検査を行うことに。


そんな中でお会い出来ない方の年齢層がはっきりと分かるようになり対策にも時間は掛からなかった。

お会いするのが難しい年齢層は

「20代から40代」

スマートフォンを使い慣れているのもあるが、仕事、学校で忙しく在宅をしていない。若ければ若いほど家に人を上げたがらない傾向にあり、対面するのが難しいのもわかった。

逆に50代以上となると昔と変わらずに快く受けて下さる。お会いした方になぜ点検を受けてくれるのかアンケートを実施したところ多かった回答が

「受けなくて何かあったら周りに迷惑が掛かるから」

専門家の私からするとニュースになるような事故は年間を通して全国で1件あれば多い方。だがそれは保守点検を実施しての数字なので、こう言って頂けるお客様が居るだけでもありがたい話だ。

今は70代、80代の方でもスマートフォンを持ち検索する機会もあるだろうが受けなくてなにかあったら嫌だという気持ちが強いようだ。


ところでなぜ我々が検査を受けるようにお願いをするかというと、安全にエネルギーを使って頂きたいからというのは勿論、防災関連の商品を提案したいからでもある。要は物を売りたいからである。


では今度は商品を購入して頂けるお客様の傾向だが先ほどとは全く別の傾向があることに気付いた。比較的簡単に購入して頂けるお客様の年齢層は

「20代から40代」

これにはそれなりの歴がある私も驚いた。

前述の話を聞くと高齢の方が一番購入して頂けるのではと誰しも思うだろうが実は全く逆なのである。防災関連の商品を提案して断った高齢のお客様になぜかと尋ねると

「検査して貰ったし、普段から気をつけてるし、今まで何もなかったから大丈夫」

恐らく長年の経験の中での話で、検査したら今後絶対に安全だ。と保証は出来ない。可能なら安全のために購入を検討して頂きたいところだが高齢の方相手に無理に販売すると後々息子さん、娘さんからクーリングオフの連絡、クレームの電話を頂いたりすることが多いので断られたら引くようにしていた。

逆にたまたまお会い出来て検査を受けて頂いた若い方に提案するとトントン拍子で購入して下さり毎度驚かされる。同じようになぜかと尋ねると

「普段不在がちで、手入れも行き届いてないから不安。防災商品があると安心します」

若い年代の方は不在の時間が長いのと、手入れなどが行き届いてないことで心の隅で安全を心配している傾向があることに気付いた。弊社が提案している商品は実はインターネットで買うと少し安くで購入も出来るが、提案して設置した商品は特に検索したりしないのもわかった。クーリングオフ、クレームの連絡が掛かることも未だに経験がない。

そこまで分かりだすと対策も簡単で、日中は比較的年齢層が高めなエリア、集合住宅を訪問し、夕方から夜間にかけて若い方が多いエリア、集合住宅を訪問することで少しづつではあるが以前の状況に戻すことが出来た。

まとめると

「訪問する際は事前に告知、案内は鉄則。時間厳守で」

「訪問エリアの特徴に応じてアプローチする時間、曜日を柔軟に決める」

「高齢の方は家に入れてくれるが物は買わない傾向にある」

「若い方はお会いするのが難しいが物は買う傾向にある」

上記のまとめはあくまで私がお会いしたお客様の傾向なので、業種、お住まいの地域によって若干の差はあると思うが、それなりの人数にお会いしてお話してきた経験の話なのでご覧になってくださった方の参考になればと思う。

#仕事について話そう

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