弱小ギルドが大きくなるまで【完】
前回の反逆編ではギルドを解体した後に来た黒幕からの連絡で終わったはずの旧ギルドの新たな進展を紹介したが、今回は真の最終回。
最初から読まないと理解できないと思うのでまだご覧になっていない方はお手数ですが第一話から読んで頂けたらと思う。すべて実話です。
あれから黒幕主体で話し合いをした。誰かが裏で糸を引いてギルドを崩壊まで追い込んだのは間違いない。しかし目的など一切不明。
まず疑うべきは私に話しを待ちかけてきたターミネーターだろう。黒幕、サブマスにもこの件は伝えた。彼が黒幕だとして目的は何なのか。黒幕、サブマスが口を開いた
「過去にサブマスを降格させられたのを恨んでいるのではないか」
まぁ確かにこの線が強いだろう。だがこの件は本人と話し合いをした結果ターミネーター自身も降格を望んでいたのもあったのでいまいちピンとこなかった。女性はどう捉えるかわからないが男性にとって降格は懲戒処分の次に重たい処分と捉える人も多いだろう。
彼のプライドを傷つけてしまったかな。
随分と過去の話だがもう少し他のやり方があったのかなと反省した。
辛気臭い話し合いになってきたところで黒幕が
「考えてもわからないし進まないから本人にそのまま聞こうか?」
それが出来るならしたいのは山々だが現実世界ではないので逃げられたら二度と追えないし、そうなると永遠に謎が解けなくなる。私は少しやり方を考えてからにしようと提案した。
それからしばらく話して、ターミネーターの恋人(ギルドのサブマスだった人)にまずは連絡してみることになった。
黒幕との仲良しグループのメンバーで黒幕のグループチャットにも居たのでスクショを流したのは彼女で間違いないだろう。
「あ、はい!確かにスクショを送ることはありました。面白かった会話とか共有したくて何回か彼に送ったことあります」
私がターミネーターから貰ったスクショを恋人に見せた。
「こんな会話した記憶がないんですが。誰からこの画像を?」
あんたの彼だよ!!!!笑
隠しても仕方がないのでありのまますべて話した。経緯、内容も。写真も合成されたもので、それを鵜呑みにした私の判断でギルドが解散したことも。
「すみません。本当にすみません。多分私の彼がこれをやっています。私、本当に知らなくて。どうお詫びをしていいか分かりません。すみません」
恋人に話を聞くが、わざわざここまでする理由が彼女でもわからないとのこと。リアルでもギルマスである私の愚痴、悪口を言ったのも聞いたことないし、ギルドの文句なども言わなかったとのこと。ただ彼の性格的にこういう事はやりそうなタイプなのでやったのは間違いないだろうとのこと。
それから黒幕、サブマス、恋人の4人で話した。恋人は今ターミネーターと一緒に居ないのでこの場にターミネーターを呼びましょうかと言い出した。
んなことしたらリアルの関係に傷が付くだろうと却下したが、この件が事実なら私も許せないのでと切り捨てた。うーん、女子は強い。
それからしばらくしてターミネーターが現れた。
「こんばんは~」
(恋人)スクショペタッ
恋人よ。攻撃が速すぎるんよ。
「このスクショ、なに?どこから持ってきたの?」
ターミネーターが現れてここまで1分程。追撃がえぐいて。
私、黒幕、サブマスは一切発言することが出来ずただ見守るだけ。
それから数分が経った
「あ、ただの悪ふざけですー」
見た瞬間、悪びれもない様子にイラっとしたが他の女子達の方が速かった。
「悪ふざけてなに?あんたのせいで200人のメンバーが一時期路頭に迷ったんよ。何が目的なん?」
「これが悪ふざけで済むと思ってるならやばいですね~」
おい、一応恋人が居る手前だからな。少し言い方に気を付けようと言おうとしたとき
「興醒めしました。もう彼とは別れます」
とりあえず落ち着きましょうと。
ちなみに恋人のスペックはギルド内でも上位5人に入る実力。黒幕、サブマスと同様ゲームにはとてもアツくギルドの為に沢山貢献してくれた実力者でもある。好きなゲームでの出来事だったので彼女も激怒したようだった。
「とりあえず今日はお開きにしましょう。ターミネーター、恋人はこのあとお二人でゆっくり話し合ってください。また後日お話聞かせてください。では解散!」
これが私に出来る精一杯の配慮だった。
翌日、ターミネーターからお話させて下さいと連絡が来た。
本人の希望で他のサブマスも同席してほしいと来たので、黒幕、サブマスに来てもらった。
「昨日の件、申し訳ありませんでした」
「説明を」
恋人から一瞬で冷たい返事が
「恋人がギルマスの話しかしないので腹が立っていました。ゲームの話、ギルマスの話ばかりされる時間に嫌気が差してやってしまった。あの写真を見せたら亀裂が入って崩壊すると思ってやりました。やりすぎたと思っています。すみませんでした」
は?
一同皆こう思っただろう。恋人から改めて説明が入った
「昨日あの後話しました。別れるつもりで。そしたらこの話をされました。これが本当の理由で間違いないようです。私たちの事情で皆様にご迷惑掛けたことお詫びします。申し訳ありませんでした。多方面に迷惑掛けてしまったので何と言っていいかわかりません」
ヤキモチかぁ~。
だが私は徹底的に気を付けていたことがある。一定の人を贔屓にしたり、特別扱いはしない。黒幕を始め、この恋人にも特別扱いなどしたことがない。思い当たることがないのだ。
「確かに私も彼と会ったときにゲームの話、ギルマスの話を沢山していました。反省しています。大好きなゲームだったからこそ、この件を重く受け止めて私はこのゲームを引退します。申し訳ありませんでした」
そこまでは誰も求めてない。その件はその件。我々はまた同じギルドを作って同じメンバーで再出発する予定だと伝えた。
「ありがたいお言葉ですが二人で決めたことです。私と彼はこのまま去ります。ギルマスが何年もかけて一から大きくしたギルドを壊してしまった償いは簡単にはできません。身勝手ですが引退することで少しでも償いになればと思ってます」
何度も説得したが覆ることはなかった。
ターミネーターと恋人はその後すぐにゲームを引退した。現在もログインしておらず、情報発信していたTwitterアカウントも削除したようだ。
その後残された我々はまたギルドを始めた。元の大きさに戻すのに何年掛かることだろうか。。
再結成を知った元メンバーも続々と集まってきた。ありがたい。
顔も知らない、素性も知らない誰かの為に皆一生懸命に頑張る。ゲームの中での話だが現実世界にこんな一生懸命になれる場所が現代にあるのだろうか。もしかしたらお互いがお互いのことを知らない方が物事が上手くいくこともあるのかも知れない。私はこのゲームでそう学んだ。
おかげさまでギルドは着々と元の形に戻りつつある。
だがあるものが足りない。
これを読んで心当たりがある方、ターミネーターと恋人はもしかしたらあなたのことかもしれません。
あなた達が居なくなった穴は他の人では埋められません。皆必要としています。
過去は過去。
水に流そうじゃないか。
戻ってこい!また昔みたいにみんなで楽しく一緒にやろう!
連絡する手段が一切ないので、この記事がターミネーター、恋人の目に入りますように。
完
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