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ドラマ『ミワさんなりすます』『下剋上球児』―「なりすまし」たちが放つ「本物」の輝きを



『ミワさんなりすます』:なりすまし家政婦

ドラマ『ミワさんなりすます』は、とにかく映画が大好きなフリーター・久保田ミワ/ミワさん(松本穂香さん)が、色々あってスーパー家政婦になりすまし、激推し俳優の八海崇(堤真一さん)の家で家政婦として働くという、「バレるかバレないかのドキドキ」「推しと近づけてドキドキ」のデュアル・吊り橋効果コメディ(#勝手に命名 #ゴロ悪い #なんでドイツ語)だ。

原作(途中まで読んだ)自体、とても面白いストーリーだったけれど、ドラマの映像では光が印象的。ミワさんと八海の初対面時の八海に差す後光(?)(1話)、閉じ込められた地下倉庫での八海を取り巻く青い光(4話)…。
特にミワさんが八海と初めてプライベートで会うレストランのシーン(11話)では、2人の顔が青白い光に照らされていて(床がガラス張りで、下を水が流れているお店だった)、この時間がミワさんにとって、いかに現実離れした時間かということを感じた。

ミワさんはなりすましの家政婦なのだが、その映画愛は八海をして「業界の人間でもそんなに詳しい人はいません」「それに、知識もさることながら、映画に愛がある」と深く感心させるほど。その映画愛の「本物さ」加減が、とにかく輝いている。
八海のマネージャー(山口紗弥加さん)などは、普段のミワさんの言動と経歴との乖離を不審がることも多い。一方で八海は、経歴に一部真実ではないことがあると明らかになった後でも、徹底して、ミワさん自身がどういう人間かを見ようとしている。その姿勢はまさに、人を観察し、人を演じる、「俳優」という職業で世界的スターになった人だからこそという感じがして、推したくなるミワさんの気持ちも分かる。この人も「本物」だ。世界的スターであるにも関わらず、一介の家政婦のミワさんに対して一貫して丁寧語で敬意を持った態度だというのもまた、推せる。これは推しちゃうよねぇぇ、ミワさん!!

推しの言動を反芻し悶絶するミワさんの姿や、映画愛を語りだしたら止まらないミワさんの姿、オタク同士の人間関係(推しの話で盛り上がる/推し方は人それぞれ)なども、一度でも推しがいたことのある人なら共感できるような、楽しさに溢れている。

『下剋上球児』:なりすまし教師

『下剋上球児』は、高校野球を通じて、現代社会の教育や地域、家庭が抱える問題や愛を描くドリームヒューマンエンターテインメント、と紹介されている。

当初、割と普通のスポ根ドラマで、順当に頑張る高校生たちの姿をみていくのだろうな~と思っていた。
でも、2話のラストで、主人公の南雲先生(鈴木亮平さん)がなんと教員免許を偽造していた、という事実が明かされ、まったく予想していなかった方向だったのでビックリした。そしてこの方向性は、個人的にはとても面白いと思った。
弱小野球部が徐々に強くなっていくというストーリーは、ありがちっちゃありがちなので、1話に部員が1人か2人ずつ、順番にやる気を出していくんだろうなとか思っていたら、2, 3話の時点で、もう既に全員やる気満々になっているし…笑

南雲先生は、確かに教員免許を偽造している「なりすまし教師」ではあるのだけれど、練習に出なくなった部員の家を訪ねたり、部に出なくなってからも試合の映像をチェックして部員一人一人に手紙形式で細かいアドバイスを書いたり、練習メニュー考えたり・・・と、野球や野球部、部員への思いは「本物」
生徒たちにかける言葉がまた、ちゃんと一人一人の立場に立っていて、寄り添うべきところは寄り添い、発破をかけるべきところは発破をかけて・・・と、プロのメリハリを見せ、監督や教師に向いているなあ、と素人目にも思うようなところが、かえってツラい(ニセ教師なのだ。。。)。


ミワさんはなりすまし家政婦だけど、その映画愛は本物。
南雲先生はなりすまし教師だけれど、その名将っぷりは本物。

思えばドラマでも、映画でも、小説でも、おおよそフィクションなんて誰かの頭の中で展開されたウソ=「なりすまし」の話を表現したものなのに、笑ったり、感動したり、ときに怒ったり(ときには好みでなく途中で消すこともあるけど笑)するなんて、よく考えてみたらすごい話。きっと「なりすまし」の中にある「本物」に惹かれて、またテレビの前に座ってしまうんだろうなあ。

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