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みっともないバレンタインの思い出

もうホワイトデーがくるというのに遅いけれど、バレンタインデーの思い出の話を書きます。

小学校6年生の2月のこと。
その頃、私は3人の友達と同じ仲良しグループに入れてもらっていた。
「入れてもらっていた」と書いたのは、スクールカースト的な意味で、私は残念ながら彼女たちより数段下だったからだ。

仲良しグループのリーダー格は、みなこちゃん(仮名)。
彼女は、とても大人びていて、知的で、おしゃれで、私は憧れていた。
洋服なんか、大人が着るようなブランドの服を着ていた(メゾピアノとかでもない)。そしてそれがよく似合っていた。
私なんか、親がダイエーの子供服売り場で買ってきたよく分からないシマシマの服を着ていたのに。

シマシマの服を着たシマウマ。どこからが服で、どこからが素肌?
(AIが描いてくれた)


ガリ勉でダサくて付き合いも良くないし話も面白くない、一歩間違えればいじめのターゲットになりそうな私を、みなこちゃんたちはよく仲間に入れてくれていたものだと思う。

そんないつもの仲良し4人グループで、「バレンタインには、みんなで友チョコを作ってきて交換しようよ」という話になった。

さあ困ったことになった。

私は過剰に気が弱くてクソ真面目で、ルールを破るということが全くできない性格だった。
当時、学校ではお菓子を持ってくることは禁止されていた。もちろんバレンタインの日も。
そして、みんなで交換するお菓子を作るということは、親に、「友達にあげるお菓子を作りたいから、製菓材料を買ってほしい。そして、キッチンを使わせてほしい」と言わなければならないことを意味していた。でもそれは同時に、「私は学校のルールを破ります」ということを親に宣言することと同じだった。
気が弱い私は、そんなこと、とてもじゃないけど言えなかった。

お菓子を作ることはできない。
でも、仲良しグループの子たちに嫌われたくない。

さんざん悩んだ末、私は、家にあったカントリーマアムを個包装の袋から取り出し、それを100円ショップで買ってきたギフト袋に移し替え、あたかも自分で作ったクッキーかのような演出を施した。
そして、何食わぬ顔(のつもりの顔)でそれをみなこちゃんたちに渡したのだった。

大人になってから、『凪のお暇』というドラマを観ていたら、とある女性の登場人物が、意中の男性(高橋一生さん)を家に招き、手料理を振る舞うというシーンがあった。しかし、実は、手料理を振る舞うというテイであり、買ってきたお惣菜を取り出してお皿に盛りつけただけという設定。男性は、お惣菜の店の袋を部屋の中で見つけたことから、このことを見抜いており、「買ったのね」と心の中でつぶやく。そして、料理上手だった元カノ(主人公=黒木華さん)を思い出すというシーンだった。

これを観たとき、「ああ、バレるんだ……」と思った。
実は、私のカントリーマアムも、バレていたのだった。
みんなで友チョコ交換をした次の日、みなこちゃんから、「カントリーマアムっておいしいよね」と言われたのだ。ギクリとして、何も返せず、たぶんこわばった笑顔を返していたと思う。
みなこちゃんは、私のことを責めたりバカにしたり、そういうつもりは全然なかったと思う。
だけど、私は恥ずかしさやら罪悪感やらで消えたくなっていた。ダイエーの服に包まれながら。

再掲。

そんな12歳でした。

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