陰謀の夜と黄金律ラダゴンについて 【エルデンリング考察⑤-2】
エルデンリング本編のネタバレを含みます。御理解の上、お読みください。
エルデンリングの考察をするとき避けては通れないのが、
ラダゴン、メリナ、ミケラの3人である。
今回はラダゴンについての第2回、
女王マリカと陰謀の夜を切り口に考察する。
前回の考察内容を前提とするので、
まだ見てない方はこちらの記事を
先に見ていただければ理解が速いと思う。
尚、この記事中の考察はあくまで筆者の考えに過ぎない。
~だ。などの断定口調で記述してあっても、
客観的事実に基づいた検証可能な事象でない場合があるのでご容赦を。
前回のまとめ
ラダゴンは、マリカに掛けられた巨人の呪いを抽出した存在である。
そして、その呪われた身体故に、
黄金樹の時代を終わらせて次の時代を始める力を持つ神人を産む力がある。
また、巨人の呪いという誇れる産まれを持たぬが故に、
盲信、信仰、肯定ではなく知力、学術を以て黄金律の探究などの
完全を目指して研鑽を積んだのだ。
女王マリカはあんなものに操られていた
女王マリカはかつて神人であり、影従の獣としてマリケスを授かっている。それはラニと同じ境遇であることから、
ラニが身体を棄ててでも成りたくなかった二本指の操り人形であると
推測される。
エルデンリングを掲げるがよい
女王マリカは、ゴッドフレイとその戦士たちの祝福を奪い、
瞳から祝福が褪せた者を狭間の地から追放している。
マリカはエルデンリングを掲げて黄金樹の時代を始めており、
追放する際にも帰ってきた後、
エルデンリングを掲げるように呼びかけていることから、
いつか彼らに祝福を返して狭間の地へ呼び戻し、
彼らに次の時代を始めさせることまでが計画だったと考えられる。
大いなる意志は、世界と生命を見捨てない
その計画は、マリカが黄金樹に囚われた後も、
大いなる意志とその遣いたる二本指が引き継いだと思われる。
尊く生まれ落ちているのです
前回の記事で、
ラダゴンはマリカの呪われた血を抽出した存在で、
その巨人の呪いを背負った身体故に、
黄金樹の時代を終わらせ、次の時代を始める力を持つ神人を産む力がある
と考察した。
上の項目で、マリカが次の時代を迎えようと計画していたと推測した。
その二つを繋げ、
ゴッドフレイ追放後にラダゴンが王都に戻った理由は、
女王マリカが次の時代に必要な神人を産もうと試みたからではないか。
レナラとラダゴンの間に産まれたラニが、
新しい律を掲げるべく貴く産まれ落ちたことを知った女王マリカは、
ラダゴンに神人を産む力があることを知り、
冷たい夜の律を持つラニよりも黄金律に近い律を宿した、
レナラの月の影響を受けていない純粋な神人を作ることを画策した。
そうして、ミケラとマレニアが脆弱に生まれ落ちた。
共に砕けようぞ!我が半身よ!
マリカは元々同じ存在であるが故に、
ラダゴンとの間に上手く子作りできないことを知り、
用済みとなった半身ラダゴンと自分を砕いて一つになったのだろう。
黄金律原理主義を掲げた
一方で、ラダゴンはこの世界の律たる黄金律の探究に精を出し、
その果てに回帰と因果という黄金律の根本を為す二つの力を見出す
それは、全ては不易に収斂=永遠に変わらず、
何事にも原因と結果があるというものだった。
それは、彼が完全を目指してどれだけ努力しようと、
火の巨人の呪いという原因によって産まれた自分自身という結果は、
永遠に変わらないままで、
結局は元々の状態に収斂していくという絶望であった。
黄金律を完全にせんとする
少し話はズレるが、
黄金律原理主義者として律の探究を追い求めた金仮面卿は、
その果てに完全律の修復ルーンを見出す。
曰く、黄金律が不完全なのは、神が心を持つ存在だったからだと。
完全を目指したラダゴンもまた金仮面卿のように完全律を見出し、
自分がその妨げになることを理解してしまったのかもしれない。
彼が自身の拠り所とした黄金律とその探究は、
しかし、彼に絶望を与えるものだった。
起こるべきでないこと
ところで、女王マリカの計画していた次の時代を迎える手順とは
どんなものだったのか。
拒絶の棘は二本指にとって想定外の存在だった。
ましてや、黄金樹を焼くことなど微塵も想定していなかったのだろう。
そこから、二つ目の項で考察した
マリカや大いなる意志が想定していた次の時代への移行は、
褪せ人が行ったような黄金樹を焼いて迎えるようなものではなくて、
黄金樹を保ったまま、
平和的な禅譲によって行われるものであったと想定される。
冷たい霧の夜だった
しかし、ラニが陰謀の夜を実行し、自身の身体を棄てることで
二本指や大いなる意志の支配下から抜け出した神人となる。
それは、大いなる意志にとってすこぶる都合の悪い存在だった。
女王マリカは、狂ったのだろう
指に選ばれた神人であった
神人について考察するために、宵眼の女王について軽く考える。
宵眼の女王は神人と明言されているが、
女王マリカを継ぐ次代の神の候補ではない。
その理由として既に死んでいるとも考えられるが、
褪せ人のバルグラムがその象徴たる神狩りの剣を携えて、
神人たる彼女の影従たらんとしていることから、少なくとも、
破砕戦争後最初の褪せ人が円卓に来るまでは生きていたと考える。
では、何故神人なれども
女王マリカを継ぐ次代の神の候補になれなかったのか。
それは、宵眼の女王がかつて神人として使命された際に
マリカが今代の神になったからだと考える。
つまり、複数選ばれた神人の内、誰かが神になったのなら
それ以外の神人は神人ではなくなるのではないか。
そう考えれば、神人で「あった」という過去形が腑に落ちる。
以上の考えを元にすると、
次の時代が始まれば、
身体を棄て二本指の操り人形ではないラニといえども、
神人ではなくなると思われる。
つまり、
女王マリカが自分の時代の象徴たるエルデンリングを砕いたのは、
無理やりにでも次の時代へ移行させようとしたからだ。
黄金樹好きのモーゴットあたりが王になれば良いと考えていたのだろう。
しかし、彼は拒絶の棘に阻まれる。
それは、拒絶の刺
拒絶の棘にはラダゴンの刻印と同じ紋章が刻まれていることから、
ラダゴンによって施されたものだろう。
拒絶の棘を越えるためには
巨人の大釜に燻っている滅びの火に火の幻視を宿す者を贄に捧げて着火し、
死のルーンを解き放つことで黄金樹ごと拒絶の刺を焼いていく必要がある。
外のすべてを拒む、自我の殻
拒絶の棘は、死のルーンを解き放ち、
黄金樹を焼かねば次の時代を迎えられないという仕掛けである。
それは、
不易という黄金律の根本にして自分を縛る呪いが
死のルーンの封印によって生じているためであり、
女王マリカから生じながら、完全律のために不要な自分が消失するためには
死のルーンを解き放つ必要があるからだと考えられる。
そうして、拒絶の棘を越えて中に入ってきた褪せ人と
マリカと共有している身体で戦うことで、
女王マリカに邪魔させずに、自分を消し去ることに成功したのではないか。
女王マリカが、エルデンリングを砕こうとし
ラダゴンが、それを修復しようとした
話は前後するが、
マリカがエルデンリングを砕いた後、
ラダゴンはエルデンリングを修復しようとした。
彼は、エンディングで主人公が修復ルーンを用いて行ったように
黄金律に新たな理を加えようとしたのだろう。
「不易」でなくなる理を加えようとした
「完全律」を加えようとした
などいくつか考えられるが、何れにせよそれは失敗した。
エルデンリングの修復が失敗したがために、
彼は最後の手段として拒絶の棘を施した。
自らの絶望たる「不易」を消し去るために。
完全なる律の時代を迎えるために。
まとめ
ラダゴンは、マリカに掛けられた巨人の呪いを抽出した存在である。
そして、その呪われた身体故に、
黄金樹の時代を終わらせて次の時代を始める力を持つ神人を産む力がある。
また、巨人の呪いという誇れる産まれを持たぬが故に、
盲信、信仰、肯定ではなく知力、学術を以て黄金律の探究などの
完全を目指して研鑽を積んだのである。
そして、
その探究の末に黄金律のもとで自分が完全になれないこと、
自分の存在が完全律のための妨げであることを知る。
故に、黄金樹の入り口に拒絶の棘を施し、
それを越えんとする次代のエルデの王たる褪せ人に
死のルーンの解放を望んだのである。
余談①ギデオン=オーフニールとの繋がり
ラダゴンは明らかにギデオン=オーフニールとの繋がりが示唆されている。
小黄金樹教会での呼びかけは内容からラダゴンのセリフとされているのだが、「あるべき正しさを知ることが、我らの信仰を、祝福を強くする」「同志よ、何の躊躇が必要だろうか!」と語りかける。
一方のギデオンは「素晴らしい。君は素晴らしい同志、褪せ人だ」などプレイヤーに対して同志と呼びかける上に、「ここにある識るべきすべてを、識っておかねばならぬ」と知への並々ならぬこだわりを見せる。
また、ギデオンから渡される秘術の最たるものは祈祷「因果律原理」だが、これはラダゴンの始めた黄金律原理主義の根本の片割れである。
また、ギデオンとのボス戦で事前にデミゴッドの情報を伝えていない場合に彼は、カーリア王家の魔術とレアルカリア学院の魔術、黄金律原理主義系祈祷とラダゴンとの結び付きが強い3つの系統の魔法を使用する。
(その他に武器戦技の他、何故か「黒炎の儀式」も使用するが……)
具体的には、「カーリアの円陣」「ほうき星」「彗星アズール」「三なる光輪」「因果律原理」を使用する。
特に、「三なる光輪」は聖樹の支え、エブレフェールにある祈祷であり聖樹へ行くことへこだわりを見せていたギデオンが持っているはずのない祈祷である。
しかしながら、他に繋がりが見えてこないので保留。
「女王の憂い」などやたらマリカの機微に詳しいのも気になるが、
続きは別の記事にて。
余談②メリナとの繋がり
火の巨人との関連と火の幻視
赤髪
「エルデの王」へのこだわり
拒絶の棘にやたら詳しい
メリナとの関係が強く感じられるのは、マリカよりもラダゴンの方だ。
しかし、彼女には「母」が存在するらしいので、
単純にラダゴンの分け身というわけではないのだろう。
これもまた、別の記事にて
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