見出し画像

雑穢 #1017

雑穢とは、実際に体験した人の存在する、不思議で、背筋をぞっとさせるような、とても短い怪談の呼称です。今夜も一話。お楽しみいただけましたなら幸いです——。


 中学生の頃の体験。
 部活動の時間になると、時折全身タイツを着ているような、人の形をした影のようなものが現れた。顔もない。髪もない。立体的な影のようなものだ。
 身長は一六〇センチから一六五センチほどで、痩せ型。黒いのと、白いのがいた。二体とも足元が透けていた。
 毎回その二体は揃って出現する。教室、廊下、体育館と、場所は問わずに唐突に現れて、そこからは移動しない。
 いつも黒い方は棒立ちで、白い方はダンスでもしているように、とても激しく全身を動かし続ける。不気味ではあるが、特に害はなかったように思う。
 最初はそれが見えているのは自分だけかと思っていたが、部活仲間に相談してみると、その中の一人にも二体もことが見えていた。
 二人で何者なのか調べようと、どこに出るのか、黒と白とは何が違うのか、そして自分たち以外にも見える人がいるのかと、色々調べてみたが、結局何も情報を得ることができなかった。もしかしたら見えている人はいたのかもしれないが、打ち明けてはもらえなかったということだったのかもしれない。
 卒業まで何度も見たが、あれが未だに何だったのかはまるで分からない。

次の話


雑穢

note版雑穢の前身となるシリーズはこちらに収録されています。一話130文字程度の、極めて短い怪談が1000話収録されています。

二次利用と使用報告に関するお願い

神沼三平太『千粒怪談 雑穢』及び本作『本当にあった不思議な話 雑穢』では、作品出典を明記すること 及び、使用報告を条件として、個人が収録作を脚色してのリライ ト、朗読、小説化、コミカライズ、その他の二次利用を行うことを許諾しています。 収録作品の利用に当たっては以下の報告フォームから、使用報告をお願いします。これは不正利用の嫌疑から利用者を守るための手続きであり、報告された内容がそれ以外の目的で使用されることはありません。 また、フォームから登録したことで、以下の使用条件に合意したものとします。

 ・収録作品をリライトなどの加工を行わずにそのまま転載する
  ことはできません。
 ・収録作品を出典の明記なしに使用することはできません。
 ・収録作品の著作権は神沼三平太に帰属します。
 ・収録作品を元に制作された各作品の著作権は、それぞれの制
  作者に帰属します。

なお本作については、それぞれの当該作品のコメント欄にての報告も、以上の使用報告に準じるものとします。

サポートよろしくお願いします。頂いたサポートは、怪談文化の発展のために大切に使わせて頂きます!