雑穢 #1009
雑穢とは、実際に体験した人の存在する、不思議で、背筋をぞっとさせるような、とても短い怪談の呼称です。今夜も一話。お楽しみいただけましたなら幸いです——。
知り合いのバーテンダーの祐貴くんから聞いた話。
友人がアスファルトの上ですり身になったちょうどその時間に、変な女たちに囲まれていたのだと、玄太は目を伏せた。
周囲の酸素が次第に薄くなっていくのを感じながら、祐貴くんは次の言葉が発されるのを待った。冷房の風でコーヒーが冷めていく。
行きつ戻りつする要領を得ない発言内容をまとめると、玄太を囲っていた女は三人で、身長は揃いも揃って一九〇センチ超え。全員赤い春コートを身につけて、裾から伸びる脚が艶かしかったらしい。
「次は君の番。八月九日の夜」
最後に女たちはそう予告して、ライトが消えるように姿が見えなくなった。
この話をする前もしている間も、玄太はひどく怯えていたという。
その話が気になっていた祐貴くんは、八月半ばになってから玄太に連絡を取ろうとした。だがそれは叶わなかった。その後、共通の知り合いから聞かされた話では、八月九日の未明にバイク事故で死んだ玄太の血の跡は、アスファルトに染み込んだような一本の暗い赤色の線になっていて、今でも取れていないらしい。
次の話
雑穢
note版雑穢の前身となるシリーズはこちらに収録されています。一話130文字程度の、極めて短い怪談が1000話収録されています。
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