作曲は独学、の作曲家が好きな件
仕事休みの平日の夜、東京都内のレコーディングスタジオへ。僕が作った合唱曲のレコーディングがあり、作曲者として立ち会いました。
とある音楽出版社(実は昨年まで僕が勤めていた会社でもあるのですが)から出版される合唱曲集のために作品を書く機会を得て、小学生用の3分ほどの2部合唱曲を書き下ろしました。
演奏してくれたのは名の知れた児童合唱団。レコーディングにも慣れていて、1時間ぐらいで録り終えました。
僕は、今は音楽に関する仕事が「本職」ではありませんが、このように「副業的に」音楽にかかわれるというのは、とてもラッキーなことだと思います。ある意味では僕が理想とする音楽活動のかたちかもしれません。
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僕がこれまでに「出会って」好きになった音楽家って、大学などで音楽を専門に学んでいない人のほうが多いです。
そのことを最初に意識したのは中学生のとき。
ピアノの発表会でエマニュエル・シャブリエ(1841~94年)というフランスの作曲家の曲を弾くことになり、どんな人なのか調べてみたんです。すると、彼は大学では法律を学び、内務省に勤める公務員だったんですが、音楽の道をあきらめられず、40歳ごろに作曲家に転身した、ということでした。そんな人もいるんだ……とすっかり感心してしまいました。
シャブリエは今日聴いても非常にしゃれた和声(コード進行)や耳に残る特徴的なリズムを使った曲を残しています。例えばこんなピアノ曲。
軽妙洒脱という言葉がぴったりな作曲家です。
その次に、高校入学前後にファンになったのが映画「ゴジラ」の音楽を手掛けたことで知られる作曲家、伊福部昭(1914~2006年)。この人も独学で作曲を修めた人。もともと北海道で林務官していて、仕事が休みの日に作曲の研究をし、海外のコンクールで賞を取ったり、「管弦楽法」という大著(今なおクラシック系の作曲家なら一度ぐらい目を通したことがあるような本です)を完成させたりしています。
オスティナートという、一定のリズム・音型を執拗に反復させる技法が特長で、ミニマル音楽にも通じるものがあります。
久しぶりに聴きましたが、やっぱりかっこいいなあ。
高校時代、この伊福部かストラヴィンスキーが僕の自転車通学時のテーマ音楽でした。伊福部を聴くと、自宅から高校までの風景が脳裏をよぎります。
そして大学受験のころ、武満徹(1930~96年)と出会います。こういう修飾語を安易に用いるのを僕は好まないんですが、武満は「日本を代表する」「世界的な」作曲家であるとともに思想家でもあって、僕はけっこうな影響を受けていると思います。そんな武満もやはり作曲はほぼ独学でした。
この季節にぴったりの、透き通るような美しさのオーケストラ曲を載せます。
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僕も芸大で和声学などは学びましたけど、作曲は独学です。いえ、大した曲も作っていない(作れない)のに「独学」なんて言えなくて、生きているうちに「作曲は独学」と堂々とプロフィールに記せるような曲を書いてみたいものです。【り】
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