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VTuber考察実践の手引き

■まえがき
 Vtuberについて考察するにあたって、何か自分の考えを述べたとき、それがVtuberの何について言及しているのか、その目的意識の明確化と分類がこれまであまり見かけなかったように思います。
 いつだったか「考察勢はそれぞれの専門に分散していく」というような旨のツイートを見かけた気がします。そうした時、それぞれの考察が宙に浮いたままになり、検索性に乏しいことで参照されず、知見やノウハウとして蓄積や体系化がなされないのは、Vtuber考察の発展を思えば課題となる野ではないでしょうか。
 今回私がまとめた「Vtuber考察実践の手引き」は、私自身がVtuber考察を実践する際に、自分でその考察をする目的・方向性を見失わないようにするための羅針盤です。私自身のために書いたものですが、表現には考慮して、だれが読んでもある程度は分かるものにしたつもりです。皆さんの考察の一助になれば幸いです。ぜひご活用ください。

【目次】
■VTuberコンテンツ論
■VTuberの歴史
■VTuber民俗文化論
■VTuberを取り巻く技術・サービス
■VTuber活動実践論
■バーチャル表現論
■仮想認知論
■VTuberと海外

■VTuberコンテンツ論

『なんでそれが面白いの?』
 ゲーム実況、歌ってみた、ASMR、キズナアイ面接、模擬面接、TRPG、人狼、怖い話、雑談、コラボ、生配信、ファンアート、バーチャルYouTuberMAD、MMDバーチャルYouTuber、などなど。
 VTuber観賞において、そこに横たわる具体的な様々なコンテンツ事例に関する研究、考察。評価されるコンテンツの需要実態や方法論、現状の課題や発展予測、あるいは未開拓分野の可能性の考察によって、VTuber活動やファンクリエイションの実践手引きとなることを目的とする。

■VTuberの歴史

『これまで何があったの?』
 2016年12月活動開始のキズナアイからバーチャルYoutuberは始まり、ねこます氏の登場と個人VTuber戦国時代の突入、にじさんじの登場とライブ配信スタイルの増加、空想コード+を先駆けとした個人VTuber間でのグループ化の流れ......。
 これまでVTuber界隈あるいは関連する文脈の前史で起こった様々な出来事をクリップし、それによる界隈内外における影響を多角的な視点から考察する。それをVTuber活動実践や未来予測、危機回避などに役立てることを目的とする。

■VTuber民俗文化論

『誰が何をしているの?』
 「アニメ的なキャラクターが反応してくれる」という特異性で見られるVTuberというパーソナルが中心となり、形成されるコミュニティ。その性質ゆえに特徴的なほど盛り上がりを見せる、イラストを中心とした「ファンクリエイション」と「ネタの公式化」。キャラクター的パーソナルに付き物の”中の人などいない”などのような暗黙の了解「お約束」。
 こうした特徴的なコミュニケーションを中心に、それぞれの立場から「そのように振舞う」ことの理由と意義を分析・考察、また互いの利害や相互関係を整理し、コミュニティ全体の俯瞰図の作成を試みる。それによってコミュニティ内の円滑な交流と様々な諸活動の実践補助を目的とする。

■VTuberを取り巻く技術・サービス

『それで何ができるの?』
 VTuberを取り巻く技術やサービスには様々なものがある。VTuber活動の基礎となるUnity、blender、facerig、ライブ2D、OBS、Youtubeのようなプラットフォーム、twitter。ファン活動を補助する蒼天画廊、MMD。特にバーチャルやVtuber界隈に向けた支援技術やサービスとしてVRchat、HMD、バーチャルYoutuberランキング、バーチャルキャスト、Vカツ、恋声、VROSなど。
 こうした周辺技術及びサービスを類型化・分類し、それぞれの特徴を分析、目的に応じた技術・サービスの選択の補助を目的としたデータベースの作成を試みる。また、技術・サービスそれぞれの課題や改良点から、将来的展望を予測し、Vtuber活動実践における先見補助を担う。

■VTuber活動実践論

『何をすればいいの?』
 Vtuber活動の実践に伴う運営要項は様々である。動画投稿・生配信・コラボといったメインとなる活動。twitterでのPRやコミュニケーション。自分をどのように見せるかという作り込み「ブランディング」や、権利周りの規約整備。企業案件やマネタイズに関するマネジメントなど。
 こうしたVtuber活動についての様々な事例を収集し、具体的なノウハウを蓄積し共有する。目的にあった手段の選択や活動の円滑化によるストレスの軽減など、個々のVtuber活動の継続と発展に寄与し文化全体の堅牢化と健全化、そして活性化を促す。

■バーチャル表現論

『バーチャルらしい表現って何?』
 VTuberとともに盛り上がりを見せるVR(バーチャルリアリティー)。3Dのアバターと3Dワールドで構築されるソーシャルVR。VTuberコンテンツとしては、物理演算を用いたシュミレーションVR。輝夜月のVRライブ。近似技術として、Pokémon GOに代表されるAR。より広義には、"音のVR"や"匂いのVR"というものも存在する。
 VTuber活動においてたびたび追及されるバーチャル的表現。VRライブにおいても表現そのものへの追及がなされるなど、期待されるバーチャル表現に向けては多くの課題と可能性を孕んでいる。そういったバーチャルの可能性について建設的姿勢をもって考察・実践に取り組み、事例の蓄積と表現の開拓など、新たな表現手法としてのノウハウの体系化を試みる。

■仮想認知論

『どう考えてるの?』
 VTuberが牽引するアバター文化では、これまでの常識とかけ離れた新たな認知形成が見られる。のらねこPさんに見られたVTuberというパーソナルと魂の人格の乖離や、キズナアイとフェミニズムの論争から明らかになったジェンダーロールに関する認知のズレなど、いわゆる「服を着替えるようにアバターを着る」や「おじさんでも美少女になれる」といったものである。
 このように、人格やそれに伴う諸要素の解体と再構築による自由なパーソナル形成、その自己表現が本来のパーソナルよりも尊重される社会では、既存の社会にはなかった新たな常識が当たり前に共有されている。そういった認知の変化は今後どのような発展を見せるのか。ストレスフリーへのアプローチや、人格形成における影響など、多角的視点から考察し、アバター社会の健全化を促すことを目的とする。

■VTuberと海外

『海外のVTuber事情ってどうなってるの?』
 キャラクター文化の根強い日本で特に盛り上がりを見せるVtuber。しかしその一方で、すでに海外でもVtuber文化は波及しており、同様に盛り上がりを見せている。
 そんなVtuberの海外事情について観測し、日本の現状との比較や考察を通じて、今後世界規模でVtuberが盛り上がり発展していくためにどのようなことが出来るかなど、国境シームレスな文化としてのVtuberアプローチを考える。

■おわりに
 ここで行ったVTuber考察の分類はあくまで個人によるものです。この分類では当てはまらない考察がある可能性もあります。より適切な分類もあるかもしれません。考察分類そのものに考察の目を向けて、より純度の高い考察分類が形成さることを私は望みます。もし興味が湧きましたら、考察という行為そのものにメタになって、あなたなりの考察分類を書いてみませんか?

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