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Photo by
riconomori
ポリハレビーチまで 2)ある日の日記
ヨーコの夢をみた。
いつものあの、穴倉みたいなヨーコの小さなバーのカウンター席に私は座っている。
店内は薄暗く、ソウルミュージックが低く流れている。
私の斜め前には、カウンターの内側の小さな椅子に腰かけてタバコを吸うヨーコがいる。
夢の中の私はヨーコが死んだことを知っていて、その顔を見つめている。
「なぁちょっと触ってもいい?」
私は幅の狭いカウンターテーブル越しに手を伸ばす。
「なんやの、急に」
ヨーコが照れたように笑う。
「いいから」
私はヨーコの腕をぎゅっと掴む。
それは柔らかくて温かくてホッとする。
固くも冷たくもなくて良かったと、私は泣いた。
目覚めたらまだ夜が明けていなかった。
夜が明けようと明けまいと、ヨーコの身体はこの世のどこにもないのだ。
あと数日でヨーコの誕生日がくるのを思い出したが、ヨーコはもう年をとらない。
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