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電話ボックス

神戸でカメラを持ってぶらついていた。
レトロな電話ボックスを見つける。
ファンタジックな夢に詰まったお洒落な写真に挑戦する。
しばらく撮っていると突然、電話ボックスの電話が鳴った。
けたたましい呼び出し音は私の思考回路をかき回し、不安感を煽る。
受話器を取らなければとの強迫観念で、恐る恐るドアを開ける。
閉ざされていたボックス内は太陽光に照らされ暑く、少しカビ臭で蒸せる。
電話からは弱弱しい女性の声が聞こえる。
何か不安を訴えているようだ。
難聴の私には聞こえづらいので、大きな声で言うように要求する。
内容は聞き取り難かったが、声には確かに聞き覚えがある。
彼女に違いないと思い、私は彼女の名前を言ってみたが相手は違うと言う。
私にはその声には確かに聞き覚えがある。
暫く仲良くお付き合いしていたが、突然連絡が途絶えてしまった。
私の心の中では彼女は存在し続けているので、色々近況を聞きたかった。
彼女は私の事を忘れているだと思い、その当時のデートの事を言ってみた。
その女性は違います、違いますの一点張りで最後は電話を切ってしまった。
あの電話は何なったんだ?
私の心にはあの声は彼女に間違いはないと言う確信だけが残った。

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