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心が汚れている

高槻の今城塚古墳公園での出来事です。
今城塚古墳公園は今城塚古代歴史館と古墳公園が合わさった市民公園です。
この古墳は6世紀前半につくられた継体天皇(聖徳太子の曾祖父)の墓だといわれていますが、現在は全国でも珍しい古墳公園となり、高槻の人気エリアのひとつ。
天皇陵(大王墓)でありながら古墳の中を自由に歩きまわれる公園は“日本でもここだけ”。木立に覆われた墳丘にも入ることができ、まわりの芝生広場や堤では、散歩をしたり、スポーツをしたり、ピクニックをしたり、ゆったり過ごす憩いの場、遊び場として親しまれています。

私は古代歴史館を見学後、池の淵で写真を撮っていると小学校低学年の子供達5人が池に入ろうとしている。
池の柵にはこの中には入らないでと掲載。
一番体格が小さい子供には、この土手を滑り降りると、池に落ちるかも? 本人も少し危険を感じているのか、私の方に不安感を投げかけている。
「柵を越えて池に降りたらダメだよ」注意する。
一番体格の大きい子供が「どうしてダメだの」と聞いて来る。
子供は「池に大きな魚がいるので見に行くだけだよ」と言う。
私は子供達にただ単に入るなと言っても納得しないだろうと思えた。

咄嗟に「大王さんがこの池の鯉をイジメるものには、池に引きずり込むとおっちゃんに言った」
地元の子供達なので大王様を知っているらしく、「おじさん大王さん見たの」と聞いて来た。
「もちろん、会ったよ」と答え、歴史館の中で今城塚古墳時代の大王の鎧兜と壺の多重露出写真をうやうやしくして見せた。

「わあ、本当に鎧が写っている」
子供達は大王様を探す事に興味が移り、私が見たと言った埴輪展示場へと駆けて行った。
まあ何とか子供を危険から救った気分になった。
暫くすると子供達は私の所に帰って来て、「おっちゃん大王さんはいないで」と言う。
私はとぼけて「おかしいなあ」、おっちゃんには見えたけどなあ。
「よし一緒に探そう」と埴輪展示場へと付き合った。

埴輪の家のそばで「ここに居てはるわ」
子供たちは「見えない。見えない」と騒ぐ。
私は「本当に見えないの」ととぼける。
「ほんなら、見せたるわ」と言いながら、多重露出にセットする。
「大王さん撮らせてもらいます」と言い、大王様と埴輪の家を多重露出撮影をする。
「ほら写っているやん」
子供達は「ほんまや、大王さんや」と笑っている。

すると一番体格の大きい子供が「おっちゃんには見えて、僕らには何故見えないの」と聞いて来た。
私はすかさず「そらおっちゃんの心がきれいからや」と答える。
子供は「僕らの心もきれいやで」と反論する。
「きれいかったら見えるのに不思議やなあ。お父さん、お母さんや先生の言う事をよく聞いているか?」と質問する。
その子供は「うう~」と声を出して頭を振っている。
他の子供が「こいつ昨日怒られとった」と言う。
「怒られたのなら心が汚れているわ」と私は笑いながら答える。
子供達も笑っている。
遠くから会社の終業ベルが聞こえて来た。
「おっちゃんは帰るから、みんなも帰る時間やろ。
人の言う事をよく聞いておっちゃんみたいなきれいな心になりや」
「分かった。バイバイ」と子供達は笑いながら帰って行く。

しばらく池の淵を歩き公園の出口に着くと、壺の傍に縄文の女神が見えた。
「いつまでもきれいな心を捨てないでね」と皮肉のお返しが聞こえた。


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