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京都"竹の径"で女性に道を聞かれる

京都・向日市の竹の径へ、青々と茂る竹を撮りに行きました。
駅に着いた時は晴れていたのに竹林公園まで来ると、ぽつりぽつりと雨が振り出しました。どうも私は雨男らしい。
雨が本降りに成りだしたので、雨の掛からない笹の葉が沢山茂っている竹藪へと駆け出した。頭上では雲間に雷光が光っている。突如、怒鳴られているような雷鳴が耳をつんざき、雷光で目が眩んだが、何とか雨が避けられる所までたどり着いた。
暫くすると雨が止み空気も清浄され、竹藪が青々と輝いて天上世界に居る錯覚に酔って来る。
竹を少時間撮影し、他の竹藪に移ろうとしたら後ろから女性の声がした。
「もし、あにさん道を教えてくださいな」と声がする。
振り向くと鳥追い女がいて、江戸言葉で道を聞かれている。
鳥追い女はテレビの水戸黄門で由美かおるが女旅芸人と忍者(くノ一)に扮していたのを思い出す。
ファンなのでよく見ていたが、そんな女性が目の前に現れている。
何故竹藪で鳥追い女に出会うのか、頭が混乱したが、渋皮のむけたべっぴんを前にしては思考力が麻痺して考える力が抜けて来る。
もう思考力はやけのやんぱち状態だ。
旅笠から見える髪は烏の濡れ羽色、三味線を抱き、たおやかな柳腰で昔風の言葉で、小股の切れ上がった女がそこに居た。何故か私のボケて久しい頭からは昔の言葉がよどみ無く出て江戸時代に入っている。
粋な女の手前、伊達男を演じたいが「思考力が空回りして私の口からは「はあ」しか出て来ない。
女は「あたしは江戸から京に来て、上方に向かっています。淀川沿いの俳人・与謝蕪村さんに会いに行きたいので淀川はどちらかえ」と聞いて来る。

与謝野蕪村は淀川沿いの毛馬水門に与謝野蕪村の碑があったので淀川沿いを行く事を教えた。とりあえず竹藪から出て道を教えやすい所まで一緒に出ることにした。
「何故与謝野蕪村さんをご存じなのか」と女には質問をして、現状を探ることにした。
「蕪村さんとは一緒に旅をしたんです。楽しかったわ」と笑顔になる。
「蕪村さんの作品のアイデアはほとんど自分が出したものだ。会ったらご馳走をしてもらうわ」と悪戯っぽい顔になる。
楚々とした振舞に色気を感じる。

竹の径の出口付近まで来るとお礼に飲みに行こうと誘われる。
久しぶりに三味線を弾きたいし誰かに聞いてもらいたいとあだっぽく懇願された。もう私の心はこの鳥追い女に蹂躙されている。
私は色々考えを張り巡らし、冒険心を絞り出して「いいよ」と言うために振り向いた。

振り向くと鳥追い女は居ない。そこには狸が居た。
「くそう アイツだったのか」と私は唸った。

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