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桜の味は

今年の桜は盛り上がりに欠ける。
夜中にトイレに行き、ベッドに戻るときにふとそう思った。
なんだか印象に残ったので、そこらの紙に書きつけて再び眠りにつく。
朝起きると、かろうじて読める殴り書きが残っていたので、どうやら夢ではなかったらしい。
そもそもが「桜が咲いたぞ!花見だ!花見だ!」というタイプではないとしても、このころになると冬の間こわばりがちだった肩の力がゆるみ、そこらにうすく淡い花の色を見かけ、それなりにふわっと気分が浮きだつものだ。
そして「ああ、今年も桜が咲いて散っていくなあ」と、季節の移ろいを目の当たりにさせられる。
が、今年はなぜかそれがあまりない。今年の桜はいつもとなにがちがうのか?天候のせい?開花時期が早すぎた?それとも自分の方の環境のせい?空中の桜濃度が薄い?

満開の桜並木の下を歩くと、ほんのりとした桜の花の香りを鼻孔をかすめる。舌の奥の方にうっすら塩味をかんじてまうのはなぜなんだろうと思いを巡らしてみると、桜餅をくるんだ葉の味を思い出してしまっているようだ。それほど好物でも頻繁に食べるものでもないが、根深く記憶に残っているのがおもしろい。

写真の桜は、最初の緊急事態宣言が出た2020の春、用事があってそのあたりにに寄ったときに皇居のお堀で撮ったものだ。
ふだんであれば、桜を見にきたんだか人を見に来たんだかな状態だが、このころはさすがに静寂が漂っており、よけいに得体のしれない不気味さを感じたことを思い出す。


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