「良いレコードとは、ライブで演奏しているバンドの素直な音」 Interview with NØ MAN (日本語版)
(English ver: https://mizutanisunn.medium.com/interview-with-n%C3%B8-man-fb43f422bb35 )
3LA:バンド結成について。結成時期については2017年という説があるのだけれど、Majority Ruleとpg.99のスプリット作品のレコーディングで、Mahaがゲストボーカルで参加していました。2002年のことです。まずはその時代まで遡りたい。あの"DOCUMENT #12"の時期、Mahaがゲストボーカルとして参加するきっかけはなんだったのでしょうか?当時Mahaは別のバンドをしていたのでしょうか?メンバーの関係性について教えて欲しいのです。
Maha: 私たちは皆、数年来の友人で、学校や地域の広いパンク・コミュニティを通じてつながっていました。Matt、Pat、Kevinの3人は高校時代に一緒にバンド活動をしていたので以前から知っていました。彼らとは何年にもわたってライヴに行ったり、音楽や社会的な政治問題について意見を交換してきました。一緒にツアーについていったり、レコードでボーカル参加させてもらったりと一緒に活動してきました。Mattとは大学で一緒になり、親しくなりました。彼は1999年から私のパートナーで、9歳の娘もいますよ。
3LA:2002年のゲストボーカル参加から、バンド結成の2017年に至るまで15年という月日が経っています。このタイミングでバンドがスタートしたのには理由があるのでしょうか?2002年のスプリット以降、Mahaを含めてメンバーの交流が生き続けていたのでしょうか?
Maha: 住んでいる場所は違いますが、みんな何年も前から親しい友人として付き合ってきました。2017年は私にとって非常に困難な時期でした...私は父を亡くし、国の政治はめちゃくちゃだった(※2017年〜2021年のUSはドナルド・トランプ政権)。Majority Ruleの再結成ライブは、私を生き返らせてくれました。旧友と再会し、新しい人々と出会い、政府が資金を剥奪しているリプロダクティブ・ライツ、LGBTQ+、移民、ユース・アートなどの慈善分野に役立つ音楽を演奏することができたのは素晴らしいことでした。このコミュニティが私にとってどれほど大切なものであるかを再認識し、個人的にお互いを高め合い、自分たちの世界に還元することができた。ツアーから戻ると、新しい音楽を作ることにしました。このバンドは、私たち全員にとって素晴らしいアウトプットになっていったと思う。
「Majority Ruleがバンドだった頃、「Screamo」はまだジャンルとして確立されていなかった」
3LA:NØ MANの音楽の中には、2000年代にそれぞれのメンバーが経験してきたこと、人生観が反映されていると思います。自分たちが思うに現代の2010年代に現れてきた新しいパンクバンド、Screamoバンド達との決定的な違いは何だと考えていますか?新しいバンドにはもちろん素晴らしいバンドがたくさんいますが、NØ MANは新しいバンドだけど、それらとは違うものを持っていると思います。
Maha: 当時から今までのバンドではソングライターが同じなので、彼らが書いてきた以前の音楽との繋がりも聞けると思います。以前と同じように、過去10年以上にわたって聴いてきたものすべてが、今の私たちの音楽に新たな影響を与えています。重要な違いは、Majority Ruleがバンドだった頃、「Screamo」はまだジャンルとして確立されていなかったということ。彼らは、His Hero is Gone、Neurosis、Blonde Redhead、Fugaziなどのバンドを聴いていました。今日、私たちは同じことをしていますが、90年代にやっていたことを蒸し返すのではなく、新しい影響を受けたものから表現をしています。
3LA:僕個人はScreamoと呼ばれる音楽を聴きだしたのは2000年代の半ばくらいからで、Funeral Dinerやpg.99、City Of CaterpillarやもちろんMajority Ruleも聴きました。どのバンドも試行錯誤をしているというか、熟考の末に何かの答えを導きだしているかのような、そんな音楽だと思っていました(実際は違うかもしれないけど)。あの当時、Screamoバンドたちは他のパンクシーンとは違う、"新しいパンクミュージック"の姿として受けてとめていたかもしれない。ご本人たちは、当時の音楽の鳴らし方と、今の鳴らし方では違う感情をもっていますか?それとも当時のままの心境で音楽と向かいあっていますか?
Maha: 先ほども言ったように、私たちは今、自分が触れた新しい影響を受けて創作しています。Pg.99やCity of Caterpillarは、私たちと同じ地域の出身なので、お互いに影響を与え合い、メンバーを共有することもありました。ありがたいことに、私たちは今でもお互いに知り合い、音楽を続けています。MikeとChris Taylor(pg.99)、そしてRyan Parrish(CoC)はTerminal Blissで演奏しています。Kevin(9pg.99/CoC)とJohnny(pg.99)はThe Ar-Kaicsでプレイしています。
3LA:2018年作品『DEVILS CAST LONG SHADOWS』と比較すると、2020年作品『ERASE』は音がとても荒々しく目の前で演奏されているかのような臨場感もあり、とても好きです。そして、表現が向かう先の対象がより具体的に浮かび上がってきているようにも思える。つまり、NØ MANのアイデンティティが確立されたようにも思えるのです。サウンド面の進化について、バンドがどのようにハンドリングしているかを教えてください。
Maha: Majority Ruleの再結成ライブから戻ってきたとき、私たちは一緒に新しい音楽を作り続けたいと思っていました。『DEVILS CAST LONG SHADOWS』は、気持ちが昂ぶっていたということもあり、できる限り早く作曲、録音、リリースしました。まだライブもやっていませんでしたからね。このアルバムは、私が個人的に経験してきたことを反映して、私にとって特別なものになっています。それ以来、私たちの音楽をサポートしてくれたり、ライブをブッキングしてくれたり、ツアーに連れて行ってくれたりと、とても寛大な人々に支えられています。『ERASE』は、そうした経験やバンドとしての成長を共有しているのだと思います。
「良いレコードとは、ライブで演奏しているバンドの素直な音」
3LA:2020年作品『ERASE』はちょっとドゥーミーな、深くて重いサウンドも取り込んで進化したと思う。バンドが思う"良いサウンド"というのはどんなサウンドなのでしょうか?
Maha: 良いレコードとは、ライブで演奏しているバンドの素直な音であるべきだと、皆が感じていると思います。ライヴでお互いにどう感じるか、どうつながるか、ということですね。
3LA:楽曲の歌詞についてどう考えていますか?Mahaの書く歌詞にはマイノリティの視点があると思う。女性としての視点かもしれない。皮肉とか怒りとか、とてもリアルだ。この歌詞を読んでいると、"叫ぶ"っていう表現が絶対に必要だと思う。歌詞を表現していく上で、気をつけていることはありますか?また、歌詞の重要性について時代と共に変化していることはありますか?
Maha: 私の言葉は、私が人生で経験していることを反映しています。私たちの最初のレコードは、父が亡くなった後の喪失感や悲しみが主なテーマでした。女性として、パレスチナ人として、2枚目のアルバムには、私たちの世界の状況がいまだに良い方向に変わっていないことへの怒りやフラストレーションを中心としたテーマがあります。
3LA:"NØ MAN"というバンド名はどういうきっかけでつけましたか?ここにはフェミニズム的な文脈が関わってくるのでしょうか?
Maha: バンド名は、ジェンダーというよりも、存在する権力闘争や私たちの生活をコントロールしようとする人たちのことを表しています。ほとんどの場合、そのような人々は主に男性ですが。
3LA:聴いているお気に入りのレコードを教えてください。古い作品でも、新しいアーティストでもかまいません。この質問を毎回バンドに聴きたいのです。
Maha: 古いものでは、次のようなレコードが好きですね。
His Hero is Gone: Monument to Thieves
Neurosis: Times of Grace
Lydia Lunch: 13:13
Sepultura: Beneath the Remains
Jesus Lizard: Goat
Newer Stuff include records like…
Portrayal of Guilt (all of their records)
Gulch: Impenetrable Cerebral Fortress
Drug Church: Cheer
Backslider: Death Residue
Terminal Bliss: Brute Err/ata
Genocide Pact: Order of Torment
3LA:バンドの今後の予定はありますか?先日、Facebookでスタジオに入っている映像を見たよ。機材がたくさんあって良いスタジオに見えました!次の作品、次のアクションも楽しみにしています。
Maha: あのスタジオは自宅だよ! Mattはレコーディング・エンジニアで、自宅で仕事をしているから。今はコンピレーションやスプリットのために何曲か作っています。次のフルレングスアルバムに向けて、機会があるたびに取り組んでいます。残念なことに、私たちはそれぞれ別の場所に住んでいるので、COVID-19のせいで、ここ2、3年は曲作りに支障が出ています。今月末に『ERASE』リリース以降の初めてのライヴを行って、2022年の計画に進んでいきますよ。
ERASE & DEVILS CAST LONG SHADOWS / NØ MAN
CD (34P booklet / limited edition of 300 /with OBI)
https://longlegslongarms.jp/3la_releases/38/eraseanddevilscastlongshadows_noman.html
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