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ディスクレビュー: すべてか弱い願い / 明日の叙景 (CD EP)

 東京のポストブラックメタル、明日の叙景が発表する2020年EP『すべてか弱い願い』が到着して聴いていた。

 2018年のアルバム『わたしと私だったもの』の発表以降、同世代のPale、nhomme、冬蟲夏草らとリリースした4way split『Two』が2019年、そして今年2020年にはカナダのポストブラックメタルUnreqvitedとのスプリットをリリース、そして2021年を待たず本年12月に新たなEPである本作をリリース… と相変わらず1つ1つの作品に対してのテーマ性を感じさせる動きをしているバンドで本作は待ちに待った単独作品。聴いていくとアルバム『わたしと私だったもの』期よりもボーカルはさらに後ろへと引っ込み、その分ギターがメロディを預かっていることがわかる。そして、このバンドの最大の持ち味というか特徴でもある、メランコリックな和声を駆使したギターの音使いと構築美はアルバムの頃よりも確実に更新されている… と思っているんだけど、最近はむしろアルバム『わたしと私だったもの』のほうが楽曲の方向性も、ボーカル含む演奏の方向性も、サウンドプロダクションも異質だったしあれは壮大な実験だったのでは?とも感じている。

 日本にはポストブラックメタルと言えるバンドはほとんど存在していなくて、そういったシーンも当然存在していない。そういう状況でも既存の保守的な価値観に囚われず(つまりはマスを取りにいかずに)先をみていける若いバンドがいるという事実は嬉しいことです、やっぱり僕って右翼だし。楽曲やセンス、なにより物事に対する「問いの質」という点において明日の叙景は秀でていると思う。ただ完成しているわけでもない。サウンド面でのシグネイチャーを確立できるかは結構大きなテーマなんじゃないかとも思う。

Tracklist:
1. 修羅
2. 私はもう祈らない
3. 影法師の夢
4. 青い果実
5. 生まれたことで

Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)
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