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Orchidの名盤、通称"Gatefold" 歌詞翻訳&解説 #1

名盤過ぎるが故にもはや語られなくなってしまった作品がこの世には多く存在している

 あなたにも思い当たる作品があるはずだ。しかしネットの世界になにもかもがあるわけじゃない。このコラムはそんな作品の1つ、激情、Emo-Violenceの大名盤、Orchidの"Gatefold"にもう一度向き合ってみようというシリーズだ。過去メルマガにもコラム連載として配信したものだが、若干の編集を加えつつnoteに再掲したい。

 Orchidの名を世界中に知らしめたのが2002年に発表された2ndのセルフタイトルアルバム、世間的には通称"Gatefold"、ジャケットの仕様がそうだったのでそう呼ばれており、いつのまにかそちらが正式名称かのように扱われている。今でも3LAでもロングセールを続けている大名盤だ。Orchidというバンド自体は7インチのEPや、Pig Destroyerとのスプリット、1999年の1stアルバムでも既に情報の早いリスナーにはひっかかっていたようだが、ネットで調べてもリアルタイムの評判というのはほとんど出てこない。そもそもこの2ndのリリースされた時点ではインターネットもそれほど普及してなかったし、アンダーグラウンドの情報はまだネットよりも地下のファンジンや口コミがメインだった。

 つまり今ネット上に上がっているテキストや評価なども、ほとんどがリアルタイムで書かれたものでなく後追いなので、レジェンドだとか大名盤だとか言われている割にはOrchid自体に切り込んでいる記事などもほとんどなくて、彼らが何を主張していたのか調べようとしてもぜんぜん検索にはヒットしない。だがOrchidについては、もっと議論の余地がある。そこで、今回のコラムでは"Gatefold"の歌詞の翻訳、解説などもしつつOrchid再評価に向けてアプローチしてみたい。第1回はOrchid『Gatefold』のアルバム1曲目「Amherst Pandamonium (Part 1)」から手をつけてみたい。

Amherst Pandamonium (Part 1)

You own.
You own everything.
That's why there is nothing new.
That is the face of the change.
All in all,
This is the face of the change.
Why not face it?
I've seen the old guard running around.
All of these kids are cops in my town.
I've seen the old guard run us down.
You...
This is the face of change.
Face of the one.
Face of the framed.

お前は、お前は「何もかも」を手にしている
何ひとつ新しいものが無いのがその理由
今こそ革新の時
全てはそういうこと
今こそ革新の時
なぜ向かい合わないのか?
保守たちが走り回るのを見ていたよ
あのガキ達はみんなこの街の警察だ
保守たちが俺たちを問い詰める
お前は...
今こそ革新の時
型に嵌められた物事に直面する時

 マサチューセッツ州の町アマースト(Amherst)でOrchidは誕生した。Pandemoniumというのは、阿鼻叫喚、大混乱の意味なのだが、この街で当時何が起こっていたのか、よりも彼らが身近な問題を通して何を発信しようとしていたのか、のほうが重要だ。

 歌詞としては保守層を揶揄する内容だが、アマーストという街はクリスチャンが多く保守的なカラーが強いのだという。Orchidの中には神学を大学で専攻しているメンバーもいるくらいだが、バンドの思想としては革新側だ。楽曲としては「Amherst Pandamonium (Part 2)」と対になっており、単純に右派を否定し左派を肯定するための歌ではない。時代は変わりつつあるのに、いつまで古い時代の考えのままでつもりなんだ?という態度は何も彼らのローカルな話題ではなく、あらゆる局面で、現在においても有効な問いだ。特にハードコアは未だに90年代、つまりもう20年前以上の名盤が売れ続ける。(これは若干自分へのブーメランでもある

 彼らにとって革新的な音楽を作り、演奏するということはどんな意味があったのだろうか。歌詞以上に、おそらくその音が雄弁に物語っている。90年代後期のハードコアシーンから枝分かれしたEMO/POST HARDCOREの更に亜種、「Emo-Violence」の音楽性をより高い純度とプロダクションで確立したのが前作『Chaos Is Me』(1999年)だ。この作品はバンドの想像以上にシーンに受け入れられ、レコードが売れることになり皆が『Chaos Is Me』のTシャツを着はじめたという話があり、バンド自身がそれにうんざりしてしまったことも想像に難しくない。本作の1曲目に持ってきているこの楽曲のテーマは、やはり「構造からの逸脱」と言えそうだ。しかしそれがアルバムの本当の主題かどうかまではわからない。しかし、逸脱から始めなくてはならないのだ。だから8ビートもブラストビートもここには存在しない。そしてこの大事なことは1分以内で表現する必要がある!

 OrchidをリリースしたEbullition Recordsは、Orchid以外のリリース作品でも90年代の本質的部分を受け継ぎながら、ハードコアを革新しようとしていた。Orchidの音楽性はレーベルの方向とも一致する。タフガイなハードコアやストレートエッジでもなく、もっとオタクでインテレクチュアルな、着ている服や見た目も本当に普通の学生のような若い世代が発信するエモーショナルな、魂の燃焼。それは新しいハードコアのムーブメントだった。そのサウンドは新しいが故に秩序がなく混沌としていたが、何でもアリの自由さがあったSCREAMOのスタイルは、OrchidをはじめとするEbullitionのリリース作品群とアンダーグラウンドなネットワークに乗って世界中に広がっていったのだ。(続く)

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Orchid関連作品一覧
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