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3LA distro best of 2020 No.10〜No.1

いやー長かった!50位くらいは余裕かと思いきや結構長い。ようやく2020年のBEST 10を決めます。純粋に売上枚数のランキングなんだけど上位10位となるとさすがに良い作品のみになりますね。そしてそのランキングにきちんと意味がある... よかった。この10枚が2020年の答えです。


No.10 春ねむり (Haru Nemuri) - Lovetheism (2020)
入荷したのは偶然というか意図的なものではなかったんですが聴いてみたらよかったし、作品のテーマ性、サウンド、ポリティカルネス、全てが意識の上では現行の世界標準に定められていることに気づいた。結果売れた。何度も売り切れと再入荷を繰り返した作品。オタクも買ってくれたと思うんですがそこに文脈見出して買ってくれた人がいるなら嬉しいですね。同じ文脈上にいる国内他アーティストとの違い=海外シーンにフェミニズム的に受容されているのは、それが国内で閉じた文脈に終始した歌謡曲ではないから。リズムとビート。生活と感情のスパイス。エンパワーメントの話です。



No.9 GUEVNNA - Burning Skyline (2020)
ある意味GUEVNNAは3LAでやってることの対極にいるようなバンドかもしれないけれど、ギターリフのキラーさ、メロディ、演奏、グルーヴ、全てが最高にロック。他と違うことをやる、というのをバカみたいに主張するようなことはしないんだけど飽き性であるが故の面白さを追求している人間性も良い。アートには政治性と同じくらい人間性持ち込むなっていうスタンスの人もいると思いますが、驚異的な愛されキャラの音楽ってやっぱり愛される要素が詰まっているんですよ。そんな人たちが破綻した音楽をロックさせる様が泣けますね僕は。



No.8 くだらない1日 - kudaranai 1nichi (2020)
高値君という謎のオタクの人とつながったことは今年のベストオタクイベントだったかもしれない。くだらない1日の持ってるバイブスはまさにナードEMO。で、音源のクオリティがめちゃくちゃ高いのかと問えばそういうわけではないことは断言しておく。ただ伝えるべき人に伝えるためにはそのクオリティを追求するのは必要なかったのかもしれない。コロナ状況の中でもバイタリティのある活動を展開しているのもポイント高し。この世はサバイバルなんよ。



No.7 Daitro - Y (2020)
French Screamoの中でも2000年代を代表する存在、Daitroの2009年アルバム『Y』が2020年に再発、ということでたくさん入荷した甲斐があったというものです。2000年代激情が今リバイバルできる理由の1つは彼らがその当時に抱いていた葛藤、表現が現代という時代の空気感になぜかマッチしているから。Daitroの表現、Funeral Dinerの表現、そしてkillieの表現の根底に共鳴していたものが2010年代のポリコレ時代を経て価値を取り戻しているようにすら感じる、と書いた自分は全然間違っていなかったことは証明されたと思う。結論を急がず、遠回りのスローポリティクスで進め。



No.6 Viva Belgrado - Bellavista (2020)
2020年のBEST OF SCREAMOはこれで決まりですよ、と言いたいところでしたが6位でした。個人的にはTOPです。更新と逸脱。2ndアルバムで突き詰めたからこそこの音楽性を確立できたんだと思う。激情ハードコアのビートの革新性に加えて、もはや戻ってこない90年代的価値観を保守するのではなく今を生きるリスナーにとことん向かい合う精神性。言い切るけど、US/UKの流れでは絶対生まれてこないバンドだし、思い返せばそのことこそが2020年のテーマだった。もはや世界の中心などという軸は存在しない。



No.5 lang - There is no reply, but sweet wind blew (2020)
Dog Knights ProductionsよりLPがリリースされたことによりランクイン。最新作『cahier』と共に海外シーンのリスナーにも再発見されたことは大きかった。そして録音したスタジオUltramarinos Costa Bravaは、lang〜Viva Belgrado〜Daitroという軸でも繋がる。これが2020年という偶然。しかしファン層を更に獲得するチャンスだったEUツアーがコロナキャンセルされたのは痛かった。神の試練だと思うくらいの前向きさが、今の時代に必要。つらい。海外に"再発見"される感覚があって面白かった。



No.4 SPOILMAN - BODY (2020)
これは売れないでしょとすごく失礼な紹介をしたんですが逆にマニアックスな方々の心に火をつけてしまったのかもしれない。めちゃくちゃ予約が来てびっくりした。ほぼ一発録で制作されたという本作もまたくだらない1日と同様に音質とかクオリティとかそういうところじゃない本質についての提起でもある。The Jesus Lizardからの影響を公言し、他人に伝えたいメッセージなんてないと言い切ってしまうくらいの温度感。共感はしないけど共鳴がある。他人の評価なんて意味ない、価値は自分の中にあるもの。



No.3 Svalbard - When I Die, Will I Get Better? (2020)
リリース前から既に"売れる感"をビンビンに醸し出していたSvalbardだったけどレーベルオーナーのスキャンダルによりリリース計画の変更を余儀なくされる。そんなところまでもが2020年っぽいと言えなくもない。メタル、ネオクラストなサウンドからよりシューゲイズ、ポップ性を増していく音は結構envyに近いのかもしれない。死んだら楽になると思う?作品におけるテーマ性は十分に2020年だった。Tokyo JupiterからのCD盤、Church LoadからのLP盤とそれぞれが売上を伸ばし総合3位となりました。



No.2 GREENMACHiNE - D.A.M.N (2020)
名作『D.A.M.N』が24年の歳月を経て、本年2020年にウクライナのRobustfellowの再発リリースシリーズ「Robust Relics Series」としてLPでのリイシュー!!... というわけで共同リリースとして日本側から参加させてもらいました。Red盤は即ソールド、Black盤、CDも残りわずかです。2020年には最新アルバムのセルフタイトル作もリリース。このリリースペース、スピード感、エネルギーが大事なんです。くだらない1日もSPOILMANもそう、作品を出していこうという気持ちこそがバイタリティ、大事です。全てのタイミングが都合よく揃うことなんて有りえんのです。



No.1 lang - cahier (2020)
リリース元だから当然といえば当然なんですが、手前味噌ではありますがしっかり2020年のうちに売り切って次へ繋げることが出来たと思います。すべてが簡単になっていくこの時代であえてのめんどくさいフォーマット、仕様、紙質、そして膨大な手作業。それで何を誰に伝えるのか?大切な人にむけての手紙みたいなものですが、返事はすぐに返して欲しくない。表現が体に落ちるまでの時間と、再びアウトプットとして出て行くまでの時間は必要だし、その時間を求めてる。レーベル不要論っていつの時代もありますが、いつの時代でもレーベルにできることってあると思うのでそれを探していきたい2021年。だって自分の前には誰も走っていないのですから、他の人の正解が自分にとっての正解とは限らない。自分でなんとかする、そのために自分の時間を掛けていく。そういうタイプのEMOであり、SCREAMOであり、激情ハードコアだと思うのです。つまりlangです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

2021年もよろしくお願いします。


Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)

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