共感の壁を超えるために言語化する #noteフェス

10月15日(金)〜17日(日)の3日間にわたって開催されている『note CREATOR FESTIVAL 2021』(noteフェス)。

2日目である16日最初のトークセッションは『夢を叶えるための文章表現』。

登壇者はアメリカ・ウェルズリー大学に通う山邊鈴さん。

鈴さんといえば、高校3年生の時に公開されたnote『この割れ切った世界の片隅で』が話題になりました。

『この割れ切った世界の片隅で』を書いた当時、鈴さん自身は「東京に住む友達に向けて書いた」ものであり、ここまで注目されるとは思っていなかったそうです。特定の人に向けて書かれた文章ほど、多くの人が当事者意識を持って読むことができて、伝わりやすいのかもしれないですね。

このトークセッションは、鈴さんによる講義形式で進められました。

まず、最初に鈴さんはトークセッションのタイトル『夢を叶えるための文章表現』を『夢を叶えるための言語化術』に変更することから始めました。なぜかというと、鈴さんは「言語化術だけを武器にここまで来た」と思っているからなのだそう。

では、『言語化』とはどうやるのか、鈴さんは次の3つの手順で行っています。

①頭の中でこんがらかっているものを
②言葉にして整理して
③次のステップに役立てること

鈴さんは中学2年生のとき、とにかく焦りを感じていたそうで、それが①の「頭がこんがらかっている状態」だったと言います。無数の糸が絡まり合っているようなイメージです。なんとなくモヤモヤとして、思考がまとまっていない状態ですね。

その状態から脱するために実践したのが②の「言葉にして整理する」です。具体的には、「死ぬまでにやりたい100のこと」や「将来なりたい人物像」をノートにリスト化していきました。また、14歳までの自分年表を作成し、いつ、どんなことがきっかけで、どんなことを考えたのかということもノートに書き出していきました。鈴さんはこの「言葉にして整理させた状態」が一番大事だと考えているそうで、絡まり合っていた糸を一本ずつほどいていくようなイメージだと説明されていました。

そして、最後に③の「次のステップに役立てた状態」というのは、一本ずつほどいた糸を使ってセーターを編んだり、マフラーを編んだり、どんな形にするかはその人次第ですが、実用的なものとして使えるようにしていくイメージです。14歳当時の鈴さんの場合は、「自分が本来なら到達できるその先に行くには、様々なものに応募して、自分の価値を認めてもらわなければ」と思い、行動を始めました。

また、『この割れ切った世界の片隅で』も、東京に住む友達に向けて、自分が今まで経験してきたことを伝えるために、一番適していると思った「文章表現」という形を選んだとのこと。つまり、文章を書くこと前提で始めた訳ではなくて、言語化していくうちに文章を書くことを選んだということです。なので、文章表現にこだわる必要はなくて、自分なりのやり方でいいんです。そして、次のステップとして行動を起こしたら、そこで感じたことを言語化して、さらに次の行動につなげていく、ということを繰り返していくことが大事なのです。

この『言語化』のプロセスの話を聞いて、中学2年生のときから内省ノートを作成しているのはすごいと思いました。私もモヤモヤしたときは、ノートや紙に考えていることを書き出していくことはしていましたが、書いたことだけで満足してしまい、そこから自分の思考を深掘りすることまではできていませんでした。むしろ、就職活動などで自己分析が必要になった時には、苦痛を感じてしまいます。

しかし、鈴さんは「自分というものの輪郭をはっきりさせたい」という思いが強く、自分に対する好奇心を原動力にして、内省ノートを「趣味」と言えるほど、言語化をし続けているんですよね。

そして、最後に鈴さんから述べられたメッセージがこちら。

言葉にすることで、自分の道が見えてくる。
「共感」の壁を越えられる。

例え「自分にはそんなに高い志はない」と思っていたとしても、少なからず「こうしたい」と思っていることはあるはずで、それを実現するための道筋を開いていくためにも言語化することは効果的だろうな、と思いました。また、丁寧に思考を紐解いていくことで、同じ境遇にいない人にも「こういう現状がある」ということを伝えることができて、それを理解してもらうことで初めて共感を得られる、ということだと思います。「どうして分かってもらえないんだろう?」と思うならば、分かってもらうための説明が足りていないことなのかもしれません。

さらに、鈴さんは最後にこうまとめられていました。

・書くことを続けること
・書くことは選択をすること
・言葉選びをしながら「本当に自分はわかっているのか?」と謙虚に問い続けていくこと
・言葉を誠実に紡いでいくうちに、自分にも他人にも誠実に

「書くことの本質は選択をすること」「紙の上では自由に選択できる」と鈴さんは言っていたのですが、それに対して私はとても共感することができました。自分が誰に対して何を伝えたいのか、それをどんな言葉で伝えるのか。常に選びながら文章は紡がれていきます。そして、『謙虚』『誠実』というのも重要なキーワードだと思います。「このくらい分かってくれるだろう」とか「察してほしい」と思って書いた文章は伝えようとしていないと同じです。自分がなぜ今この文章を書いているのかを理解してもらうためには、しつこいくらい丁寧に言葉を尽くして説明していく必要があると思います。そのためには、やはり「こう書いているけど、自分は本当に理解しているのか?」と謙虚な気持ちでその事柄に向き合って、足りないところは勉強して、そして、誠実な気持ちで伝えるべきなんだと思います。

今まで、『言語化』というプロセスに苦手意識を感じていましたが、鈴さんのお話を聞いて、その重要さに改めて気付くことができました。私もまずは自分の思考を整理することから始めていきたいと思います。


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