夜、郵便のように(散文+短歌7首)
死んだら〈粒子葬〉にしてほしい、と言われた。未来の存在に化石として発掘されたくない、らしい。そこまでしなくても、と言いかけて、それくらいしていいな、と思った。
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夜、郵便のように /森慎太郎
金髪を宙にほどけば繚乱のドッジボールに散る婚約者
化石へと近づいてゆく肋骨の春のすがたに思いを馳せる
通りすがりの小動物に引火してそのうち芽生える巨大な仲間意識
夕景に和英辞典が埋め込まれ宣誓は刷新されてやまない
運命を委ねなさいとくちづけて不意にあざむく茶葉の甘みよ
新月の夜、現在地について郵便のように(オペラのように)伝えた
レーザーの照射に際し同意書が必要になる 偽りを書く
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2020年1月5日