茉莉花（散文+短歌7首）

フルーツ哲学演習Ⅱ。風や花はフルーツでないが、花は風よりもフルーツに近い。林檎と青林檎とではどちらがよりフルーツであるか。学生たちはこういった抽象的な問いを前に、講義時間のあいだ中、あたまをフル回転して議論をこんがらがらせる。評価は出席と期末レポートが半分ずつで、レポートはフルーツに関係していれば何を書いてもいいらしい。履修する前、フルーツの四コマ漫画でも描いて出そうかな、なんて言っていた友だちは、柿と栗のフルーツ性／非フルーツ性について述べたレポートで最高評価をもらったそうだ。

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茉莉花　　／森慎太郎

かんたんな言葉を話す　アンセムが響けばそこに茉莉花がある

にせものの誘拐犯はほんものの身代金があってこそでしょ？

異国語がわかるうれしさ二台目のミシンの説明書を読み流す

私のために争わないで、厳冬の予感を映しだす競馬場

ぞくぞくとレースを裁てば週末の首都には雪が降ることになる

（なんらかの小声）（それなりの応答）（凍えるために原稿も書く）

起きぬけの目と鼻のさきで売り切れてものが買えないなんて、その、朝

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2019年12月14日

#tanka #短歌 #創作