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いい気な大人は叱られる

中学生の頃、江國香織の小説『きらきらひかる』の自由奔放なヒロイン・笑子さんに憧れていた。だが大人になったいま、笑子さんにはなれた気がする。そのあと、やはり江國香織の小説『落下する夕方』に衝撃を受けた。華子が中盤で自殺するのだ。その華子の口癖が「いい気な大人は叱られる」だ。このフレーズは、それこそ呪いのように、わたしに貼りついて刻まれた。
いい気な大人は叱られる――……。わたしにとっては、自殺未遂から生還して生きようと覚悟を決めたいまでも、解決できない禍根になっている。わたしはわりあい能天気な性質(たち)で精神的には未だに思春期めいたアンヴィバレントさを手放せずにいるようなところがあって、ふだんはだいじょうぶなのだけど、たぶんわたしの中には遂(とう)絶望が巣くっているのだ。そうして、時折、噴出する。そんなときに詠んだ短歌連作。


煉獄

たすけてよわたしはよわく歪みきりもはや価値なく消えてゆきたし

ひとの世に交わるひとりひとりきり愛してもらう資格もなくて

反省や人語届かぬ暗がりでなおもゆれてるひかりのわたし

高熱にからだ揺らぎつおちてゆくゆるされたいなど別世のゆめで

自由だと思ったことは幻想か われに自由は望めないのか

存在がひりつくような心地してことばに縋るだいじょうぶだと

この禍根は、解決できないままわたしを蝕みつづける。出口は見えない……!!

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