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KOBE豚饅サミット® 夜明け前②

(前回からのつづき)

なぜ三越伊勢丹への出店オファーがKOBE豚饅サミット®の着想につながるのか?それはひとつの現実がひとつの局面だけを切り取って出来るものでは決してないということの表れだととらえていただければ幸いです。

三越伊勢丹での出店交渉のあと、慌てることはないと言われつつもやはり内心ではどのようにして大阪進出を図ろうかと常に考えていた。
そこから少々月日は流れ、JR大阪三越伊勢丹のフロア概要などが次第に明らかになって来た。しかしその時点で当社に出店オファーは届かず、やきもきした気分になり、レストランフロアのリーシングにアサヒビールが協力しているという情報が入り、以前とは別チャネルの方から接触を試みた。

すると実際の地下食料品フロアのリーシング担当との接見が叶った。前回に交渉の窓口になっていた方のお話をすると、その方の本籍は百貨店ではなくJR側の出向の方ということだった。なので直接のリーシング権限がなく具体的な話が出来なかったとのこと。その際の言葉を真に受けて安穏としていたことを少し悔いながら出店に向けたプレゼンをした。

「どのような形態での出店をお考えですか?」との問いかけに、

当然、当社の一番得意な形の豚まんを実演で販売するということを率直に伝えた。少し困った様子の雰囲気を漂わせた担当。

「御社の一番の強みが出せる形ですね。ただし弊社も大阪のこの場所で商売をするにはどうしても仁義を切らないといけない取引先が数軒ありまして、御社もそのことはよくお分かりだと思いますが・・・。」

よーく分かっている。「ある時ない時」のあの会社だ。

ネームバリューをはじめとして会社の総合力では逆立ちしても勝ち目のない相手だが、局地戦では負けることはないと思っていた。実際にスポット催事であちらの陣地に乗り込んだ際もこちらの売上が悪かったということはない。むしろ当社の催事の最高日商はある時ない時のお店の旗艦店がある百貨店で記録している。

その事実も伝え、神戸の我々が大阪のそのお店と隣同士でガチンコでやり合う様を見て選択する権利をお客様にお預けすることは消費者ファーストでとてもいいことではなかろうか。そして大阪では三越伊勢丹が唯一の三宮一貫楼の出店となるプレミアを訴えてみた。渾身のプレゼンがその担当者を揺さぶったように見えた。

手応えとしてこの時は「これ取った!(下手したら単独出店や)」くらいの気持ちで、相手方の事務所を後にした。

しかし半月経っても一か月経っても先方からの返答はなかった。
答えはすでに分かってながらも確固とした回答を求めて担当者に連絡を入れる。企画としては現場レベルではたいへん面白いと思ったが、現実的な編成上では通らないということだった。花より実を取る賢明な選択である。。。

今、JR大阪三越伊勢丹がすでに消えていることを考えると心底出れなくてよかった~というのが率直な感想だが、この時の悔しさは精魂込めて向き合った高校野球の最後の試合に負けたくらい悔しかったように記憶している。

その頃にプライベートでは同年代の経営者が集まる異業種交流会に月一で参加していた。参加者の割合が神戸在住、大阪在住が半々だったため会場が梅田と西宮で隔月開催。開催は毎月最終金曜の19時開始ということが決まり事だった。

その交流会のとある梅田開催の日、その日も終電近くまで盛り上がり。参加メンバーで大声で騒ぎながら歩いて阪急梅田駅まで。そんなに大声で騒いでも月末金曜の梅田では何も目立つことなく大笑いのまま帰りの電車に神戸組で乗り込んだ。車内でもテンションが高いまま、停車駅で一人、また一人メンバーが帰途に着く。神戸組でも一番西に住んでいる私は一通りメンバーを見送ったあと、降車駅である阪急三宮駅にひとり降り立った。すると・・・。

(つづく)

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