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中仙道ぶらり旅 参

中津川宿 



中津川は地歌舞伎が今も盛んな地である。
しかし私は歌舞伎を全く知らない。どころか60年に及ぶ人生の中で劇場公演は言うまでもなくテレビの歌舞伎公演すら見たことがない。梨園という言葉が、歌舞伎を指す言葉であるという日本の常識でさえ、恥ずかしながらいい歳になるまで知らなかった。
中津川には3つもの芝居小屋(常(磐痤)(かしも明治座)(蛭子痤)があり今も定期公演が行われている。 らしい(笑)

大鹿村騒動記


しかし私には、「大鹿村騒動記」という映画で地歌舞伎に少しだけ触れた記憶がある。
この映画を監督した阪本順次は、赤井英和が映画初出演で主演を張った「どついたるねん」や福井晴敏原作で映画化された寺尾聰中井貴一が出演の「亡国のイージス」の監督でもある。これらタイプの全く違う映画作品が、一人の人間の手によって作り出されたこと事態驚きだが、それぞれによさが違う名画には違いない。

大鹿村騒動記は、名優原田芳雄の遺作でもあり、阪本監督が是非一度原田芳雄に主役を張らせたかったという思い入れの末に世に送り出された作品でもある。
原田芳雄は、ATG製作の「チゴイネルワイゼン」や「竜馬暗殺」
テレビドラマでは、浅丘ルリ子と共演した「冬物語」などが記憶に新しい。
個人的にいえば、竜馬が、もっとも似合う日本の俳優は福山雅治でも、武田鉄矢でもなく、原田芳雄のような気がするし、男臭さという点では、松田優作や高倉健とはまたひと味違った魅力を持つ俳優さんでもあった。
共演人も、岸部一徳、大楠美千代、石橋蓮司、でんでん、と個性派のバイプレーヤーに混じって、デビュー間もない松たか子や、永山瑛太がフレッシュな演技を披露している。

地歌舞伎というものがいかに地域に根付き、演じるものそしてそれを見て楽しむものが一体となって作り上げる伝統行事に間違いないという雰囲気がひしひしと伝わる映画であった。
大衆演劇でよく見かけるおひねりももとをただせばこの地歌舞伎が発祥だったということもうかがい知ることができた。

最後に、ネタバレになるので、あらすじの紹介は避けたいが、日常生活の中でトラブルに巻き込まれ、心身ともに疲れはてた時など、少しだけかもしれないが心をほっこりさせてくれる映画の中の一本であると言いたい。

ということで今回はもう一つ、中津川と聞いて真っ先に頭に浮かんだ中津川フォークジャンボリーの話題についてお話ししたい。

(何処が中山道ぶらり旅だ🔥というお気持ちの方は、ご容赦願下さい)

中津川フォークジャンボリー

中津川フォークジャンボリー(全日本フォークジャンボリー)は1969年から3年に渡り、中津川市の西の外れ椛の湖畔(はなのこはん)で開催された日本初の野外フェスである。
アメリカのウッドストックよりいち早く開催されたこのフェス、高石ともや(受験生ブルース♪)が中心になり、第一回には五つの赤い風船(遠い世界に♪)、上條恒彦(出発の歌)、岡林信康らが参加
第二回には赤い鳥(竹田の子守唄、翼をください♪)加川良、杉田二郎、珍しいところでは、後にパタパタママやはたらく車を歌ったのこいの子、なぎら健壱、小室等と六文銭等の名が見られる。
そして最終年の1971年に登場したグループ、ソロシンガーはガロ(学生街の喫茶店♪)、五輪真弓(恋人よはまだ世に出ていない頃だろう♪)、はしだのりひことクライマックス(花嫁♪、風♪ははしだのりひことシューベルツ)変わったところで、ジャズトランペッターの第一人者日野皓正、ロカビリー歌手のミッキー・カーチス、吉田拓郎もその名を連ねる。

1970年当時私はまだ10歳そこそこ、中津川フォークジャンボリーの名はその時リアルタイムで聞いたはずだが、当時のドキュメンタリー映像をテレビや映画で見た記憶まではない。
いささか前置きが長くなったが、私がなぜ中津川フォークジャンボリーを話題に取り上げたのかと言えば、単にここが本当に素晴らしいロケーションだからである。

椛の湖 そば畑

会場となった椛の湖畔は、見渡す限り一面のそば畑で、秋には一斉にそばの白い花が咲き乱れ、上記の写真のような絶景が広がる。
そして今も地元のアマチュアミュージシャンが終結し、この時期のそば祭りと連動して一日限りのコンサートが繰り広げられている。
偶然にも始めて訪れた時、この野外コンサートに遭遇し、自閉症の娘と二人秋晴れの最高の青空のもと楽しい時間を過ごしたのだが、翌年、そしてそのまた翌年と再び訪れた折、出不精に磨きをかけた最愛の娘が現地に到着してもテコでも車から降りないという強行手段を敢行したため、遠くの駐車場からチラ見しただけに止まったという悲しい出来事に遭遇した。

コロナの影響でここ数年は開催が見送られているようだが、再びチャンスに恵まれれば是非また訪れたいと密かに目論む場所でもある。

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