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 発表会本番5分前なのに、藍のメークがイマイチだ。焦って楽屋入口の鏡の前に転がっていた筆でアイラインを足した。すると急に悲しくなって涙が出た。 

 

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 鏡の中でチュチュ姿の女が藍を指さし笑っている。後ろを振り返ると誰もいない。幽霊だ。

「それは涙鉛筆だ。さあ舞台で泣け、失敗しろ」

 藍は本番を悔し泣きで踊った。ライモンダ3幕のヴァリなのが不幸中の幸いだ。横恋慕して決闘で死んだアブデラフマンを悼み涙を流しても違和感はない。

 なんとか踊った後、今後は怒りで涙が乾いた。楽屋の鏡にまっすぐに向かい、腕組みをしている幽霊の顔に鏡越しで涙鉛筆でめちゃくちゃにしてやる。最後に軸を鏡に刺すと幽霊は泣き通しで動けなくなった。

「ヒトの失敗を期待するお前はバレリーナの風上にもおけないクズ。さあ、永遠に泣け」



 動けなくなった鏡の中のバレリーナはずっと泣き叫ぶ。藍はそれを見ながら悠々と水を飲んだ。今後は楽屋にも魔物がいるから注意しよう。


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たらはかに様の企画に参加中です。

藍が踊ったのはコレです。
下の動画はギエム。



故マイヤ・プリセツカヤのライモンダです。1973年なので、約50年前のもの。


このヴァリエーションの踊り方は3種類あります。
① 横恋慕してきた相手の死を悼む (←藍が踊ったのはコレ)
② 好きな人と結婚できる喜びを表現する
③ 政治的な兼ね合いで踊りたくないが踊らなければいけない

③は非常に複雑で十字軍時代の話で戦争がからみます。教えを受けた先生からは、一応こういう考え方もあるので覚えておくようにと言われました。(なのでNOTEに書き留めておきます)


ライモンダのウィキペディア


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