見出し画像

スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん~ #40

こちらの続きです


『シルバーハンド』①


 バナード・メアを出ると、すっかり日も落ち、双子の月が上空からこちらを見下ろしていました。約束の場所へ行くと、スコールさんが待っていてくれました。
「お待たせしました。ここがアンダーフォージですか。どんな場所なのですか?」
「ジョルバスクルはホワイトランで最古の建造物だ。スカイフォージは遥か昔からここにあった。そしてアンダーフォージでは、エルフや人間が生まれるよりも昔から存在する古代の魔法が魔法が生み出される。ここに連れてきたのはお前を鍛えるためだ、新入り。さぁ入るぞ」

なにをされるんだ…

 隠されていた扉が開き、スコールさんの後に続いて中に入ります。中は洞窟となっていて、石を切りだして作ったような祭壇らしきもののそばで、一体のウェアウルフが佇んでいました。スコールさんはまったく構わずにその傍に立ちました。
「お前のような心を持ったものを仲間に迎え入れるのは久しぶりだ…あぁ、ちなみにこいつはアエラだ」
「アエラさん!?」
 アエラさんとして紹介されても、その原型はありません。
 眼を白黒させている私に対し、スコールさんは続けます。
「これは秘密裏に行う。コドラクは我々に与えられしこの偉大なる力を捨てようと躍起のようだからな」

コドラクさんには内緒で、なにを?

「コドラクは我々が呪われていると考えている。しかし、我々は神の祝福を受ける身だ。このような卓越した能力を与えられた我々が呪われているなどということがあるだろうか?」

うーん

 正直なところ、自ら進んでウェアウルフになりたいとは思いませんが、人狼化したファルカスさんの強さを目の当たりにして、その力を誇りに思う気持ちも、またその力を手放し、人間として死にたいというコドラクさんの気持ちもわかります。
 答えに窮しましたが、スコールさんはそれを待つでもなく続けました。

「だから、我々が自らその問題に対処する。同胞団の高みを目指すには、我々とオオカミの血を分け合えなければならない。獣の世界に仲間入りする心の準備はできたか?」

えっ

「わ、私にもウェアウルフになれと言うんですか!?」
「自分で決めろ。強制したりはしない。しかし、サークルの一員となるのであれば、同じ血が流れていなければならない」
 
 まさかの展開です。いや、薄々気づいてはいましたが…なにせ下っ端ですから、こんなにも早く選択を迫られるとは思っていなかったのです。
 ど、どうしましょう。スコールさんとアエラさんがじっとこちらを見つめてきます。もはや圧迫面接です。
 
 ウェアウルフに関しては、積極的ではありませんが興味はあります。それにファルカスさんもアエラさんも、オオカミ化したからといってこちらを襲ってくることはありません。おそらく全くコントロールできないということはないのでしょう。
 あぁ、ファルカスさんからもっとオオカミ化した時のことを聞いておくのでした。後悔先に立たずです。

「さぁ、どうする?」
 ソリチュードで待つ娘の顔が脳裏に浮かびます。ドルテは私がウェアウルフになったと知ったらひどく心配するでしょう。でも、きっと私に何かあっても、信頼できる仲間たちが手助けしてくれるはずです。
「…覚悟、決まりました。私をウェアウルフにしてください」
 スコールさんはこくりとうなずきました。
「結構だ」

 スコールさんは剣を抜くと、アエラさんの黒い毛で覆われた腕を持ち、刃を当てました。アエラさんは抵抗しません。そのまま剣を引くと、激しく血が噴射し、器状の祭壇に黒い血がみるみる溜まっていきました。

ひえ

 これを飲まなくてはならないようです…あぁ、絶対にまずい…飲みたくない…。しかし興味本位でやると言ってしまった以上、逃げ出すには遅すぎます。
 器に手を入れ、血を掬い…

ぺろぺろ

 むせかえるような獣の臭いに視界が飛び、暗転しました。意識を取り戻した瞬間、そこはアンダーフォージの中ではありませんでした。
「ウェアウルフだ!!」
 ホワイトラン衛兵が集団で襲ってきたので、驚いて逃げ出しました。まるで飛ぶようにして走り抜けることが出来、やっと気が付きました。自分が狼の体になっていることに!

毛深い!

 衛兵が矢を打ち込んできます。
(やめてください!私は!私は!あれ!?)
 声が出ません。代わりに激しい息とガフガフといううなり声だけが響きます。黒い剛毛で覆われた手には長い爪が生えていて、振り回すと衛兵の盾を抉るようにして削りました。
 戸惑うがまま、ついには囲まれた衛兵集団に殴られ、再び意識が遠のいて行きました。


――

「ここに来るべきじゃなかったな…」
 声が聞こえます。

だれ?

 視界が開き、松明を持ったアエラさんが立っているのが見えました。ここは少なくともホワイトラン要塞ではありません。そして変身は溶け、人の姿となった私の体には衛兵たちから与えられた傷の跡もありませんでした。
「大変な変身だったわね。でも死ななかったんだからよかったじゃない」
 ど、どういう意味でしょうか?怖くて聞くことがません。でも、どうやらさきほどの出来事が悪夢ではなかったことだけは確かのようです。
「あなたのために、お祝いも用意してあるのよ」
「お祝い?」
「近くのギャロウズ・ロックに、ウェアウルフを狩りに来た連中が野営してるわ。シルバーハンド。奴らを全員皆殺しにするのよ。一人残らずね」

ひっ

 山賊の殲滅は生業としてやっていることではあるのですが、アエラさんに言われるとなぜか恐ろしいことのように思えるのです。私が怖気づいていると思ったのか、アエラさんの口調が少し優しくなりました。
「あなたは群れの仲間に生まれ変わったの。うらやましいわ。いつだって初めての時が一番…激しいんだから」

なにが?

「あなたにはオオカミの血が流れてる。でもその血を発揮するには自分自身の力を高めなきゃ。ウェアウルフになると早く、強くなれるの。でも長い時間は無理よ。ただし敵の血で時間を伸ばせるわ。血を吸うのが嫌じゃなければね」
 吸血鬼みたいな要素もあるということでしょうか?
「食べれば食べるほど能力が大きく育つわ。ハーシーンの贈り物をさらに見出せるかもしれない」
 人の血肉を食らう…狼になってしまえば、ためらいもなくなるのでしょうか。うすら寒い心地になり、思わず尋ねました。
「あの、この状態を治癒するような薬はあるのですか?」
「治癒?あのじいさんのような言い方ね」
 眉をひそめたアエラさんから、若干の嫌悪感を感じ取れます。
「それは…言えないわ」

えー

「コドラクのことは好きだし尊敬しているわ。でもこの件に関しては間違っている。これは間違いなんかじゃない。私たちは国一番の狩人なの」

 アエラさんはまさにコドラクさんに言わせると、『この血を気に入っている者』ということなのでしょう。

 さて、オオカミとなって初めての狩り。うまくいくのでしょうか。不安です。

次へ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?