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🎬ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた🇺🇸WAITRESS🎦2006サンダンス映画祭高評価

映画解説
サンダンス映画祭など各国の映画祭で大絶賛され、アメリカで公開されるやいなや予想を上回る大ヒットを記録したハートフル・ストーリー。田舎のダイナーで働くウェイトレスが、突然の妊娠をきっかけに自分自身に目覚めていく姿を描く。監督は2006年に他界した女性監督エイドリアン・シェリー。ヒロインのウェイトレスを「フェリシティの青春」のケリー・ラッセルが演じる。ほろ苦くもおかしい独特の語り口と、登場するおいしそうなパイの数々がポイント。

【感想】パイはあまりおいしそうに見えなかった。なんというか、前半のヒロインの態度にげんなりしてしまい、お先真っ暗な気分で美味しそうな物があっても私の心に入ってこなかった感じ。
なんでこの映画を観たのか思い返してみると「監督の遺作」というのでなんとなく気になったから。「ハートフル」を全面に出されていたらありがちな印象で観ようと思わなかったかもしれない。
主人公は、臆病で葛藤したり不機嫌に見えるときもあるが、他人のせいにはしないので暗いテーマでもカラッとした雰囲気で見続けられた。
受け身の人生のようでありながら時々思い切った行動をしてそれを「相手に誘われた」とか「どうしても断れなかった」というようなうじうじネチネチしたところが見受けられず、すべて自分の選択の結果を引き受けているところには好感をもった。
決して明るさはないけれどあっけらかんとした佇まいの主人公は、私にとって不思議な童話や舞台など小さな世界の作り物を観ているようだった。
主人公が亡くなった母とのパイ作りの幸せそうなエピソードを語るとき「そこまで母親とよい思い出を残せる人がいるのか」と驚いた反面、そのような思い出のベースがありながら、何故主人公は他人に流されたり不安定なキャラクター設定なのかなど考えた。
過去のことを語るとき「こうであったらよかった」と、理想に偏りすぎる場合や、本人のなかの妄想を強化しすぎていかにも事実であるかのように信じ込み、それを支えに生きていく場合もあると思う。だが、この主人公の場合には、自分にとって都合よく物事を組み合わせる狡賢さは少ないように感じられた部分がストーリーの大半だったのでとても不思議。唯一の親友のような存在だった母が亡くなり、母との想い出に縛られるあまり不安定なのかもしれないというような気持ちにもなった。
ラストは「宝くじであなたにとっての大金が当たったときどうする?」というテーマを体現しているような終わり方だったように思う。嫌な仕事や人間関係は断ち切ってしまうのか、現実的にどの程度生活を変えていくのかなど。
この映画の場合、それが夢物語や完全な他人任せではなく、主人公が今まで積み重ねてきたことのなかで結果が出たと捉えられるところがよかった。
主人公は直情型で突拍子もないような行動をするよう見えるときもあるけれど、本人のなかにはちゃんと幸せを見つける能力が育っているので、数年後どうなるのだろうなんて、先の心配をしなくてもこの主人公は悔いのない人生を歩んでいけるのだろうなと感じられるところが魅力的でもあった。
私にとって、主人公の生き方はぶっ飛んでいたので、舞台や物語のキャラクターとして捉えるのが心のバランスとしてちょうどいいような作品だった。

あらすじ
南部の田舎町にあるダイナーで働くジェンナ(ケリー・ラッセル)はパイ作りにかけては天才的な腕前を持つウェイトレス。ある日、彼女は嫉妬(しっと)深い夫アール(ジェレミー・シスト)の子どもを妊娠。予想外の妊娠に困惑するジェンナはアールから逃げる計画を立てる一方、産婦人科医のポマター(ネイサン・フィリオン)と不倫関係に陥る。


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