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終了点の使い方それぞれの方法と判断基準



はじめに

今回はスポーツクライミングエリアにおける終了点の使い方を解説していきます。終了点はクライミング終了後、下降のために重要なポイントです。

クライミングルートというのは、自然の岩壁をクライミングのルートとして見出した最初のクライマーがボルトを埋め込んだり、カムやナッツを使って1本のルートとして完成させることから始まります。その際に、どのようなタイプのボルトを使うのかは初登者の判断に委ねられます。強度とコストの両面から考えると、グージョンボルトと言われる拡張型のボルトが一般的ですが、老朽化をひとつのリスクと考えた場合は、より長持ちさせることが大切になりますので、ケミカルアンカーと呼ばれる、溶剤で岩とボルトを固着させるタイプの支点が使われます。

この部分の選択はどちらが正しいということはなく、クライマーにとって十分な安全性を担保できるものであれば良いとなります。この観点から考えると、数回の墜落によって破断してしまうようなボルトや、風雨など自然環境に耐えられないものは除外されます。例えば工業用のアイボルトなどはクライミングルートに使うことはできません。なぜなら、墜落衝撃、自然環境の両面から、十分な安全を担保できないからです。

ボルトの設置は、中間支点でも終了点でも同じ考えです。ただし、終了点では、中間支点のように1本で完成とはなりません。必ず2点ないし3点の支点の設置がセオリーです。これは、終了点の特性によるものです。クライマーがルートを登るときには、中間支点にかけながら登っていきます。

クライミングにはバックアップのロジックが大切です。支点の事だけを考えた場合、最初のボルトにクリップするまでが1番危ないゾーンです。ビレイをしているとはいえ、クライマーの墜落を支えるものが何も無いからです。1本目のクリップを終えた時もまだ危険です。この状態では、一本目のボルトが外れてしまったらグランドフォールしてしまいます。バックアップなしの状態です。

2本目のクリップをした場合はその下の1本目のクリップがバックアップになります。そうしてどんどんクリップを重ねていけば、バックアップはどんどん増えて、登れば登るほど安全性は向上していきます。ただしこれはあくまで、ボルトのみにフォーカスした際の考えですので、ロープの中に足を入れない、トラバースの際はクイックドローのスリングを伸ばすなど、他の安全への配慮はないので、ボルトだけに安全のファクターを求めないように注意してください。

しっかり打たれていないボルト
錆びたボルト

中間支点のバックアップの考えが理解できたところで、終了点のバックアップについて考えてみます。

ルートを登ったクライマーは終了点を使って下降します。その際に中間支点のクイックドローは回収します。終了点がもし1点だった場合、クイックドローを外しながら下降している最中、終了点が外れたら、上部ではまだなんとかなりますが、ルートの半分以下まで降りた状態で終了点が破断したら必ずグランドフォールしてしまいます。

つまり、終了点は1点では安全を担保できません。その理由から、2点以上の支点設置が求められるのです。それでは次の章から具体的にどのような手段で安全に下降していけば良いのか解説していきます。

信頼のおけない終了点


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