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幸せを探してアラスカの荒野へ『in to the wild』

『in to the wild』という映画を最初に見たのは、2007年か2008年のカリフォルニア。レイクタホの友人の家でした。クライミングを通して海外によく出かけるようになった私にとって、この映画のテーマである「幸せとは何か?」というエッセンスが心に響いたのをよく覚えています。

当時はあまり英語も理解できなかったのですが、理解できないということが悔しくて、映画と同じ内容の小説を買って勉強もしました。まだそれほどインターネットが普及していない時代。アメリカで買った英語の本を読む時は日本から持ってきた辞書と睨めっこ。そんな風にして『in to the wild』という映画を通して多くの時間をアメリカで過ごして、この映画が大好きになりました。

主人公のマッカンドレスは超お金持ちの両親の息子で頭も良い。でも物質社会や、両親の在り方には疑問を抱いている。「幸せとは?」を求めて、アメリカ中を放浪しながらやがてアラスカにたどり着きます。アラスカの荒野ではマジックバスを見つけます。マジックバスは、使い古したバスを住めるように改良したキャビンで、実際にアラスカにもありました。もともとはこの辺りで猟をする猟師のものだったようです。

映画の影響で、マジックバスのある場所はヒッピー達の聖地となりました。年々訪れる人が増えていき、いつのまにかトレイルまで出来上がっていると話を聞いたことがあります。(現在、マジックバスはカナダ政府によって既に撤去されています)

マッカンドレスはやがて飢餓の中、ワイルドポテトと毒性の植物を間違えて食べてしまったことにより命を落とします。その直前に幸せとは何かに気づくのです。その時に残した彼の言葉が、似た感性の持ち主である私たちの心に深くつき刺さります。『happiness is only real when shared』〜幸福とは分かち合う時初めて真実となる〜

解釈の余地のある言葉です。私は最近この「shared」は人間間だけの話ではないことに気づきました。波に乗る時、岩を登る時、土に触れ、草花に触れるとき、そこには「shared」があります。つまり幸福とは自分の中の「気づき」そのものなのです。とは言ってもいつもそんな風には考えていられるほど私は器用では無いので、いまだによく迷子になります。

アメリカの広大な大地を旅する中で出会った『in to the wild』は、あの時出会ったたくさんの旅人の記憶と共に、私の中で鮮度を失うことなく何度でもリフレインしています。

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