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幻の「東京チカラめし」に行った話

牛丼三大チェーンといえば、すき家・吉野家・松屋である。
私にとって牛丼は手軽な食べ物であり、料理が面倒くさい時、家に着くまで空腹に耐えられない時などに軽率に利用している。百万遍交差点にはこの3チェーンが全て揃っており、気分で使い分けている(なお、実態はすき家:吉野家:松屋=0.25:0.75:9である)。

しかし、この世にはもうひとつ牛丼チェーンが存在する。東京チカラめしだ。
インターネットで調べてみると、東京チカラめしの衰退について、頭の良さそうなマーケターが分析している記事が多数見つかる。
2022年12月27日現在の店舗数はわずか2店舗。大阪日本橋店と新鎌ヶ谷店(千葉県)のみ。リンク先の記事では8店舗存在する旨書かれているが、コロナ禍で大幅に減ったようだ。
さらに、東京都内の店舗は2022年夏に消滅。東京チカラめしという名に反するようになってしまった。
千葉県は意図せず、東京ディズニーリゾート、東京ドイツ村に次ぐ詐欺をやってしまった。

こんな状況では、突如完全消滅してしまってもおかしくない。そう思った私は、12月の寒空の下、大阪日本橋店を訪れた。

店舗外観

外観は特段おかしな様子ではない。函館のラッピと違って東京チカラめしは別にアトラクションではないのだ。

入店し、食券を購入。雰囲気はセルフ改装前の松屋に近い。お冷を持ってきた店員に食券を手渡すところも同じである。
しかし、眼前に広がるキッチンは決して綺麗とは言えない。私は牛丼屋に綺麗さを求める必要はないと思っているが、チェーン店というより街の定食屋である。実際、周囲の客はみな定食を食べている。ごはんおかわり自由であることもあって、ボリューム満点のメニューが多い。

店外のメニュー表

持ち帰りメニューも提供しており、実際に持ち帰り商品の出来上がりを待っている人の姿も見られた。

着席してからしばらく経った。店内は混雑していないが、東京チカラめしの牛丼は「焼き牛丼」であるが故、案外時間がかかる。

店の前に掲げられた看板。冒頭の外観写真にも写っている。

待っている間は店内を眺めていた。昨今の物価高の影響か、持ち帰り商品には容器代を徴収するとか、マヨネーズなどの小袋を有料化するとかの文言が紙に手書きで書かれ、貼り出されていた。全国で残り2店舗という状況で、この店舗も決して経営は明るくないのだろう。

そんなことを考えていると、待ち望んだ焼き牛丼が来た。いくら実態が定食屋と化していても、私は牛丼チェーンのひとつを体感しに来たから、あくまで牛丼を注文した。

ほう。

確かに肉は焼かれている。そして美味い。味だけでいえば、三大チェーンの比じゃない。正直来てよかったと思った。

しかし、より俯瞰的な視点から東京チカラめしを見ると、答えは変わってくる。大手各社が女性客の取り込みを目論みシャブ漬け試行錯誤を繰り返す中、街の定食屋スタイルでは真っ向勝負を挑むのは厳しいだろう。清潔感や店舗内のオペレーションなど、あらゆるところに改良の余地がありそうだ。
売りであるはずの「焼き」が、ビジネス街で思うようにシェアを拡大できなかった所以であると説明した記事もある。確かに混雑する昼時に「ご注文をいただいてから」を死守するなら、待ち時間10分は覚悟する必要があるだろう。これは回転率の低下にも直結する。

親会社は完全に別業態に資源を振り向けており、残り2店舗が細々とやっている東京チカラめし。数年後には、歴史と記憶の中でのみ営業しているのかもしれない。

余談だが、私の牛丼四大チェーン店舗制覇率は、東京チカラめしが一気にダントツ1位となった。今後大した苦労をしなくても(もしかしたら千葉を訪れさえしなくても)、全店制覇を達成できるかもしれない。

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