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【FGO】ラーマ・シータについての解説

FGOのラーマを踏まえ、その原典ついて。

原典「ラーマーヤナ」

ラーマはインドの叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公。「ラーマーヤナ」はアルジュナ、カルナが登場する「マハーバーラタ」に並び最も重要な叙事詩とされている。
彼はヴィシュヌ神の化身として、ラークシャサの王ラーヴァナを討つことを運命として生まれた。
ヴィシュヌの使命というのはもちろんあるが、ラーマ自身の人生の中でラークシャサ族との確執が存在する。FGOにおいては、特にそこが重要といえるだろう。愛妻シータが関わるものだからだ。

ラークシャサとの因縁は、ラーヴァナの妹の羅刹女シュールパナカーに惚れられるところから始まる。
シュールパナカーはラーマと弟ラクシュマナに振られ、鼻と耳を切られると散々な仕打ちを受ける。そこで彼女の兄の羅刹王ラーヴァナにシータを攫うようそそのかす。彼女なりの復讐ということだ。
そしてシータはラークシャサの要塞ランカー島に連れ去られ、戦争の口火となる。
アンドロメダを怪物ケトスから救うペルセウス、ピーチをクッパから救うマリオ、そういった英雄物語の類型の代表的なひとつだ。

ラーマの弓

劇中でも言われるとおり、ラーマの最も適正なクラスはセイバーではない。
ラーヴァナとの戦いは弓矢での戦いであり、ラーヴァナを射ったのは矢だからだ。
セイバーとしての剣はラーマの矢を打ち直したものとしている。これはFGOでのオリジナルな要素だ。
ラーマは弓矢を複数所持している。

ヴィシュヌの弓

まず、一つがヴィシュヌの弓。
名は「シャルンガ」とも、「コダンダ」とも言われている。ここからラーマは「コダンダパーニ(コダンダを持つもの)」という異名をもつ。
この弓はヴィシュヌの化身としての先輩であるパラシュラーマから、シータとの出会いの直後に与えられたものだ。
弓を受け取った時、ラーマはパラシュラーマが征服した世界を砕き、その場にいた皆を驚かせた。

ちなみに、アルジュナの親友でラーマの次の化身クリシュナもこの弓を持っている。
つまりパラシュラーマ→ラーマ→クリシュナと、間にいくらかの人の手を介しながらヴィシュヌの化身の手に渡った。

この弓には面白い逸話があり、パラシュラーマの口から以下のようなことが語られている。

ヴィシュヌとシヴァの弓比べ

ヴィシュヌとシヴァはどちらが弓の腕に優れるかと弓比べを行った。
そこで工巧天ヴィシュヴァカルマンに弓の製作を依頼した。インドの鍛造神ヘファイストスと言える神だ。
この時作られたのがヴィシュヌの弓と、シヴァの弓である。
弓比べが始まり、ヴィシュヌが弓弦を鳴らした。するとシヴァの身体は硬直して弓の弦は緩んだ。
勝ち負けを比べるまでもなく、両神は弓比べを止めて仲直りした。が、多くの神はシヴァよりヴィシュヌの方が優れていると悟った。
この時使われたヴィシュヌの弓がラーマが持つもので、もう一方のシヴァの弓はシータの夫探しに使われたもの。これは後述する。

黄金の弓ブラフマダッタ

ラーマに与えられたもうひとつの弓はブラフマダッタ。聖仙アガスティヤに授けられた弓だ。

「人中の虎よ。この黄金と金剛石の飾りをつけた神聖な弓は、ヴィシュヌ神の所有されたもので、ヴィシュヴァカルマン神(工芸の神)が造ったものだ。 ブラフマダッタという、的をはずすことなく、太陽にも似た最上の矢……

ヴァールミーキ (著), 中村 了昭 (翻訳) 新訳 ラーマーヤナ 3 (東洋文庫)

こちらもヴィシュヴァカルマンの手によるもので、ヴィシュヌがアスラ(ラークシャサと同じような魔物)を倒すために使ったという由緒がある。

その他大量の矢や武器

その他、多すぎて書ききれないほどの矢や投擲武器を持っていた。FGOでは『偉大なる者の腕(ヴィシュヌ・バージュー)』としてそれらがまとめられている。
中にはパーシュパタやブラフマシラス、金剛杵など、そうそうたる武器が挙げられた。

ブラフマーストラはシータを傷つけた神を世界の果てまで追いかけるものとして登場する。
この際は草をちぎってマントラによって矢に変えて放っている。Fateにおいてカルナが使うブラフマーストラが矢そのものでなく弓術の奥義とされているのも、こういった特性からかもしれない。

シータのシヴァの弓

ハラダヌ

FGOACのシータは『追想せし無双弓(ハラダヌ・ジャナカ)』を宝具としてもっている。
シータの父、ジャナカ王が持つシヴァの弓のこと。
これに弦を張れたものがシータと結婚できるという催しをしたが、ラーマはこれを勢い余って折ってしまう。ラーマ本人もさぞ焦ったことだろう。
"ハラダヌ"の”ハラ”はシヴァを、"ダヌ"はを意味する。
この名称はレグルス文庫版の中に見られる。

ミシラーのジャナカ王が、王女シータの花婿をえらぶために、ハラダヌという大きな神弓をまげさせるお祭りのもよおしがあるというのです。
~~~
この神弓はシバの神のおそるべき武器で死神の弦をはった、 ほろびること のない弓なのじゃ。

河田清史. ラーマーヤナ(レグルス文庫)

ラーマとシータの関係


これは前述したヴィシュヌとシヴァの弓比べで使用されたシヴァの弓で、FGOにおけるシータを鑑みると、ラーマとシータは対となる双子の弓を持っているということになる。
霊基に強いつながりがあるのもそこからかもしれない。

パラシュラーマは、このシヴァの弓の破壊された時の音を聞きつけてヴィシュヌの弓を持ってきた。
もしシータの危機でアーチャーのラーマが駆けつけてきたならば、それは神話の筋立て的にも非常に熱い展開になることだろう。


参考
ヴァールミーキ (著), 岩本 裕 (翻訳) ラーマーヤナ(東洋文庫)
ヴァールミーキ (著), 中村 了昭 (翻訳) 新訳 ラーマーヤナ(東洋文庫)
河田清史. ラーマーヤナ(レグルス文庫)



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