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高みを目指すアスリートと、僕の役割。

 本来怪我は、ない方が良い。しかしアスリートとしては避けて通れないことであり、その期間をどう過ごすかで、プラスに転じることもあるのではないか。

 古野 慧。慶應大学2年生でスキークロスの選手。2022年のオリンピック出場を目指し今年も精力的に活動していたが、先月のカナダでのW杯にて転倒し、左膝前十字靭帯断裂という大怪我を負った。

 彼との出会いは、選手向けメンタルマネジメント研修で登壇した時。終了後、僕が帰るときにわざわざ走って追いかけてまで声をかけてもらった。
 決して競技人口が多いとは言えない種目のプレーヤーとして、成績だけでなく種目の発展や身の振り方、それらに向き合いながらもオリンピックを目指す。競技スキルをあげる練習や勉強だけでは足りないと思っていた最中「キャリア」という言葉が刺さり、声をかけてくれたのだと思う。

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 僕自身、もちろんスキークロスなんてやったことがない。しかし彼からは「問いかけや壁打ちによって新たな気づきや課題の解消につなげてくれる」と頼ってくれる。種目の知識に偏らず、短期的にならないような、一生を考えた上で今をどう過ごすか、その視点でコーチングを続けていく。ビジネスにおける状況分析の手法を用いたり、全然違うスポーツを紹介したり、キャリア支援における自己理解のアセスメントを応用したり。そんな中、今回の大怪我。

 帰国後すぐに駆けつけようとしたのだけれど、追い討ちをかけるように体調不良が彼を遅い、先日ようやく話すことができた。時間が彼をケアし、彼も時間を有効活用し、さほど落ち込んでいないように感じた。この辺りのリカバリーも、彼のセルフケア能力の高さをうかがわせる。
 その後色々と話を聞いていくうちに、プレーにおいて以下の課題が見えてきた。

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1.感覚的な緊張と、実際の身体的緊張のズレ
直近での転倒は2回。共にW杯。他の大会とさほど変わらない緊張感だったというが、何かが違う。本人も自覚はなかったものの、改めてこのズレに目を向ける意志を持っていた。

2.体重増加により直線は強くなった分、ターンへの負荷が
元々はスタート以外の全般的な部分に課題を感じていたが、トレーニングにより体重を増やし、直線のスピードがアップ。シンプルだが、その分ターンの難易度が上がっている。スタートは以前から強みとして認識しており、その後を課題としている。

3.転倒のトリガー(引き金・起因)が不透明
当たり前のことを当たり前にできなくなる条件が、上の2つを中心に発生することまでは言語化できたものの、それが転倒の条件につながるかどうかまでは確定できず。対人的駆け引きにおける脳領域や気候条件、コース環境など、まだまだ調べる余地がある。

【言語化という収穫】
 上記の課題は、書き出して眺めると普通のことのように感じる。しかし、個人的な感想としてはもっと複雑な状況のように感じていた。問いかけて書き出して眺めて修正して向き合うことで、思いの外向き合うべき課題は端的だったと感じている。何が良くて、何が課題なのか。見えるようにすることが重要で、本人も今までとは違う感覚を持ち始めている。文字にすることで理解度が高まっていることが分かってきた。大きな収穫だったと思う。怪我をし生まれた時間を使って言語化を行うことで、新たな気づきになった。

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 正直、古野くんとの関わり方、僕の役割、ミッションがなんなのか、分からなくなる時もある。しかし、少しずつ結果が出始めていること、そして今回の怪我を乗り越えること、そして将来のこと。いろいろな部分で好影響を与えることができ、そこを言語化することができれば、いずれこの役割もアスリートにとって必要なものになるのではないか、そう考えている。僕自身にとっても大きなチャレンジとして立ち向かい、古野くんのオリンピック出場の力になりたいと思う。
 知り合いにアドバイスいただいた「オフロード・ラジコン」から何を学べるか、ここも気になるところである。詳細はまた書きたいと思う。

では。

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