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飲食店未来学54:コストダウンと利益確保のためスシローが行ってきたこと~消費者目線で説明

先日も晩ごはんで予約してスシロー大分元町店へ行ってきました。今回は通路の向かいにカウンター席があるボックス席に着席。目についたのは2人の女性客でした。1人は80歳くらいの高齢の女性。6皿キッチリ食べて780円。もう一人は勤務帰りの20代半ばの女性。この人も6皿食べて780円。なるほどご飯を作らずに即食べたい人には、スシローさんは便利この上ない。野菜はいつ食べるのかなと少し心配した。所要時間15分~20分程度。

変動し高騰し続ける魚ネタの原価アップを吸収するために、日々商品の原価下げの研究が進んでいるというのが伝わってきます。一時期は原価率45%くらいと言われていたが、この円安では再度55%超えの原価率も耐えるしかないと思います。スシローさんを例にコストダウンの対策を参考にお伝えします。

シャリの変化

2年前くらいまでは美味しいシャリ。シャリ酢とのバランスが良い出来上がりでした。異常な円安時代に入り、まずお米の甘味やパサつきなどの食感が微妙に変わりました。コストが1貫で0.1円変わっても、1か月や1年では莫大なコストが変わります。変えざるを得ないのがよくわかります。

赤シャリになって失敗したり、シャリのグラム数を多くしたり少なくしたり。今はシャリを大きく見せる、1貫でも多く食べてもらうために、1貫17g?程度のシャリで作っているようです。しかも寿司ロボットでにぎる圧は最小限度です。今までで一番もろいというくらいにゆるやかなにぎり圧です。ネタをのせて少し押されてふたつに壊れたシャリの寿司がたまにレーンで届きます。


シャリ酢(すし酢)の変化

2年前くらいのさすがスシローさんという美味しいシャリ酢は、添加物を多くしたシャリ酢に変りました。それでもスシロー的なシャリ酢の範疇です。
10%~20%、前のシャリ酢よりも味が落ちたなという印象です。人工甘味料が多いせいか、その影響が翌日の体に表れます。


ガリ(生姜の甘酢漬け)の変化

ガリも白くて薄いものから、少し歯触りの悪い白がくすんだものに変り、甘酢の感じも少しぼやけました。これであまりガリは食べなくなりました。最後にはガリは見かけないことが多くなった感じがします。(店舗や時期で違うのかな)


ワサビの変化

コストの安い西洋わさびを使わざるを得ない回転寿し商売ですから、やむを得ないと思います。以前にはなかった「わさび液」みたいなものが20%くらい入ったワサビの小袋です。量も少ないから、私は7袋~8袋をひとりで使います。きっと添加物多いよな。。と思いながら使ってます。以前はワサビの風味がちゃんとしていたものを出していました。


醤油だれの変化

ギリギリの使命をちゃんと果たしている付け醤油と思います。(回転寿しでムラサキとは呼ばないような感じがする)お皿に入れて寿司をつけるというよりは、お皿の寿しの上に「かける」役目です。これも後口で旨味を感じるものから、かけた味がわかるものに変りました。


粉茶の変化

粉茶もここ2年くらいでワンランク美味しくなくなりました。粉が良く混ざらずに喉に引っかかるかもと思わせる粉茶です。味もまったく大したことはありません。アジアのどこかの国か、日本の場合は、古茶または古々茶を使っているのかと思わせます。コストをここまでしかかけられないというギリギリの選択が、すべての商品に表れていると思います。粉茶は抹茶と違い単に緑茶を挽いたものです。緑茶のコストは様ざまです。

『粉茶』は、茶葉を乾燥させて粉末状にしたものであり、主にお茶として飲まれることがあります。 一方、『抹茶』は、茶葉を特別な製法で栽培・製造し、最後に石臼で挽いたものです。

違い辞典さんより引用

生ネタを提供するために、それ以外のすべてのコストを抑えるという姿勢がはっきりしています。


箸の変化

割箸➡エコ箸➡今は党名の袋に入った完封の竹箸です。これはこれでいいと思います。(女性が多いとどうしてもエコ箸は敬遠されることが多い)


食器の変化

以前はスプンと一緒にミニフォークがおいていた。元食器屋の私は、この小さなシルバー類が毎月どんどんなくなるのを知っています。箸やおしぼりとともにゴミに交じって捨てられることが原因です。

たれ皿がなくなってもうしばらくたちますが、これもコストダウンにつながっています。補充がいらない。そして洗浄の手間を省き(人件費減)、洗浄機用の洗剤(洗剤のコスト減)や洗浄機の利用時間が短くなるとガス代のコスト減にもなります。


レーンを流れるすし皿が消えた変化

地元にあった200席の回転寿し店の方が言っていましたが、1か月間でレーンに残った廃棄寿司は原価で50万円分以上あると言っていました。今ではこの1.5倍~1.8倍でしょう。

レーンに流れる廃棄の寿しは、シャリを捨て、ネタはとっておいて、茶わん蒸しに転用していましたが、レーンに流さなくなったら、茶わん蒸しの中身が安定してきました。(どこのチェーン店でも原則はこれです)

レーンに商品を流さず、オーダー品だけに変えたことで、大きなフードロス対策になり、利益に確保につながったと思います。今後も続けるべきと思う。カバーがない提供ですから、水分が飛んで乾燥する。周囲の空気が影響するからです。


寿し皿売価の変化イメージ

先日行った時の印象はこうです。

●120円皿商品はリーズナブルですが食べたいと思う鮮度のネタが少ない。
●180円皿に力を入れている。
●360円皿を何とか売り込み定着させようとしている。
●3貫以上の寿しセット商品で豪華さと原価率を下げようとしているが、さほど売れている気配がない。(好みで食べたいから貫数が増えると抵抗も増える)
●銘柄をつけた魚ネタを1貫で180円とかで売るようにし始めた。

1人のお客さまの食べる量がほぼ一定なら、前年対比の売上アップを考えれば、客数アップとともに、客単価アップを実現させるしかないと思います。
熱心に邁進されています。


外食客減少時代に大箱200席は必要か疑問

ネタ質を引き上げて客単価を50%アップさせる
必要があるのではないか

ネタの資源枯渇でもっと高騰した場合はどんな回転寿し業態にするのか

などと先行きを心配しています。

飲食店に関わる方は、コストダウンを行う企業努力のあり方を、一部は
スシローさんをお手本にされてみたらどうでしょうか?

大型店でなければ、商品品質を変えずに良い状態を保ち、価格転嫁をすべきと思います。

(了)


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