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飲食店未来学:専門店化時代の幕開け1:商品価値が売価を決める時代

たとえばあなたが飲食店に勤務して料理をつくる時、実は、ふたつの選ぶべき方法があります。

○原価や売価に見合った食材や調味料を使い料理を組み立てる
○使用すべき満足のゆく食材で作る料理の商品力で売価を決める

今までは、私も「売れる価格を先に決めて、その売価に見合う適正利益がとれる食材を選び、分量を決め、料理を組み立てる」ということを奨励してきました。

しかし、こと令和6年の4月以降は実に大きく変わってしまいました。いまは、「食材の品質と分量を決めて商品価値を生み出し、その商品価値に見合った価格をつける」方向に大きく転換してきたのです。あくまで商品力の良さがどれくらいあるかで、その商品の価格が決まります。

食材メーカーでさえも卸価格を30%も値上げすることがあり、飲食店でも10%ではなく、20%~30%の値上げを実施するところも出てきました。

さらに、新メニューが形を変えて、今までの売価の1.5倍~2倍という料理も見かけるようになりました。これには次のような原因があります。

料理の売価が上がり続ける原因

1,食材の絶え間ない値上り

多くの方は、ここ近年だけ値上げが激しいと思うでしょう。でもそれは、値上率が下がっても、実勢価格は常に日々上がり続けるということにほかなりません。

2,人件費の向上を含む価格転嫁(値上げ)容認の風潮

食材価格の値上がりを価格に転嫁するだけでなく、従業員の待遇向上のため、水光費の値上がりで利益圧迫を改善するための値上げが多く含まれています。

いま、外食産業の利用者は一般の個人客です。価格が上がり続けると、予算が減額になったり、回数を抑制します。それはそれで悪循環です。金銭に余裕ができるほどの賃金アップにはなっていません。

3,食材生産量の減少

異常気象による世界的な不作や不漁が起こっています。需要は高まりますから、ますます、価格が高騰します。病んだ地球は、順調な食糧生産を約束してくれません。

4,円安の長期化による不況

ニュースで見る日銀総裁の顔色をいつも注意深く見ています。主要各国と連携しながら、タイミングを待っているのを感じます。しかし、かなり高度なやり方が必要なため、これだけの混乱期に適切な手が打てるか疑問というしかありません。円安不況と円高不況で、不況が長引くと思うほかないと思うのです。

5,売上減少の穴埋め対策

実際に、定点売上観察店においては、月商の減少、平日売上のバラツキ、ライバル店の安売りキャンペーンなどで、コロナ以前のような順調な売上方は皆無になってきました。客数減で凹んだ売上は、客単価アップで補うしかなくなったと言えます。

客単価を伸ばすための高額商品(豪華商品、大盛商品など)づくりが盛んですが、その中で、本当の長期で売れる商品はいったいどれくらいあるでしょうか。大変疑問に思います。

大型の全国チェーンさんですら、打つ手を間違えたり、見誤ったりしているように思います。どこまできちんと予測出来ているか大いに疑問です。

このような原因を踏まえた上で、個々の外食利用者がこの価格ならと許せる価格で、ピンからキリまでの価格差がある商品選択をする時代に変ってきました。たとえば同じ丼料理でも、500円もあれば5000円もあります。それぞれ、この価格ならいいよというお客さまが買ってくれています。

商品力が強ければ高くても売れる時代

希少食材の料理
獲れる時期が短い、取れる量が少ないなどの理由で食べたい食材がふんだんにない場合。

美味しく食べるために高度な調理技術が必要な料理
もうここ30年~40年間は、料理人の絶対数は減少し続けています。団塊の世代のリタイア、その真下の団塊世代の弟分の世代(60代の方たち)も続々と引退しています。

おいしい料理をおいしく出せる料理人はますます希少なのです。

美味しいものを高額でも求める時代
よくいう衣食住で、一番少額で味わえる「幸福」はどれでしょうか。それは、財布のお金をはたいて食べるご馳走です。

借金せずに買える料理は売れるのです。自分ご褒美で高額料理が売れます。ただし、お金のない人は1年に1~2回です。お金のある人は毎週でも利用します。収入によりオーダーする頻度が異なるだけです。

食材原価1,500円の料理が4,980円で売れる時代

この原価と売価なら、食材原価率30.1%です。食材の選び方次第。食材の組み合わせ方次第。美味しく豪華に見える盛付けが食欲を誘います。

snapdishさんから拝借しました(イメージ)


新メニューづくりは料理に対する真価を発揮する大切なチャンスになる時代です

劣悪食材を使い、必要以上に添加物で加工した偽物料理を生み出すことは、未来の飲食業をつぶす行為と受け止めています

(了)



飲食コンサルタント業30年の経験を通じてお知らせしたいこと、感じたこと、知っていること、専門的なことを投稿しています。 ご覧になった方のヒントになったり、少しでも元気を感じて今日一日幸せに過ごせたらいいなと思います!よろしければサポート・サークル参加よろしくお願いします