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PERACON2023 振り返りと自己分析

こんにちは。流浪のゲームプランナー、みやもとです。

CEDEC2023で開催された"PERACON2023"(以下:ペラコン)に参加し、第2位という順位をいただきました。審査員の皆様、ありがとうございました。

去年同様、今年も提出した企画についての振り返りを行いたいと思います。

今回提出した企画『ヘアーズ・クロッシング』

テーマ『かえる』

今年のテーマは『かえる』でした。
変える、帰る、孵る、そしてカエル🐸と、様々な解釈ができるテーマです。

例えば『変える』をチョイスしたところで、普遍的な言葉ゆえにイメージが絞り切れず、どういう企画にしようか悩む……と、選定に苦労された参加者の方も多いと思われます。

テーマを見た時、やはり『カエル』が思い浮かびましたが、モチーフの面白さからきっとカエルの企画が多くなると予想しました。そこで、競合を避けるために普遍的な『変える』をチョイスしつつ、『変える』対象やモチーフで独自性を出そうと考えました。

裏テーマ

企画を詰める前に、今回のペラコン参加において自分の中でやりたいことをいくつか決めました。

ひとつはミニゲームにしないこと。
ペラコンはペラ一枚、つまり画像一枚で企画を説明する必要があります。ともなると説明できる要素は限られ、「わかりやすく伝える」ことを意識すると、企画はミニゲームの方が相性が良く、まとめやすいのです。ゲーム画面を見せる場合も、ミニゲームだと大抵その画面で完結します。去年のペラコンに提出した『ショウジング』もミニゲームです。

去年のペラコンに提出した企画『ショウジング』

となると今年もミニゲームでまとめるのがベターではありますが、今回はミニゲームにせず、ある程度のスケール感を出せる企画にまとめようと考えました。

ミニゲームにしない、となると「どの要素を入れて、どの要素を省くか」が重要です。ペラ一枚という弁当箱に、どのおかずを入れるか……。詰め込みすぎると雑多で見にくいペラになりますし、逆に必要な要素が入っていないと、意図通りに伝わらないペラになってしまいます。ミニゲームにしないとなると、その精査がより大切になります。

そしてもう一点はペラを縦向きにすることです。
企画書に限らず、人間は視角の関係で画像が横向きの方が一覧性に長ける。つまり、見やすいです。ペラ一枚で伝えるペラコンにおいても、レイアウトのしやすさ(ゲーム画面と概要・仕様を横に並べて説明する)を考えても明らかに横向きが向いています。

ですが今年は縦向きで行くことにしました。特に理由はありません。強いて言うなら、縦向きの方が上から下へと目線の誘導がしやすいかな……と思ったのですが、あまりそんなことはありませんでした。結局、目にとまる部分から見始めるものです。

髪型を変える

企画の中身の話に戻ります。
『変える』に決めたところで、何を『変える』企画にするか?というフェーズですが、まずはゲームでよくある『変える』は避けようと考えました。装備を変えるとか、ジョブを変えるとか、色を変えるとか。もちろんこれらのチョイスが悪いというわけではなく、やり様によってはいくらでも面白い企画にできると思います(実際そのようなペラもありました)。ですが、できるだけアイディア被りは避けたかったため、何かユニークな『変える』ゲームにしようと考えました。

そこで、ちょうどそろそろ髪を切りたいと考えていたため、髪型を変える企画にしようと決めました。去年のモチーフとして選んだ「障子を破る」もそうですが、現実世界の生活からイメージしやすいものを選ぶのは、ペラコンという「限られた情報量で、いかに面白さを伝えるか」という条件において有利だと考えています。日常から離れている動作イメージは、たとえ面白かったとしても、どうしても理解するために時間が掛かってしまいます。

それと、数年前に個人的に書いた企画書のひとネタをペラコン用にアレンジしています。当然世に出ている企画ではないので、あくまで自分の引き出しの中から「使いどころだ」と判断して出した、という具合です。

「髪型を変えてどうするか」ですが、もちろん着せ替え要素だけだと企画としての強度が足りません。髪型を変えることで、どういう遊びができるだろうか?と考えた時、「髪型」というモチーフが持つその変幻自在性にフォーカスし、形状変化によるアクションの変化を遊びの核とすることにしました。「ロボットゲームでカスタマイズをすると動作が変わる」に似たニュアンスですが、髪型というモチーフを採用することでよりポップでキャッチーな表現ができると考えました。

どう髪型を変える?

髪型の変更ですが、当初は「美容室にある頭に被せるアレみたいなブロックがあって、それを叩くと髪型を変えられる」や「マップのあちこちにサロンがあって、そこで変えられる」などを考えていました。

しかし、いまいちパンチが足りない。
能動的というより、他からの干渉で髪型が変わってしまったほうが絵面的にも面白くないか?と思いました。

そこで浮かんだのが、下敷きで静電気を起こして髪を立たせるイメージや、爆発によってチリチリになるという漫画やコント的なイメージです。そこから、敵の攻撃や行動を受けることで髪型が漫画的に変化し、その変化した髪型に応じてアクションが変化する、というシステムにしました。

「叩かれるとタンコブのように膨らみ、お団子ヘアーになる」というのは、まさに漫画的表現からの着想です

敵を利用することでアクションが変わるというのは『星のカービィシリーズ』のコピー能力に通ずるものがありますが、それよりも大きく影響を受けているタイトルがあります。

それは『ワリオランドシリーズ(2以降)』です。主人公であるワリオは特定の攻撃を受けると「体が燃える」「太る」「ゾンビになる」などのリアクションを引き起こし、ユニークな操作を楽しむことができます。

ワリオのキャラクター性がこのような体を張ったシステムを成立させているのですが、これを可愛らしくポップな表現に落とし込む際に、髪型というモチーフは最適でした。

その際、「髪を乱暴に扱う」という印象を少しでも和らげるため、髪型に寄生している「フタクッチ」というキャラ(元ネタはもちろん二口女)を用意し、ワンクッションを挟むようにしました。このワンクッションは、昨年の企画でいう「プレイヤーを猫にすることで、障子を破るという行為の罪悪感を和らげる」に通じています。

ラフ作成

諸々のシステムが決まったので、ラフの作成に移りました。

上から下へ読ませることを想定し、上側にメインビジュアル、ゲーム画面、核となる要素の説明を入れ、下側にネタのバリエーションと、世界観説明を入れました。

ですが、実際は「上から下へ読ませる」レイアウトにはあまりなっていないと思います。たぶん目線の優先度付けがフラット過ぎるのかなと。ここはまだまだ自分のレイアウト力の甘さを感じますね。

前回はiPadでしたが、今回は板タブで描きました

ほぼ完成稿と変わりませんが、部分的に変えている箇所があります。

ラフの左下

ラフの段階では「トゲトゲの攻撃を受けると、キューティクルゲージ(HPのようなもの)が減る」という説明があったのですが、完成稿では「髪型が変わるとBGMが変わる」というものに変更しています。

完成稿の左下

これは「トゲトゲの攻撃だと髪型が変わらず、ダメージを受ける」「キューティクルゲージというHPのような概念がある」というように情報量が増えてしまうと考えたため、より「髪型が変わる」というシステムに直結している、かつより前向きでポップな要素である「BGMが変わる」という説明に、このスペースを充てることにしました。

ここは好みの問題でもあるかな、とは思います。ゲームのルールをしっかり説明したい、という場合はHPとダメージの説明があった方がいいと思うのですが、今回は省くものは省くと決めているので、よりノリ重視の要素を入れることにしました。

他にもラフから省いた要素はいくつかあります

特に「髪型がこう変化すると、こういうアクションが取れる」という部分にキャラの挿絵を多く入れたかったため、挿絵の総数を抑えるために省けるものは省いています。これでもまだ多く見えてしまいますが……。

ミグ、フタクッチ、髪型と挿絵一つに対して情報量が多い

ペン入れ、着色、完成

ラフでレイアウトと内容が固まったので、ペン入れと着色を経て、完成させました。

色遣いについては、よりポップさとトレンドを取り入れるため紫を基調としたシティポップ風を目指しました。コンセプトである「髪型」に目が行くよう彩度の高い色を置いています。

提出、そして結果発表

完成したので、提出しました。提出順は341人中64番目でした。
去年もそうだったのですが、提出後も自信がなく「この企画で大丈夫だろうか…」と不安になっていました。そんな中、一般投票でいただけた票はとても励みになりました。投票いただいた皆様、ありがとうございました。

そしてCEDEC3日目を迎え、結果発表の時です。
オフィスからオンラインで見届けました。結果、2位をいただきました。

昨年1位をいただいたとあって、今年は連続で1位を取れるか、あるいは順位を下げるかしかないという状況でした。連続1位こそ逃しましたが、それ以外における最良の結果ではあったので、個人的には満足しています。

そもそも今回は殿堂入り(3回10位以内に入る)のステップのために10位以内入賞が目標だったので、十分過ぎる結果です。とはいえ、2位まで来れたら、せっかくだったら1位を狙いたかったな……と思うのが正直なところです。

反省点

今回のペラにはいくつかの反省点があります。大体はこの「髪型のバリエーション」を見せる部分です。

この部分は円形のコマにこだわりすぎていて、レイアウトとしてやや取っ散らかった印象に見えると思います。ポップな雰囲気は出せるかもしれませんが、やはり見やすさは犠牲になっている。せめて黄色のコマは四角でもよかったかな~と思っています。

また、髪型変化によるアクションが攻撃に寄っているのも、ちょっとバラエティに欠けるなと思います。「ツインテールスピン」は移動手段として飛べるようになる、というアイディアなのですが伝わりにくい絵になっていますし、「コイルロール」もゼル伝のフックショットのようなダイナミックなアクションとして見せた方が、面白味があったかもしれません。「ボンバーへッドバースト」は……まあ、このままでいいかもしれないです。

右下の部分も世界観説明であって遊びの説明ではないため、他の要素の方が良かっただろうなと思いつつ、いいまとめ方が思いつきませんでした。

とはいえ「昇天ペガサスMAX盛り」は入れたかったので、その点では満足しています

その他反省点は大小ありつつも、2位をいただけたのは素直に喜ばしく、出来過ぎな結果だと思っています。重ねて審査員の皆様には感謝申し上げます。

ペラコンと「見栄え」について

さて、ここからは自分の企画というより、ペラコン自体についての話です。

ペラコンの話題をX(旧Twitter)で探していると、「ペラコンは企画内容よりも見栄えの良さで評価されているのではないか、それはどうなんだ」という意見を見かけました。

これに対する自分の答えは明確です。
見栄えも企画の一部です。

加えて、見栄え=画力ではありません。
伝えるための工夫、こだわりだと思います。

ペラコンはペラ一枚で「面白さを伝える」必要があります。であれば、面白さを伝えるための見栄え……工夫、こだわりが評価されるのは必然だと思います。

綺麗な絵があれば優秀な企画になるのか?そんなことは無いですよね。「見栄え」はいいかもしれないですが、肝心の中身が伝わらなければ元も子もありません。

企画の中身も大事ですし、その中身が伝わりやすいか、面白いそうと思えるか、読みたくなるか……ざっくり称して「見栄えがいいか」というのも大事だと個人的に思います。

これは風のウワサですが、某社の某元社長は、並べられた企画書に対し、表紙で読むor読まないを判断していたとのことです。

まとめになりますが

  • 企画は見栄えも大事

  • 見栄えとは画力ではなく、伝えるためのこだわり、工夫である

  • ペラコンはペラ一枚で伝える必要があるため、見栄えが重要なのは必然

というのが自分の見解です。

講釈垂れておいて、じゃあさぞ実務でも企画通りまくってるんだろうね、と思われた方。すみません、全然そんなことありません……。

個人的な推し作品

6位『背怪(はいけい)』
振り返りの遊ばせ方が好きです。見せ方も良い。個人的に1位候補でした。
しかも私の母校かつ出身学科の方でした。嬉しいですねぇ。

第188位『変えて!Show Main!』
『変える』の落とし込み方が好きです。正しく「推し」の企画。
ぼっちざろっくの8話みたいなことができるってことですよね。やりたい。

最後に

ここ最近……というより、今年に入ってからプランナーとして絶不調が続いておりまして。正直かなり自信を喪失していました。そんな中、今年もペラコンで2位をいただけたというのは、とても嬉しく、励みになりました。
来年も10位以内に入ると殿堂入りとなりますので、もちろん目標としたいです。

しかし、せっかく1位と2位をいただいた企画が手元にあるので、何らかの形で活かしたいですねぇ……。


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