女ともだちの文通 6


沙也加

しばらくお手紙が書けていませんでしたね。変わらず健康で過ごしていますか。
今朝も朝から私はスターバックスへ来ています。7:13につきました。
いまオンラインでの英会話のレッスンが終わってひといきついているところ。

さて、少し時間が経ってしまいましたが、先月は楽しいひとときをありがとう。久しぶりに直接話ことができて嬉しかった。
服もとても素敵だったね。着こなしていた。
よく似合っていたし
沙也加は会うたびに沙也加らしく洗練されていきますね。
(とここでスターバックスをでました)

(同日17:00ごろより再開)
私は入籍に先立ちいろんなものを手放しています。
都会での暮らしから、仕事まで。
3年間暮らしたアパートの契約、営業目標値、担当していた顧客、電化製品。
とても気分よく手放しています。

私はいつも心がむくままに、なるべく正直に生きてきたつもりです。これからもそうするし、また、そういう姿勢でありながらも、私は世界をもっと広く見てみたい。
心を自由にしてあげながら、高いところで広い世界をみたいのです。
そういう気もちはおさえようがないのです。
昔は、私はもっと、私の元からはなれてしまうことや私が離れざるを得なかった場所について、ずっと考え込んだり、私の中からなくなってしまうことに対し、悲しくなったり心がどうしようもなくうごかされたりしてしまっていました。

Out of control
親が転勤族だったので幼少期の私は好むと好まざるとに関わらず、慣れきた土地からの移動を余儀なくされていたし、物心つくころからは、少なからざる怒りのようなものさえ感じていました。
今さまざまなことを自分でえらび決断できるようになったことは私にとって大人になってよかったことの一つかもしれないです。

in my control
私は私の人生を、舵をとって、私自身で生きている、そういう手応えを感じてすらいます。
なんでだろう?
都会での暮らしを失い、積み上げてきた営業キャリアを失い、仕事を通じた顧客との関係も失い、職さえ失おうとしているのに、大変気もちがいいです。
風を切り、山脈を越え、大洋を渡る、旅はまた始まる
そういう明るい気もちです。
それは私が自分で選び決めていくことで自由という、何にも変えがたいものを着実にとりこんでいるからだという気もします。
失ったり離れたりするたびに私の中にそれらが "在る" ということも同時に感じる。愛が帰るばしょ、なのかな?

沙也加もからだに気をつけて。
また会いましょう。

M

新しい住所になります。
〒●●●‐●●●●
○○県○○市---
M.K
名字も変わります。遊びキテネ


M

果たしてこの手紙が間違いなく 横浜 の M.K
に届いているのかいささか心配です。
この宛先で送る最後の手紙になるのかもしれません。

記念すべき旅立ちを祝福する気持ちと同時に、少し寂しさも感じています。
これまでMはわたしの憧れで、いつも近くにいながらちょっと見上げるような気持でいました。(身長の話ではない)
そんなMとの偶然の共通点が "K" という同じ苗字であるということでした。
わたしは密かにその事実を気に入っていました。
送ってくれた手紙であなたの苗字が変わってしまうことを改めて知り、ほんの少し、切なくなるのでした。
だから、その切なさを感じさせなくなるくらい、幸せになってほしいです。本当に、おめでとう。
結婚式、よんでください。

自由を手に新しい世界に羽ばたこうとするMの手紙は、藤井風の "帰ろう" を彷彿とさせました。
いつも音楽ネタでごめんなさい。
脳みそが不随意のミュージックプレーヤーになることはもう常なのです。

けっこう前から、沙也加にはもっといい仕事があるよ!とMから言われていました。
まもなく入社2年目を迎えようとし、新卒も入ってきた今、わたしはなぜか選択肢にもなかった起業をうすらぼんやり考えはじめました。
特にこれ、というものがあるわけではありません。
でも何か、自己発信を望んでいるような気がしています。
ただし、わたしはトップに立つ器がないので、あくまで誰かにつきたいとも思っています。
専務くらいがいいです。(専務とは)
わがままで仕事は成り立ちませんが、今のわたしには手放すことを恐れず自由に生きようとするあなたの姿は、どうしても輝いて見えるのです。

最近は小説を読むことがブームです。
そこをきっかけに何かはじめてみてもいいかもな。

いろんなことが変わっても、Mは変わらずにいてください。
新しい宛先にお手紙が出せるのを楽しみにしています。
Good luck.

沙也加

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