今夜、鯨の前で出逢えたなら
・獅子座満月/WOLF MOON
顔も知らない、名前も分からない、
話したこともない
ただ存在だけを知っている
あなたに、ずっと恋をして来た
それは子供の頃
あなたに気がついて以来、
ずっと、あなただけを想ってきた
あなたは不意に訪れる
私だけに分かるサイン
夜風が運んできた
あなたの吐息、口ずさむメロディ
今夜も
夜空にマゼンタを流す
私の宇宙にだけ、染まり、溶け合う色
シリウスが震える頃に
鼻を掠めた春の便り
きっと、あなたの生まれた季節
声も知らない、どんな顔で微笑み、
どんな事に切なくなるのか、
私はまだ知らない、けれど
夢のなかに幾度か
現れたあなたは、まるで愛そのものだった
西日を受け、穏やかに坐り
それは、思わず泣いてしまいたくなるほど
優しく、笑ってくれていた
私の左胸が鈍い痛みを発する時
どこかであなたが何かを感じている
いつか、いつかを、信じている
もしも、本当にあなたなら
私はあなたを優しく抱きしめたい
それは、もう私の夢に現れたあなたではないけれど、
いつだって
あなた以上に、この氣持ちを想う人は
いなかった
例えば、そこに私が居られなくても
どうか幸せに、生き抜いて
月にひどく怯えていた時期がある
目を合わせられなかった
それはあなただと気がついていたから
そこでなら時間の制限は外される
だから、いつのあなたにもアクセスできる
あなたはいつだって優しく
私を見つめて、微笑む
一度も会えたことはないけれど
あなたは私の大切なひと
私はあなたの幸せを祈っている
それはもう遠い過去
雪の中、
いまの私と同じくらいの歳のあなたが
楽しそうに傘をふる
それはもう遠く、
その姿が脳裏を掠める瞬間、
私の心はいつもキュっと泣く
いつか、答え合わせの瞬間
まだ間に合うこと
あなたが来て、私の隣に座る
すべてが繋がる
その瞬間の訪れを信じている
次の春にでも
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