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1990年代のアルファレコード後期の(黒)歴史:Alfa In The '90sシリーズ、あるいはSPINレーベルについて(2)

ということで、前回に引き続き、SPINレーベルの関連作品をさらに掘り進んでみる。

In The '90sの派生作

前回の記事の通り、In The ’90sは全部で12作(+コンピ)がリリースされている。そして、立花ハジメのブックレットについてきたカタログには、次回作としてTamori In The '90sがアナウンスされていたが、実現には至らなかった。他にも派生した作品がいくつかある。そのあたりを紹介してみよう。

YMO*, Haruo Togashi, TF Production – Alfa In The House

先に紹介しておかないとならない1枚。まだSPINができる前にプロモ用に作られたYMO In The ’90sのプロモ盤。A面はYMO In The '90sなのだが、B面にはTF Productionと富樫春生の作品が収められている。TF Productionは福富幸宏と寺田康彦によるハウスユニット。富樫は近藤等則のIMAにも参加してる名うてのキーボードプレーヤー。富樫はちょうどALFAからParty Animalというアルバムをリリースしており、そのアルバムからの採録曲。
TF Productionの曲はなんと、おどるポンポコリンのハウスカバー。もともとシングルCDで90年の11月28日にリリースされており、オリジナルからわずか半年程度でリリースされてることになる。当時のフットワークの軽さはすごい。曲の出来は 当時の国産ハウスにあった浮遊感のあるハウスビートにダルめな女性ボーカルがのっかる、ジャパニーズハウスのアーリーロストジェムといった感じ(笑)

TF Production – Kayoh-kyoku No Club Mix

そして、そのTF Productionが91年5月21日にリリースしたのがこのKayoh-kyoku No Club Mix。つまり歌謡曲のクラブミックスですね。収録曲は

1a Koi No Dial 6700(恋のダイヤル6700)
1b Yoroshiku Aishu(よろしく哀愁)
1c Nagisa No Shindbad(渚のシンドバッド)
1d Kikenna Futari(危険なふたり)
1e Dounimo Tomaranai(どうにもとまらない)

つまり70年代の歌謡曲ですね。TF Productionのアーリィジャパニーズハウスなビートの上でメガミックス的に歌謡曲のメロディが入る、まああの時代っぽい音楽。歌ってるのはYukari Inoue, Chikako, Hideroの3人。女性2名は誰かは謎だが、男性はおねぇタレントの元祖の一人、日出郎。これは歌声を聞いたら、割と一発でわかる。「よろしく哀愁」「危険なふたり」そして「どうにもとまらない」を若くも艶っぽい声で歌ってる。日出郎といえば「燃えろバルセロナ」(今、調べたらこの曲も発売はALFAだった。これはおそらくユーロビート周りのライセンスの兼ね合いだろう)なのだが、こっちの方が時期的には早い。筆者のツイートにご本人からレスをいただいたが、どうやらこれがCDデビューだったそうな。また途中途中のブレイクで入るラップはBANANA ICEとクレジットがあるが、これは下町兄弟の人かな。

Something Wonderful – Laura Palmer's Theme - Twin Peaks

有名曲のカバー/リミックスという意味ではここで言及しても良いだろう。
立花ハジメのリミックスがリリースされた後、92年7月21日にSPINからリリースされたのが、このSomething WonderfulのEP。Something Wonderfulは当時、日本のアンビエントテクノシーンの気鋭のアーティストKay Nakayamaによるプロジェクト。本作は細野がプロデュースしている。軽く調べてみた限り、Something Wonderfulのメジャーデビュー曲ってこれになるんだろうか。タイトルの通り、Twin Peaksのテーマのカバー。バージョン違い3曲とSomething Wonderfulのオリジナル曲、おそらく、Twin Peaksからインスパイアされたものが1曲収録されている。Twin Peaksのテーマのカバーは当時のアンビエントテクノと映画音楽をうまく融合していてなかなか良い。とはいえ、これ、映画のローラパーマー最期の7日間が同年の5月公開だったので、まあ、便乗企画ではある。

Hiroshi Sato Rearranged By Gary Katz – Prosumer

Spinの中でもあまり注目度は高くない1枚。92年11月21日にリリース。awakeningがシティポップの名盤として有名な佐藤博の作品を、Steely Danの仕事で有名なGary Katzがリアレンジというコンピ。これもIn The '90sで出すつもりだったのかなあ。ただ、アルバムのライナーには次作をGary Katzプロデュースで作るとあるので、その前哨戦という扱いなのかも。どうやら実現しなかったみたいだけど。フルアルバムサイズでリアレンジというつくりだが、正直、今の耳に耐えるかと言ったら微妙。80年代のポップスって感じで、かなり音が古い。当時はカッコよかったとは思うがね。awakeningからの曲が入ってれば、また現在の評価も違うのかもしれないが残念ながら入ってない。

Tamori – Tamori's Dream Tack>head Remix

そして、In The '90sシリーズとは別枠で、1993年12月21日にリリースされたのがこのTamori’s Dream Tack>Head Remixだ。同時期にTack>Headの作品が何作かリリースされており、その関連で蔵出し的に発売された模様。
リミキサーのTack>HeadはAdrian Sherwoodも参加するOn-Uのダブ・ファンクバンド。つまり、Adrian Sherwoodは自身の名義、On-U Sound名義、Tack>Head名義の3つでこの企画にかかわったことになる。
真っ青な1枚絵のCGのようなジャケにデザインもへったくれもないタイトル。ジャケットにはデザイナーのクレジットはない。
ダビィでちょっとハウスが入ってるトラックにタモリの声が滑らかに入ってくるというなかなかに面白い作品なんだが、なぜ蔵出しになったのだろうか。3曲目にボーナストラックのように収録されている「Waking Up To The Beat Of The Drum」がケチャのようなポリネシアングルーブにいつの間にかタモリの声が紛れ込むというレフトフィールドなDJセットで使えそうな曲。

その他の国内アーティスト

いずれも残念ながら未入手。

CHAVA

海外のポップスのハウスカバーをメガミックス形式でやってたらしい。確認した限りでは3枚程度シングルをリリース。Discogsには2枚しか載ってない。

10th Street 2nd

中川勝彦(中川翔子のお父さん)がヴォーカルのダンスミュージックプロジェクトらしい。2枚CDシングルがリリースされているが、Discogsにはなぜかプロモのアナログ1枚のみ。

木戸紅男&オリエンタル・ギャング・スターズ

おそらくはキッドクレオール&ココナッツをパロディにして、ファンカラティーナで歌謡曲をカバーするというコンセプトと思われる。シングル1枚のみ。

ということで、次回、YMOとスネークマンショーを紹介して終わりにします。

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