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文学あるデザイナーへのヒント

2018年9月29日と30日、在学中の東洋美術学校の有志チームとしてこちらのワークショップに参加しました。

台風が差し迫っていたため当日は短縮スケジュールで進められました。1日目は基本的にアイデアソン、その日の夕方からハッカソンがスタートし、2日目の昼に発表という形。実際のプロトタイピングには5時間しかかけられなかったけれど、それはそれ、このスピード感の中で作業出来たのはいい経験となりました。

テーマである「10年後の未来の交通環境におけるリスク」を「自律走行が当たり前になった社会で車を制御する楽しみが失われること」に設定し、その解決策として「KURUMATCH(クルマッチ)」という車体搭載のコンシェルジュ・アプリケーションを打ち出しました。

全体的な俯瞰については、今回アドバイザー的な立ち位置にいて下さった中村先生のnote(https://note.mu/room831/n/n19a9d61ed6d6)をご覧下さい。

6月ごろ声を掛けていただいてから当日までコンスタントに準備を行っていただけに思い入れが強く、また自分の将来を強く意識するワークショップでした。

入学の経緯

私は東洋美術学校夜間部グラフィックデザイン科の学生ですが、同時に早稲田大学の学生でもあります。大学入学直後から自分でデザインの勉強を続けており、その中で「デザイナーの仕事はビジュアル以外の領域にもある」という問題意識を持ちました。ちゃんと勉強してデザインを生涯の仕事にしたい、そんな思いから紆余曲折を経て今年の4月に入学しました。

チームの「隙間」を見つけよう

さて、ワークショップの話にもどります。

私がワークショップの事前準備から当日に至るまでやった仕事は以下の通り。

①身体感覚を伴う実地調査 ②コンセプトの言語化、伝達

①身体感覚を伴う実地調査とは、自動車の運転です。普段は乗りもしないのに、このワークショップのために2回公道を走りました。というのは、チーム内で免許を持っていてレンタカーやディーラーでの試乗が出来る年数経っているのが私だけだったからです。

未来を考えるという漠とした行為に確かなリアリティを与えるのは身体感覚だと考えたので、積極的に体験し、その感覚をチームに共有しました。

この経験から、チームの皆に出来て私に出来ないことがあるように、私だけがチームに貢献できる場所があるということに気づきました。

チーム・サービスのための青写真をつくる

②コンセプトの言語化、伝達とは、主にコンセプト文章(5000字越え)の作成やプレゼンの構成に加えて実際の発表です。ハッカソンと言いながら、私はビジュアル面にはノータッチです。そうしたのには2つ理由があります。

まず、短縮スケジュールになってしまったこと。今回会場に持ち込んだのは学校からお借りしたマシンで作業に手間取ることは必至、またチームのメンバーはハードなスケジュールで課題をこなす昼間部の皆さんでした。限られた時間で量・質の両方を求めるならば、お任せしたほうが良いという判断でした。

もう一つは、1日目に「きちんと準備して臨むプレゼンは得意だけど、アドリブは苦手」と聞いたからでした。いっぽうの私は4年間塾講師のアルバイトをしていたので、アドリブトークもタイムマネジメントも得意です。ここで自分が勝負できそうな土俵で戦おうと決めました。

なにより、「KURUMATCH」は一見するとミーハーで「いかにも未来」なサービスです。しかし、その根底には「事故のような『有形のリスク』に対する、人間性の喪失や心の死のような『無形のリスク』へのリスクヘッジ」というコンセプトがありました。

チームの皆さんにはこのコンセプトを礎にプロトタイプに臨んでほしかったし、またそこで出来上がるプロトタイプをコンセプトと一緒に届けたいと強く思いました。

文学あるデザイナーを目指して

2日目の13:00に作業が終了し、5分間のプレゼンに入りました。審査員の方からの質疑応答を終えてタッチ・アンド・トライの時間になります。『KURUMATCH』のUIやティザーサイトを表示したMacBookを設営していたとき、チームのメンバーから「羽賀さんの書いたコンセプト文も置きましょう。」「審査員のかたに是非読んでもらいたいです。」と言ってもらえました。

その時、「あ、これだ!」と思いました。デザインの勉強をしながら「デザイナーであるからにはまず造形力がなければいけない、頭でっかちのままではいけない。」と考えていましたが、チームの仕事においてコンセプトを言語化したり、言葉を使って方向性を明確に示すことは大切だと気付くことが出来ました。

言葉とビジュアルの両方に軸足を置くことが出来るデザイナー……いまは「文学あるデザイナー」と呼ぶことにします。10年後「KURUMATCH」が実現するかもしれない社会で、文学あるデザイナーとして仕事ができるようになっていると良いなと思います。

最後に、楽しく貴重な機会を与えてくださいました主催のアクサダイレクトさん、運営スタッフさん、誘ってくださった先生、なにより一緒に走ってくれたチームの皆さん、ありがとうございました。

【追記】
上記リンク先にあります通り、AXA DIRECT賞をいただきました。あらためまして関係者の皆さま、ありがとうございました。お恥ずかしい話、こうして表彰されるのは記憶にある限り初めてのことです。今後も気を引き締めてデザインに取り組みたいと思います。
2018年10月31日

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