微動だにしない男との接見記録⑧ ~事件について2~
被告人I 無職 事件番号:令和2年(あ)第●5●号
強盗殺人・傷害・窃盗・覚せい剤取締法違反
検察官求刑:無期懲役
現在上告棄却決定に対する異議申し立て中
※画像はwikipediaより
「まずそもそも黙秘していたのは、まあ裁判の通りで一つはAの経済的支援、二つ目はAの圧力、三つ目は日本の有罪率の高さからくる諦めということですか?」
「そうですね」
「一つ目は身代わりになるかわりにIさんの家族にいくらかお金を払うと?」
「そうですね。それと最初は強盗殺人で起訴されたのを強盗致死に落とすために鑑定人に鑑定してもらうための費用ですね。まあその他もろもろありますが」
「二つ目のAさんの圧力というのが最初にこの事件を自白したBさんの家族や親せきに平穏な生活などさせないというような文言が見えるように線ひかれてた手紙とかのことですか?」
「そうですね」
「三つ目の部分に関しては?」
「日本の有罪率の高さから考えて起訴されたらほぼ有罪じゃないですか。だからその諦めですね。あと裁判でも証言してるんですが自白するときに刑事さん呼んで自白したんですがそのあとに、「仮の話ですけど本当は運転者は自分じゃないと今から言ったらどうなりますか?」と刑事さんに聞いたんですよ」
「そしたらその刑事さんは何といったんですか?」
「今更(調書作った後に)そんなこと言ってももう駄目だよと事前共謀があったとかなんとか言って三人とも強盗殺人になるのが落ちだねと言われました・・・」
「それならIさんたちの世界ではIさんだけ犠牲になって他の二人を助けるのが正義だと」
「そうですね」
「手紙についても聞かせてください。時間も限られてるんで気になった部分を聞きますがそもそもなんで「車泥棒をやって強盗殺人になった自分に誰が手を差し伸べてくれるのか」、「無期や死刑はこわい」、「間違っても人を殺めてしまった私」、「長期刑は避けられない私」とかなんでこんな強盗殺人を疑われるような手紙送ったんですか?」
「一度自白した以上強盗殺人犯になりきるしかなかったんですよね・・・」
「その一方で「B君やCさんもなんでYさん(Iの名前)が強盗殺人で捕まってるかわからない」、「薬飲んで意識が曖昧になってるんで本当はAさんが運転していたといいますよ」とかいう手紙もだしてる?」
「そうですね。ただ手紙のことで言えばAはすべての手紙を出してるわけじゃないですよ。自分で選別して控訴審前に検察官に提出してますから」
「Aさんは全体の何%くらいの手紙を提出してるんですか?」
「半分位だと思います」
「えっ・・・逆にまだ提出されてない手紙がそんなにあるんですか」
「まあ事件とは関係ない手紙も相当ありますけどね」
「それとそもそもなんですけど何でAさんは控訴審でIさんの不利になるような手紙を提出したんですか?凄く不謹慎ですがIさんが本当は犯人だとしても被害者の方のことはありますが仲間内ではIさんが強盗殺人が無罪になることはいいことのように思うんですが・・・」
「それは自分も気になっていて公判ではというか表向きはAは一事不再理であり得ないんですがIが無罪になったら自分が強盗殺人になると検察官に脅されたと。でもこれは共通の友人から聞いたんですけどこの手紙を最初に証拠として裁判に提出したのは自分なんですね。手紙というのは送った人間と受け取った人間の信書だとそれを第三者に見せるのは信義に反するとだから自分も第三者である検察官に提出したと」
「なるほど。それで上告審に提出できるような新しい手紙なんかはあるんですか?」
「実は第二次控訴審の段階で入手した手紙はあるんですよ」
「それはどういう手紙ですか?」
「最初のほうにAに送った手紙でしてなんで自分が強盗殺人なんですか?わけわからないですよというような手紙ですね」
「ただ第二次控訴審では新たに提出する手紙はないとのことでしたが・・・」
「そうですね。この手紙はS弁護人が持ってるんですけど証拠としては弱いねと・・・」
「話戻りますが上告審では有罪覆すための証拠集めとしてはどういう動きをしてるんですか?」
「前にも話したかもしれませんがAとBの説得と新しい手紙を探してるところです」
「状況としてはどうですか?」
「Aは知人を介して連絡を取ることはできるんですがBは連絡も取れないですね・・・差し戻し審の内容から考えるとBの方が本当のこと話してくれると思うんですが・・・」
「Bさんと連絡取れないというのは痛いですね」
「ただ証拠能力としてはAが本当のこと言ってくれたほうがいいんですけどね」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ。これは弁護人の先生から聞いたんですけど自分は直接はAが対立当事者じゃないですか。つまり自分はAが運転していたといっててAは自分が運転していると証言してる、そのAが本当は自分が運転してたと証言するほうがいいようです」
「なかなか厳しい?」
「実はAが出所してから一度だけ接見に来たんですよ?」
「えっ、東京拘置所に直接Iさんに会いに来たんですか?」
「はい一度だけ」
「そこでの会話というのは?」
「先輩本当のこと話してくださいよといいました」
「そしたら?」
「いずれにしても裁判と違うこと証言したら偽証罪になるだろと」
「偽証罪はかなり重いですからね・・・」
「そうなんですよ。それで二の足を踏んでるというか」
「それ以来この件については取り合ってくれないと?」
「友人知人がAと話そうとしても取り合ってくれないようですね」
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