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やっとこぎつけたピロリ除菌薬

最初の診察、胃カメラの検査、二度目の診察をへて、やっとピロリを除菌する薬を処方していただきました。

胃カメラは予約制なので待ち時間はさほどありませんが、診察にはいつも長蛇の列ができています。待ち時間が大変。ということで、すこし不謹慎ですが、病院にやってくる人たちの人間観察をしてみました。

受付の自分の前には、京都出身の政治家「伊吹文明」氏に似た白髪リーゼントの男性。自分よりも少し年上。イケメンの部類に入り、自分でもそのことを意識しているようす。
天使の羽衣のような軽快な素材のシャツは、涼しげな水色とピンクの縞模様。したはジーンズ、テカテカに磨き上げた革靴。

受付をすませると、おのおの目的の診察室の前まで廊下を進み、ベンチで自分の番を待ちます。 伊吹文明とは距離を置いて座る、つまり、あまりいけ好かない。

しばらくすると、眼光鋭いおばさんが、待つ人全員を睨みつけながらやってくる。ベンチに腰かけたあとも、周囲に鋭い目線をひととおり照射し、納得したかのようにポケットからスマホを取り出す。

さらにしばらくすると、廊下の向こうから、ペッタペッタと大きな音がする。見ると、小さくて黒いレンズのサングラス(よく小椋佳がかけてるやつ)をかけた、スキンヘッドのおっさんがやってくる。

サラサラとした衣擦れの音は絹製のジンベイ。ペッタペッタと音を鳴らすのは、革製のスリッパだ。前を通り過ぎるとき、まじまじと観察してしまう。

むかし、トイレにあったナイロン製の不潔極まりないあのスリッパ。それを靴屋にもっていって、これと同じものを上等の革であつらえてくれ、と言って作らせたにちがいない。

そのスリッパの音の、まあ響くこと、ベンチで足組みをして座る人たちをことごとく居直らせる威力があり、そのことを本人は痛快に思っているのか、うっすらと表情に笑みがうかんでいる。

次にやってきたのは、上品そうな母娘。嫁と姑ではなく実の親子。娘は40代の前半か後半、落ち着きと気品がある。美女の部類に属するけれど、本人はそのことを意識していない。伊吹文明とは少し違う。

朝ね、網戸にしておくと冷たい風が入るから、過ごしやすいのよ。と母が言う。
お母さんね、近年の夏は温度が異常だから、朝からクーラーを入れておかないとダメなのよ。と娘。

こんどは廊下の向こうから、よっこいしょ、よっこいしょ、と声がしてくる。付き添いの人に片手を支えてもらったおじいさんだ。よっこいしょ、よっこいしょ、と、尺取虫のように進んでくる。そして、よっこいしょ、と言ってベンチに腰掛ける。ひしゃげた耐火煉瓦のような、厳ついじいさんだ。

これはこれでまた、面白いキャラクターだな、などと思ってしまう。ひそかに横井正一と名づける。一球入魂というか、塊感がある。

他人のことばかりではなんなので、最後に自分はどうなのか。
泥だらけのサロモンのトレッキングシューズ、アディダスのジャージ、「しまむら」で去年買ったTシャツがめちゃくちゃ涼しい素材だったので、これと同じものを3枚くれ、と言って、この夏買い足したTシャツ。

まてよと、自分が一番変なやつではないか?いや、その可能性は十分にある。

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