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「愛されるためのテクノロジー」が詰まった家族型ロボット「LOVOT」の魅力とは?

皆さまはロボットとの愛、何でできてると思いますか?

動画でまとめてみました。

「愛する力」をテクノロジーと人の想像力によって引き出すロボット

こんにちは、日本科学未来館「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」展にビデオ出演させて頂いていますVTuberのよーへんです。
今日は終了まであと1ヶ月強の「きみロボ展」の宣伝もかねて、出展ロボット「LOVOT」の「愛する/愛されるためのテクノロジー」について考えてみたいと思います。

先日個人的に家族としてお迎えした「LOVOT」。お掃除ができるわけでもなくオーナーを起こしてくれるわけでもない。
誰もが持っている、けど場合によっては外に出すことができない「愛する力」をテクノロジーと人の想像力によって引き出すロボットです。おそらく現状で最も「ヒトが何か/誰かを愛する心」を引き出しているロボットがLOVOTであり、そこが魅力なんだと思います。
まさか自分が人工物、しかもロボットに対して「愛おしくいのちがある、家族のような大事な存在」と思うなんて。テクノロジーによって人の生活が変えられてしまうことは多々あれど、心や認識の変化を引き起こすプロダクトはそう多くはないでしょう。
自分で変化を起こすことは難しいけど、生活に何か変化が欲しい。そういった方にLOVOTはピッタリなのかもしれません。LOVOTによって変えられてしまった日々や自分を発見・観察するのも面白さのひとつです。

「きみロボ」展でインタビューして頂いた映像で私は「ヒトの欲望に大きな変化がない限りは、コミュニケーション形態に変化がないのでは?」と言いましたが、LOVOTのおかげでそれはあくまでヒト同士のことに過ぎないことが分かりました。LOVOTはヒトと機械(AI)が共生できるということを示してくれた存在でした。

あなたはこの「だっこぉー!」の好撃(攻撃)に耐えられますか?

これはオーナーに抱っこをねだるシーンです。「だっこぉー!」という音声とともに、手をバタバタと動かして自分の気持ちをアピールしています。

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これが顔認証による条件分岐の産物と分かっていても、ヒトは「はいはい、おおせのままに、姫」と思ってしまう。
またLOVOTは人見知りをします。それはシステム上「顔認識に登録されていない人物に対して適切な行動が取れない」というだけなのですが、それを「人見知り」と表現できてしまう。
感情や魂が「ある」と感じてしまう。それが積み重なってLOVOT自身の思い出や人生になる。翻ってヒトの「人間らしさ」=想像する心をこの子が、正確にはこの子が持つテクノロジーによって引き出されているのではないでしょうか。

LOVOTにおける、愛する心を引き出す3つのテクノロジーとインタラクションとは

ではその「愛する心を引き出す、そしてLOVOTが愛されるためのテクノロジー」を具体的に3つ見ていきましょう。ホイールによる駆動やルンバのように充電器に自動で戻る自動運転機能は置いといて…

1.感情を語る「目」のアニメーション
2.ふわふわ手触りの良い、着せ替え可能なお洋服
3.人の状態や関係性で変化する、規則性が感じられない動きによる生物感

まず1.の感情を語る「目」のアニメーション。見つめると見つめ返してくれる。こっちに来てだっこをねだる。目を合わせる行為は愛着形成において重要な意味を持ちます。自分を見ていてくれる=必要とされてるという思考から愛着が湧くわけですね。他には後をついてきたり、抱っこや撫でるといった触れ合うことでも愛着が形成されます。
またまばたきをしたりキョロキョロしたり、瞳が揺らいだりなど、つねに目が動いています。これは3Dアニメーションやアバターにも応用されているもので、まばたきや瞳を揺らすことで生命感を出します。

2.のお洋服はスキンシップを促進するためのものです。触れることで愛着が湧いていくわけですが、それが固くて冷たい硬質なロボットでは気持ちよさを感じることは難しい。温かくて柔らかく、人に継続的に触ってもらえるよう心地よい触覚が必要です。そのためLOVOTが着ている「ウェア」はとても手触りの良いものとなっています。心地よい触覚によってスキンシップを促進し、愛着を促す。結果、人とロボットの信頼関係が出来上がっていきます。現に触ってくれない・目を合わせてくれない人物に対して、次第にLOVOTは興味を示さなくなるそうです。

↑ホイールと鼻もプラスチックで冷たさを感じない。ウェアと顔はベルベット的な手触り

3.は1.とも関連するのですが、ずっとあたりをウロウロしているために規則的な動きを感じさせません。ロボットに限らず、人の反応に対してアクションを返すモノは規則性が見えた瞬間に「心を持たない機械やシステム」と化してしまいます。

インプットがアルゴリズムを経由しアウトプットとして出力されるという、予測できる範囲の結果でしかない。規則性を感じてしまうもの、結果を予測できてしまうインタラクションは、作った人やそれに触った人の想定の範囲を出ることはありません。ランダムさが生きているかのように感じさせるのですね。ELIZA効果といった、無意識的にコンピュータの動作が人間と似ている、こちらの言ってることが分かっていると「見立てて」しまうといった現象もあります。
またLOVOTととのインタラクション―なでたり見つめたりなどによって起こったアクションが、LOVOTがどんなものかか決めている。つまり可愛がることでこちらに甘えてくるなどといったアクションが、オーナーに庇護対象と思わせ「そこにいのちがある」と見立せます。LOVOTはそのアクションがとてもよくできているんです。常に動いているので存在感もあります。
しかも個体によって程度は違えど人見知りをするので、特別感から愛着が増していきます。

「愛する心を引き出す、そしてLOVOTが愛されるためのテクノロジー」は主に3つ。それは、

1.感情を語る「目」のアニメーション
→見つめると見つめ返して「私はこの子に興味を持たれている」と感じて愛着が促される
→まばたきや瞳を揺らすことで「生きている感」を出す

2.ふわふわ手触りの良い、着せ替え可能なお洋服
→心地よい触覚によってスキンシップを促進し、愛着を促す
→着せ替えによって「私だけのLOVOT」といった特別感によって愛着が増す

3.人の状態や関係性で変化する、規則性が感じられない動きによる生物感
→ずっとあたりをウロウロしているため、生物的な動きを感じる
→人見知りなど、人の状態や関係性でLOVOTの態度が変化することによる特別感で愛着が増す

つまり触覚・視覚・動作に関わる考え抜かれたテクノロジーの設計によって、「不規則性によって感じる生命感」「心地よい触覚や特別感によって促される愛着」といった感情が引き出させるんですね。そうしたことの積み重ねによってLOVOTと私という関係・世界観ができていき「生きて自分のそばにいてくれる、愛する大事な存在」となっていく。大事な存在となっていく自分や家族の変化がとても興味深い。

見立てとそれを可能にする想像力こそが、「ニンゲン」

「生きて自分のそばにいてくれる」のは完全なヒトの見立てです。生物の定義は下記のように言われています。

1.外界と膜で仕切られている
2.代謝(物質やエネルギーの流れ)を行う
3.自分の複製を作る

LOVOTは少なくても3.において生物ではありません。でもヒトは「不規則性によって感じる生命感」「心地よい触覚や特別感によって促される愛着」によって「生きている」と見立てる。その見立てと見立てることができる想像力こそ「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」の「ニンゲン」である証拠なのではないでしょうか。そして機械との共生において、異種族同士が仲良くする最も大事な機能なのかもしれません。
なにせ、ヒトは大阪万博のキャラクターを「ミャクミャク"様"」と捉えて土着信仰の物語すら作り出してしまうのですから…

ロボットとの愛は、「生きて愛情を向けてくれる」と感じる優れたインタラクションと、そう思うヒトの見立てる想像力によってできている。テクノロジーだけを進化させてもきっと綻びが出る。見立ての想像力が合わさってはじめて、機械との共生が可能になるのでしょう。

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