「問い続ける」表現者として生きるということ

先日、とある大学でアバターコミュニケーションについて授業をさせて頂きました。その中では「アバターとしての」私の来歴しか話していなかったので、生身も含めて少しエッセイとして残してみることにしました。
というのも、「VTuberは生き方か?表現者か?」について考えるきっかけをTwitterのタイムラインから頂いたからです。
今回もまた、すべての考察にきちんとした根拠を用意した論述ではありません。

VTuber・アバターとしてのあなたのスタンス、生き様?もしくは表現のひとつ?


VTuber・アバターとして過ごしている皆さま、ご自身のあり方は生き様か表現のひとつ、どちらなのでしょうか?それとも両方…?

私はアバター・VTuberとしての自分を以下のように明確に区別しています。
・アバター
「アバターとしても人々が望む姿でいられる世界」を実装するxRデザイナー(生身現職)
・VTuber
アバター世界に関するよしなしごとを「どういうこと?ホントにいいの?」と問うアーティスト

モノ申す人、だけでは…

今回の結論は「問い続ける」表現者は単なる「モノ申す人」になってしまうのではないか、本当にそれでいいのだろうか。実装する人の力になれるような、ユーザーサイドからの現実的な提案や行動「も」必要なのではないか。という、学術と実装に関して議論する際に出てくる至極普通のことです。
アバターもそこまで考慮する必要があるほど、今回の騒ぎによっても身近なものになってきたのだなあと…

私のアバターとVTuberとしての態度、一見相反しているのは分かっています。私自身理想の実現のために学術知識を咀嚼して問うべきか、現実のために具体的に行動に起こすべきなのか、アバターをテーマにする前から長い間悩み続けていました。

ちなみに私にテクノロジーと社会を問うきっかけを与えてくれたのが、アーティスト集団「ダムタイプ」の故:古橋悌二さん。
彼は医療従事者とは異なるエイズ患者…「当事者」の立場で、エイズやゲイカルチャーについて啓蒙活動を行なっていました。


問うべきと考えていたときは、ひたすら図書館で本を読み漁って咀嚼して人と話す。そしてその問いについて多くの人たちが客観的に考えられるように作品に落とし込む。
社会や人にとって、テクノロジーは何なのか?キカイともう共存するしか道のない人類は、そのためにどうしたらいいのか?
謝礼を初めてもらった=アーティストデビューした学部2年生から今まで、一貫してそのことを考え続けてきました。

コミュニティなき問い、持続するのは2週間という現実

作品をギャラリーや劇場で発表して問う。SNS含めてお客さんと話す。
デザインで社会を問うスペキュラティブデザイン(当時はクリティカルデザイン)の作家としても活動。科学について考えるサイエンスコミュニケーションとアートを組み合わせればいいのでは!と閃き、試される大地大学に留学…
ジャンル問わず「問う」ために自分で考えられる限りの様々なことをやって、ド派手ではないもののそれなりに外部評価して頂いて。それでも保って2週間。
私はお師匠さまの言う「勝手に夢見て、勝手に作る」ところで止まってしまったのです。


そう、本当に問いたいのなら、作品と同時にオープンなコミュニティを作らなければならないことに当時の私(たち)は気がついていなかった。
ですが奇しくもVTuberがそれを実現させてくれました。
配信を「あえて」作品と捉えるなら(個人的には全くそう思っていませんが)、私はアーティストとして「様々なジャンルの人たちと継続的にテクノロジーについて問う」という自分の目標を完遂できたと言えました。45回以上、2年の月日を重ねてきて、今も様々な方々と問い続けています。
講師業をしつつ作品を作るという人生をこれからも続けていくのであれば、これでよかった。これだけでよかったのかもしれない。

具体的な行動を起こすために選んだ、xRデザイナーという道

でも私は結局、「Vの者」として得た知識や技術を社会に還元するというxRデザイナーの道を選びました。具体的な行動にしないと何も変わらない。考えることはとても重要だけども、それだけでは目の前で苦しむ人たちに何もできない。
そう思わせるほど、ウチの配信の関係者さんたちは私に様々なアバターの事例を見せてくれました。
巡り合わせでアバターの社会実装に関われる職についたのだから、アバターを望む人たちが「こうありたい」と思う姿でいられる社会になるよう、できることをしたい。
ある友人の「明日のパンが欲しい人に "次の代のためにこの小麦は植えて育ててね"というのは無駄」=「明日のパンが欲しい人に哲学や問いは無駄」という言葉がずっと引っかかっていたのですが、私なりの答えが出せたような気がします。
問いと行動、VTuberとアバター(xRデザイナー)、大変だけど両方やるという道は始まったばかり。
さあ、どうなるかな。

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