見出し画像

短編小説『面倒なんて言ってたって』

「恋愛とか面倒って言ってなかったっけ?お前」
「言った…言ったけどさ、うん。誰か好きになるって理屈じゃねえじゃん」
「うわ。恥ずいな、今の」
「恥ず……忘れて!コーヒー奢るからさ。な!」


今日の仕事帰り、後輩に告白した。その場で返事はもらえなかった。

1人ではいられなくて、カフェに親友のカズオを呼んだ。2人共お酒はあまり好きではない。


奢るためのコーヒーを買いに、再びレジに来ている。なんてザマだ。

でもまあ、事実なんだよな。理屈じゃない。



「はいよ」
「おぅ、サンキュー」

温かいコーヒーを何杯飲もうが、落ち着かない。

「でもさ、正直羨ましいよ。恋愛とか片思いとかさ。俺、1人でいいかなあって感じだし」
「俺もそのつもりだったんだけどさ。人生分からんもんよ。出会いなんて急に来る」

そうカズオに言いながら、俺って心底あの子のこと好きだって気づいて、また恥ずかしくなった。

面倒なんて言っても、俺、たぶん面倒なの好きなんだよ。



※こちらのスピンオフとして、書きました。




サポートしてくださった分は、4コマに必要な文房具(ペン・コピック等)やコーヒー代に使います。何より、noteを続けるモチベーションが急激に上がります。