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【短編小説】光と影

黒く、ただ暗い空。コーヒーの中にいるみたいだ。影の上に立つと、余計にコーヒーの雰囲気が増す。

いっそのこと、僕を飲み込んでほしい。

仕事も家族も世の中も。何もかも嫌だ。すべてを投げ出したい。



自販機の缶コーヒーと目が合う。今の僕ほどコーヒーが似合う人間はいない。

ゴトッと落ちた缶コーヒーを手に取り、「ははっ」とつい声が出た。雑に落ちるなんて、ますます僕のようだ。

「ふふっ。お兄さん、思い出し笑い?」
後ろに誰かいたなんて、気づかなかった。

水色のワンピースを着た女性。職場以外で女性に声をかけられたなんて、何年振りだろう。女性も缶コーヒーを買った。


「見て、あのマンション!斜めのビンゴ揃ってる!」

マンションは5部屋だけ照明がついている。

「お兄さんも私も、何かいいことあるかもね!じゃあね」

一方的に話し、女性は去った。


照明も気づけない僕。ビンゴを見つけた女性。

僕はまだ、見つけ方が下手なのかもしれない。



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