見出し画像

「はたらく」を考えて気づいた、私の願い

世の中にはいろんな仕事がある。

物を作ったり、人と接したり、パソコンで文字を打ったり、実にさまざまだ。人を笑わせる仕事もあるし、動物を守る仕事もあるし、命を助ける仕事もある。


はたらく目的はさまざまだ。

家族を養うため。社会の役に立つため。自分の目的を達成するため。いろんな目的がある。


はたらくという行為は影響を及ぼす。

はたらく人がいて、はたらいた先にたくさんの人や物がある。はたらくとお金が動き、感情が動き、時には世の中が大きく動く。良くも悪くも、大きくも小さくも、影響を及ぼす。


はたらくってなんだろう?
お金を受け取りさえすれば、「はたらく」と呼ぶのだろうか?

私の過去を紐解きながら、はたらくについて考えた。


・ ・ ・


私は、はたらいて15年ほどが経つ。


最初にはたらいたのは、大学生の頃のアルバイトだ。ジーンズやTシャツなど、カジュアルな洋服を売るお店で働いた。

検品作業はとても楽しかった。入荷したばかりのTシャツや靴下をダンボールから出し、検品し、棚に並べる。いち早く新商品を見られたのも、「これ売れそうだね」などとスタッフと話すのも楽しかった。


でも、ジーンズの裾上げがとにかく苦手だった。ミシンを使うと、糸がジーンズの上で大渋滞する。ボビン付近でも糸が絡まるし、ミシン針は数本折った。

あまりにも苦手で、店長を横に猛特訓した。が、それでも糸は絡まった。ゆっくり針を動かし、徐々にスピードを上げたが、どうにも絡まってしまう。「妙な所はないのに、なんでやろうなあ?」と店長も首をかしげた。本当に申し訳ない…。

給料を受け取ったものの、はたして「はたらいた」と呼んでいいものか?大学生ながら、少し悩んだ。


・ ・ ・


巫女さんのアルバイトをしたこともある。


大晦日に何重も服を着込み、いざ初日。
ずらっと多くの人が並び、緊張したのを覚えている。

目の前には大量のおみくじ。


自分で書くのもなんだが…初めてとは思えないほど、私はおみくじを手際よく販売した。

次々とお金を受け取り、「1つお引きください」みたいな言葉をかけながら、おみくじを引く人、お金を準備している人、ただ見ているだけの人などを随時見ていた。

途中で交代した巫女さんから「よくあんなに捌(さば)けましたね…」と感心された。はたらいた初日で褒められたなんて、この日が最初だ。


大晦日と三が日、他にもあと何日か、私は巫女さんになった。しばらくは夜型と朝型の生活を行ったり来たりして、手際よくおみくじやお守りを販売し続けた。

「はたらくって向き不向きがある」と考えたのは、この頃が初めてかもしれない。


・ ・ ・


一時期は派遣社員として、ホテルやコールセンターではたらいた。


派遣社員ははたらく期間が決められている。私は最短で3ヶ月、最長で2年3ヶ月はたらいた。

たいていは繁忙期だけ仕事を任される。ホテルでは1月の繁忙期を見据えて、11月から1月まではたらいた。

ランチ後からディナータイムのキッチンをほぼ1人で任された。お客様は1名くるかどうか…程度。メインの仕事はランチの仕込み、閉店作業だった。時期が時期だったので、大掃除も業務に含まれた。

何ヶ月も滞在している常連客、ビジネスマン、観光客。ホテルにはいろんなお客様が訪れる。

キッチンのそばにはチェックインカウンターがあり、マニュアルでは対応できない仕事を何度か目にした。はたらくには臨機応変さ、柔軟さが必要だと思った。



あるコールセンターは3月から5月まで勤めた。年度末から年度初め。

これまで何度か転職し、ここがもっとも多忙だった。

残業はもはや当たり前。時給制の派遣社員なので、残業した分だけ残業代が出た。預金残高はどんどん増えたが、はたらくのは心底つらかった。


ある日クレーマーにあたり、4時間ほど電話対応した。後半は涙を流しながら対応。電話を切った後トイレでさらに泣いた。席に戻った時、残業していた社員の方が声をかけてくれたのが本当に嬉しかった。

しかし体調を崩し、私は家から出られなくなった。口数が少なくなり、時々激しい頭痛に襲われる。

やがて派遣会社の担当者に退職を申し出て、無事に受理された。


はたらくってなんだろう?


・ ・ ・


『好きなことを仕事に』なんて昨今よく目にする。


でも、私には好きなことが多すぎる。

音楽やラジオを聴いたり、文章を書いたり、イラストや4コマを描いたり、映画を観たり、漫画を読んだり…。こんなのたった一部だ。

どの好きを仕事にすればいいのか、分からない。


ふとしたきっかけで、現在はWebライターの仕事を続けている。ネット記事を書く仕事だ。

知識や趣味が広く浅いことを活かし、ネタ探しにはさほど困らない。お金の量にかかわらず、一定レベル以上の文章を書くように心がけている。

初めて書くジャンルであっても、お褒めの言葉をかけてくださるクライアントが多い。

どうやら、いつの間にか好きが仕事につながっているのかもしれない。


しかし、好きを仕事にするなら、「書きたい!」と思ったことを素直に書きたい。検索結果とか旬の話題とか気にせずに。

これまで6年以上、noteで自由に4コマやエッセイやイラストを載せてきた。好きを仕事にしたいなら、これまで続けたことをそのまま仕事にすればいいのではないか?

でも、何か違う気がするのだ。仕事ではないから、無料であってもコツコツと続けてきたように思う。


はたらくってなんだろう?


・ ・ ・


10年以上前、喫茶店で3年少々はたらいた。
カフェを開くのが夢だった。


勉強会やイベントを開くカフェを作って、人と人をつなげたかった。今でいう、コワーキングスペースに近い。

社会人になって資格取得を目指していた頃、1人で勉強していた。なかなか孤独で、悩み相談できる人がいなかった。また、社会人になって友達を作るのは難しいとも感じていた。

カフェを開いたら『簿記3級を目指している人向けの勉強会』『好きな音楽について語る会』などを開催し、同じ目的を目指す人、友達を作りたい人の役に立ちたい。そう長年考えていた。


喫茶店ではたらいたが、カフェの夢は途絶えた。
現実を知ったのだ。


利益をあげながらカフェ経営するのは、そう簡単ではない。2〜3年以内にカフェの半数が廃業し、10年以上続くのは3割ともいわれる。

ただ美味しいコーヒーを提供するだけ、が私の目的ではなかった。定期的にイベントを開催し、宣伝し、人を集める。

もしカフェを開業しても、うまくいく自信がなかった。今もない。


ただ、今になって『人と人をつなげたい』と考えていたことに深い意味があったのでは?と思う。


・ ・ ・


自分のしたことが何かにつながり、お金を受け取る。

これこそが、はたらくこと…なのかもしれない。「何か」は人間とは限らず、動物や自然や機械の場合もある。


はたらくと、何かの助けや解決や救いにつながり、役に立つ。

身近なところでも、誰かのはたらきを垣間見る。電化製品にはとても助けられているし、冷凍食品は多忙な日の食事を解決しているし、映画や音楽やアニメにはとても救われている。


でも、「何かにつなげよう」「役に立とう」とは特に思わず、はたらく人もいるだろう。お金のため。夢を叶えるため。親のため。はたらく目的はさまざまだ。


私は何のためにはたらいているのだろう?

宝くじで大金を手にしても、はたらき続けるだろうか?



夫は仕事の傍ら、ゲーム開発を続けている。自分が理想とするゲームを作るために、コツコツと開発中だ。

夫に「宝くじで7億当たっても、はたらく?」とたずねた。

「最初は遊ぶと思うけど、たぶん飽きてくる。何にワクワクするか考えたら、やっぱり、ないものを作ることだと思う」と返ってきた。


はたらくことは誰かの役に立ち、お金を受け取ることだという意見は一致した。

「自分を喜ばせるために、ゲーム開発している。そのゲームを誰かが買えば、お金になり、仕事になる」とも話していた。

ゲーム開発は夫自身のためであるが、結果的に誰かの役に立つこともあるだろう。



夫の答えを聞いて無職期間を思い出し、私も似ているなと思った。

ある無職期間中、最初は遊ぶ時間が主だった。でも、だんだんと、受け身の自分、何も生み出さない自分にうずうずして、耐えられなくなったのだ。気がつけば、イラストや手芸、エッセイなど、さまざまなものを手がけた。

宝くじで大金を手にしても、おそらく夫と同じで、ないものを作り続けるのだろう。


はたらくのは誰かのためであり、自分のためでもある…のか?


・ ・ ・


はたらくと、自分と何かがつながり、金銭のやり取りがある。
はたらくと、誰かが救われたり、何かの役に立ったりする。
はたらくと、自分も救われたり、喜んだりする。

はたらいた結果や給与が注目されやすいが、『自分と何かがつながる』ことこそ、はたらくの根幹だと思う。


私がはたらいた先の最終地点は、人であることが多い。お店や神社に訪れた人、コールセンターに問い合わせる人、記事を読んだ人。

カフェを開く夢には『人と人をつなげたい』が根っこにあった。私にとってはたらくとは、自分と第三者をつなげることが大きいのだろう。


これまで、いろんな場所ではたらいた。はたらいて、相手も自分も「良かった」と思えたとき、いい仕事ができたと感じる。

どれほど「ありがとう」に救われたか。

コールセンターで勤務中、売上がなく、対応だけで終わった日もある。でも、年配のお客様から「ここまで調べてくれてありがとうね」と言われ、とても救われたのを今でも覚えている。


給料を受け取れば何をしてもいいなんて、とても思えない。誰かが犠牲になったり、体調を崩したりして良い結果が出たとしても、胸をはって「はたらいた」なんて、私には言えない。


相手も自分も「良かった」と思える仕事をしたい。はたらき、私自身も救われたいのだ。ただ生きるだけではなく、私は何の役に立てるのか、生きる意義を見出したい。


人間の生活は日々進化し続けている。いろんなことが目まぐるしく変わり、数えきれないほど新しい仕事が増えた。

私には何が向いているのか、私がもっとも役に立てるのは何か、答えはまだ出ていない。はたらき、誰かの役に立ったのなら、その答えが見えそうな気がする。

はたらき続け、時には「良かった」と思いながら、答えを見つけたい。



サポートしてくださった分は、4コマに必要な文房具(ペン・コピック等)やコーヒー代に使います。何より、noteを続けるモチベーションが急激に上がります。