Gravedigger: or Last Tourist
『第一分隊、例のモノを確保。付近に異常はないか。オーバー。』
「第三分隊、異常なし。オーバー。」
廃墟の中を進むライトグリーンの対火対爆作業服を着込んだ一団。そのリーダー格と思わしき男は無線機を再び腰のホルダに戻す。
労働から開放されたら、あなたはどうする?
あらゆる生産・サービスがオートメーション化され、完全リサイクルが実現。人々は地方自治体からの給付金をもってその成果物を消費する時代。
人類は、旅への憧れを開放した。
それは金の流れを生む。浮き彫りになったのは地域の魅力による外貨獲得量、すなわち「観光資源埋蔵量」。
文化財、リゾート、名店、B級グルメ商標権、ご当地武将。アクセス手段やその運用施設もしかり。
次第に広がる経済格差。当然、観光資源を奪取せんと考える自治体も現れる。
ユートピアは崩れ、争奪戦だけが残った。もはや人類に観光の余裕などないのに。
『第二分隊、前方に敵性U.R.C.Rを確認。やり過ごし……うわっ!』
耳障りなノイズとともに第二分隊からの通信は途絶した。
『第二分隊、状況報告せよ。第二分隊、応答せよ!』
司令部の通信士ががなるが、答える声はない。想定される状況は一つ。
「周辺警戒!第一分隊との合流を最優先とする!」
第三分隊長は部下へ指示を飛ばす。
「クリア。もう少し先まで調、あっ」
先行していた一人が、一瞬にして首を折られ絶命した。全員がそちらに向き直る。
そこに立つのは戯画化された猫のような姿。巨大な顔には笑顔という名の無表情。
「Uchino muRano Character Robot」略して「U.R.C.R(ゆるきゃら)」。
活動中に“中の人”を殺害、イメージダウンを図る戦略へ対抗しロボットへ置換された彼らは、監視・戦闘員としての役割も持つようになった。街中に複数配備されているのは当然だ。
しかし、第二分隊が襲撃を受けて五分と経っておらず、距離もある。あまりに早い対応。すなわち。
「罠かッ!」
【続く】
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