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東北紀行 vol.2 2日目「自然と旅」【秋田~弘前】

みなさん、こんにちは。
今回は、東北紀行のvol.2ということで、2日目のことについて書いていきたいと思います。

自然と旅

前回の記事はややネガティブな内容が多く、また軽い内容の試練も多かったと感じられたかもしれません。しかし、この記事で扱う2日目は、今回の旅で、最も旅らしい一日となったと考えています。その「旅らしさ」を最大限伝えられれば幸いです。

2日目のテーマは、「自然と旅」です。白神山地を始め、五能線沿線の自然を大いに味わいました。周囲に人が誰もいない中、非常に大きな自然を前にして、自分自身の存在についても見つめ直した一日でした。また、旅特有の行動や感情を経験しました。以下、順に追って見ていきたいと思います。

リゾートしらかみの車内にて

まず秋田を出発して向かったのは、白神山地です。白神山地は、小学校の国語の教科書でブナの原生林の写真を見て以来、ずっと行ってみたかった場所でした。

今回、秋田県の沿岸沿いを走る五能線のリゾートしらかみという観光列車に乗って白神山地に向かいました。五能線にはもちろん普通列車も走っていますが、都合の良い時間帯に走る+車窓から見える景色について解説してくれる、の2点から、リゾートしらかみに乗ることにしました。

リゾートしらかみ

列車の隣の席には、外国人ぽい方が乗ってきました。せっかくの機会だと思って、勇気を出して話しかけてみたところ、韓国から出張で来られてきた方でした。船舶関係の仕事で、秋田と東京の事務所に出張に来ているとのことでした。

その方からは、韓国の事情をいろいろと教えていただきました。韓国でおすすめのスポットや、韓国の少子化事情に至るまで、生のお話を聞くことができました。もちろん、僕のことについても、「大学生なのか」「出身はどこか」など、いろいろと聞かれました。

隣の席に座った初対面の方と話をしてみるというのは、まさに旅らしい経験でした。勇気を出して話しかけてみて良かったなと思っています。

また、僕自身エネルギー・環境分野について関心を持ってきたため、秋田の風力発電を見るというのも、今回の旅の目的の一つでした。車窓からは洋上風力発電を見ることはできなかったものの、陸上風力発電については、沢山見ることができました。

風力発電を作るとなれば、もともとあった自然の風景がある意味で変革を迫られます。そういう中で、元の風景を残すべきなのか、風力発電という人工物と調和した新たな自然像を見つけていくべきなのか、いろいろと考えさせられました。これは、社会において課題が山積している中で、何を変え、何を守るべきか、という僕の問題関心に一つの見方を与えてくれました。

沿岸に見える風力発電

白神山地と「一体」になる

いよいよ列車は白神山地に着きました。僕が降りた駅は、十二湖駅です。
十二湖駅は、十二湖という白神山地の中でも一つも有名な観光スポットに最も近い駅で、そこからバスで15分ほどで十二湖エリアにたどり着けます。

十二湖エリアには、33の湖があります。12じゃないの!?と思うかもしれませんが、湖の数自体は33あり、そのうち山の大崩から見たときに見えるのが12個ということで、こちらの数をとって十二湖と名付けられたそうです。

十二湖の中で最も有名で美しいとされているのが、青池です。僕も、まずは青池に向かいました。青池周辺は多くの人が訪れるということもあって、だいぶ舗装されており、歩きやすかったです。

いよいよ青池に到着し、湖を見てみると、どうやら青色に見えません。しかし、隣にあったウッドデッキに上がって上から眺めてみると、青色に見えました。どうやら、見る角度、場所によって見え方が違うようです。

青池。なお、落ち葉がたくさん浮いていたのがもったいなかった。

なお、青池がなぜ青色なのかについては、定説が確立していないそうです。実際、青池の青は、普通の湖の青色とは次元が異なる、なんだか透き通った高級感のある青色をしていたように見えました。一言で言って、美しく、何度も見たくなる湖でした。

その後、いよいよブナの原生林を散策しました。こちらは青池エリアとは異なり、人もほとんどおらず、やや歩きづらい場所もあって、一人で歩くのは非常に心許ない場所でした。万が一クマが出てきたらどうしようか、などとおびえながら歩いていましたが、ブナの原生林は非常にきれいなものでした。

ブナの原生林

一旦森を抜け、道路に面したところに出てきたところに、とてもきれいな湧き水が勢いよく流れている川がありました。「沸壺池の清水」というそうです。そこには、心地の良い涼しい風が吹いており、また隣にはベンチがあったので、絶好の休憩スポットでした。

沸壺池の清水

そこで昼食を取った後、非常に風が気持ちよかったため、寝っ転がって空を眺めていました。耳にはイヤホンをつけ、大音量でRADWIMPSを聞いていました。最高の自然の中で、最高の音楽を聴く。白神山地の大自然とあたかも一体となったような気分になり、至福の時間を過ごすことができました。

山道を下る

その後、十二湖エリアを散策した後、今度はバスに乗らずに歩いて駅まで戻りました。駅は、山道を1時間下ったところにありました。1時間、たまに車が通るだけで、ほとんど誰もいない山道を下ることになりました。

周りに誰もいないところに投げ出されると、人は自然に自分自身のことを考えるようになるのでしょうか。僕は、大自然の中にぽつんとたたずむ自分自身を内省することになりました。

自分はいったい何者なのか。自分の本質は何なのか。自分はこれから何をしていくのか。

こういった問いがぐるぐると頭の中をめぐりました。こうしたことはある程度就職活動を通じて考えていたものの、大自然という非日常の中においては、それまで見えていなかった部分も見えてくるようになりました。

そうした中で、自分自身の根本原理に近いところまでたどり着くことができたと思っています。そして、それは必ずしも嬉しいだけではありませんでした。見たくないもの、見ない方が幸せなこともいろいろとありました。

そこでの内省を踏まえて、今後自分自身の何を変え、何を守るべきか、考えていかなければならないと思っています。そして、そのためにこれから何をすべきか。これを考えて、実行していくことが、残り半年の学生生活の宿題だと思いました。

自然の「光」

駅に戻り、再びリゾートしらかみで五能線の旅に戻りました。どうやら十二湖からが五能線の真骨頂のようで、数々の絶景・名勝ポイントを回ることができました。

車窓から見える日本海

中でも特に印象に残っているのは千畳敷です。ごつごつとした岩棚が一面に広がる千畳敷では、下車することができ、実際にその上を歩いてみました。

目の前に迫る波、足下に広がる岩、空に浮かんでいる夕日、この3つが調和した景色は、まさに感無量でした。これ以上にない自然の美を堪能することができました。

千畳敷

今回の旅では、後の日程で三陸海岸を訪れましたが、それとの対比で言えば、千畳敷を始めとした五能線沿岸の景色は、いわば自然の「光」の部分です。一方で、自然は災害という形で人類に対して多大な危害を与えてきました。いわば自然の「影」です。今回の旅では、自然の「光と影」が一つの重要テーマとなりました。

弘前へ

列車はしばらくすると内陸部に入り、ひたすら青森を目指して走っていきます。僕は、宿の関係で青森の手前の弘前で降りることにしていました。

いざ弘前に降りたところ、こちらも前日の秋田同様、お世辞にも元気なまちとは言い難い様相を呈していました。しかし、なんとかリーズナブルな定食屋さんを見つけ、お店に入りました。今回の旅で、ようやくまともなご飯にありつくことができ、非常に感慨深い食事となりました。

弘前での食事。なかなかボリュームがあった。ビールはノンアル。

夕食を食べた後は、少し時間に余裕があったので、夜の弘前のまちを散策しようと思い立ち、繁華街の方に向かって歩いて行きました。

しかし、ここでも地方の実態に唖然とすることになりました。まず、人がいない。さらに、人がいても、ほとんどの店のシャッターが下りている。そして、なんだか不気味な通りがいくつもある。

東京の繁華街を歩く以上に、恐ろしく、微妙な空気が漂っていました。ここに来て、再び未踏の地でのホームシックが強くなりました。

弘前には、国の登録有形文化財のスタバがあります。より正確には、その文化財の中にスタバが入っている形です。

せっかくなのでちょっと覗いてみようと思い、いざスタバへ歩いて行きました。その道中も、言わずもがなですが、いざスタバにたどり着いたとき、店内を見てみると、中には誰もお客さんがいませんでした。そんなに夜も遅くなかったはずですが、誰も人がいませんでした。

登録有形文化財のスタバ

その後、近くに弘前城が見えたので少し入ってみましたが、こちらも門を一歩入ったところで、それ以上中に進む気になれませんでした。その不気味さに、僕の心は耐えきれませんでした。

弘前城の門

結局その後早めに宿に向かうことにしました。

カプセルホテルにて

2日目の宿は、1日目から一段階グレードアップして、カプセルホテルに泊まることにしていました。いざ、そのホテルにたどり着いたとき、その外装が想像以上に古く、暗いもので、またもや疎外感を強く感じました。実際中に入ってみるとそこまで醜いホテルではなかったものの、至る所でこれまで自分の生きてきた世界が、いかに世界の「表側」だったかを思い知らされることになりました。

今回の旅を通じて、この時以上に家に帰りたいと思ったときはありませんでした。青森なので、帰ろうと思えば新幹線に乗ればすぐに帰れます。翌朝にでも新幹線に乗って帰ろうと思ったときもありました。

こうして、自然の「光」を堪能して最高の時間を過ごし、自己内省を経て、未踏の地での疎外感とホームシックを強く感じた2日目は終わりました。なかなか旅らしい一日だったのではないかと思っています。

良くも悪くも、3日目以降はこういう意味での刺激は徐々に少なくなっていきました。(続く)