見出し画像

仕事については話してない

 仕事について話そう、というテーマを見つけたけれど、それで何か話せるほど一生懸命仕事はしてないのを自負している。新卒で最初に入社した会社を速攻で辞めてぷらぷらしたこともあるし、それ以降仕事はできるだけしたくない、リソースを割きたくないと思って過ごしている。朝起きて、仕事に行って、帰って、寝て、それを同じサイクルでずっと繰り返すと頭がおかしくなりそうになるのだ。こうやって私の人生には何もないままなんだと思って絶望に似た感情を抱く。だからいつも仕事じゃなくて、退勤後のゲームや映画鑑賞、たまに行くライブイベントなどを日常の中心イベントに置いてなんとか乗り切っている。そう珍しくない考えだと今ではわかっているけれど、これを罪な事だと思っていたのは父が本当に一生懸命働く人だったからだ。

 塗装会社に勤務していた父は一番早く家を出て一番遅くに帰ってきていた。日曜しか休みがなく、県外や離島へ度々出張へ赴くことになっても、その仕事を全うしていた。その背中を見ていて私は、社会人になったらこうしなければならないと思っていた。休みの日でも就寝後でも電話に出なければいけなくて、呑みの席にも付き合って、そうすることが社会に適応していくことだと思っていて、それが出来ない自分は普通から逸脱しているし、出来損ないなんだと本気で思った。今でも全くその気持ちが無くなったわけでもない。
 だけど実際大人になって分かったのは、父がいかに勤勉だったかということだ。そして意外と人によって働く目的もやる気も違って、もちろん能力も違うからそれぞれの凹凸をなんとか噛み合わせて仕事をしている。沢山の仕事量をこなすことはすごいことだけれど、足りないところを補うように動くことも大切なんだと知った。
 加えて父も実は新卒で入社した会社を速攻で辞めていたことも教えてもらったが、もっと早く聞きたかった。血は争えない、家庭のためにそうせざるを得なかったとしても、私の父がここまで働いてくれてたのはものすごく負荷がかかっていたのだろうな、と申し訳なくもなる。転職して労働環境は改善されたけれど、現在も離島に出張中だ。
 そういえば年末年始に帰ってきた時も寂しかったとしきりに言っていたのもあって、先日バレンタインチョコを母たちと一緒に送ったが、お礼に慣れないLINEを送ってくれた。私からのチョコが入っていた可愛い容器は小物入れにするらしい。いろいろ反りが合わないことがあっても、この人には幸せでいて欲しいなと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?